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転生して十年経ったので街を作ることにしました  作者: 笹村工事
第二章 街の予定地に魔物が溢れているので対処を始めるよ
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9 進撃開始 その3

「ぶった切ってやるよ!」


 魔術で造り出した大包丁正宗を、五郎は渾身の力を込め振り降ろす。

 敵対するは、大重量の魔物。全身を鎧じみた甲殻で覆った、見上げるほどの巨体。


 だというのに、動きは速い。

 真上に掲げ一気に振り降ろした五郎の一撃を、バックステップで躱す。

 それだけで、地響きがするほどに重い。


 その重さを込めた右の拳を、一撃を放った瞬間の五郎に、カウンターで撃ち出す。けれど、


「甘い!」


 裂帛の気合と共に、跳ね上げた正宗が迎撃する。

 鉄と鉄が噛み合い、砕かれるような重い激音が響く。

 迎撃された魔物の拳は、僅かにひびが入るも健在。

 だが、大きく弾かれ、バランスを崩した魔物は懐を開いてしまう。


 そこに五郎は踏み込む。

 一歩間違えば、即座に魔物の拳が跳んでくる距離で、迷いなく正宗を振り降ろす。 

 

 目指す先は、魔物の左腕。避けられることなく、勢い良く叩きつけた。


 ガズンッ! という腹に響く音をさせ、斬りつけられた魔物は、その勢いに負け地面に叩きつけられる。

 ズズンッ! という地響きをさせ、地面に倒れ伏した魔物は慌てて立ち上がろうとするも、横合いから追撃が入った。


「おっと。させませんぞ」


 戦場の中にあっても、どこか優雅さを感じさせ、1人の壮年の男性が細剣を持って踏み込む。

 五郎と料理勝負で仲良くなり、今回の魔物討伐にも参加してくれたアルベルトさんだ。


「グラアアアアッ!」


 地面に倒れ伏したまま、魔物は腕を振るう。

 迎え撃つアルベルトさんの得物は、優美な細剣。触れるどころか、掠っただけでも砕かれそうなそれを、アルベルトさんは優雅に振う。


「舞うとしましょうか、シルフィード」


 使い手たるアルベルトさんの意志に応え、魔術剣シルフィードは風を支配した。

 アルベルトさんの剣さばきに呼応して、振るわれる魔物の腕を絡め取るようにして、圧縮された空気が暴風となって吹き荒れる。

 その勢いに引っ張られるようにして、魔物は体勢を崩す。その勢いのまま、地面を転がされた。


「さぁさぁ、どうしたのですかな? 踊りは下手なようですが、それならば我輩がリードして差し上げよう」


 つかず離れずの距離を取りながら、アルベルトさんは魔物を翻弄する。

 魔物の力を利用するような巧みな風さばきで、魔物を転げさせていった。


 その要所要所で、五郎の重い一撃が叩き込まれる。

 少しずつ少しずつ、魔物の防御は削られていった。


 そのままでも、魔物は倒されるだろう。

 けれど、いま五郎とアルベルトさんがしているのは時間稼ぎ。

 本命は、別に居る。


「凍てつく冬の女王よ。明けぬ夜よりなお昏き、負界の冷気をその身に抱け――」


 朗々たる詠唱を、1人の少女が響かせる。

 かわいらしくも凛とした彼女は、アルベルトさんと同じく、五郎と料理勝負をして仲良くなったカリーナさんだ。

 周囲に響き渡る詠唱は長く、強大な物であるのが感じられる。


 それだけの威力の魔術は、それに応じて莫大な魔力と構築するための時間がかかる。

 個人が使用するには、使い勝手の悪いそれも、今この場では事情が異なる。

 なぜなら、多くの助けを借りることが出来るからだ。


 歌を重ねるような詠唱が、幾重にも周囲に響く。

 それは魔術師の付与詠唱。カリーナさんが使用する魔術に魔力を供給し、効果を高めているのだ。


 それをカリーナさんの魔術に注ぎ込む前に束ね調整しているのは、活力が溢れるような元気一杯な少女。

 カリーナさんの親友であり、料理人の助手でもある彼女は、同時に一流の付与魔術師でもある。

 彼女は笑顔を浮かべ、カリーナさんを力付けるように言った。


「そろそろ行けるよ、リナ! やっちゃえ!」


 それに応えるように、カリーナさんは魔術を起動した。


「――仮初めなれど今ここに。現れ出でよ、凍結女王」


 詠唱の終わりと共に、それは現れた。

 澄み渡る蒼で形作られた、冷気の女王。異世界からこの世界に来た、外なる神が伝えた異界の女神。

 その伝承の力を抱き現れたそれは、使い手の思い通りに動く力場の塊。


「凍てつかせて、凍結女王」


 造り手たるカリーナさんの命を受け、五郎とアルベルトさんに翻弄される魔物目掛けて突進する。

 即座に、その場を離脱する五郎とアルベルトさん。巻き込まれたら、ただでは済まない。


「ギアアアアアッ!」


 雄たけびを上げながら、魔物は拳を振るう。

 狙うは凍結女王。避けることなく突進するそれに、魔物の拳は不幸にも命中した。


「ヒガアアアアアッ!」


 苦痛の声を魔物は上げる。見れば、凍結女王に減り込んだ拳から、勢い良く白い蒸気が上がっている。

 あまりの冷気に、沸騰するように熱が奪われているのだ。


 絶対零度すら下回る、負の冷気の塊。それが凍結女王の正体だ。 

 俺達の居た世界ですら、仮説はあっても実現化などしていないそれを、凍結女王は身体の内に蓄えている。

 触れれば全てのエネルギーを奪う負の冷気は、触れる物全ての活動を停止させる。


 抱きしめられるように触れられている魔物は、全身から白い蒸気を上げながら細かな亀裂を与えられていた。

 凍結女王が存在できたのは僅かな時間。

 けれどその間だけで、魔物は熱を奪い尽くされ、彫像のように固まってしまう。


 その隙を、みんなは逃すことは無い。

 一斉に攻撃して、魔物を粉々に撃ち砕いた。


 こうして果敢に魔物と戦い、力を見せていく。

 それはカルナに率いられた部隊も同様だった。

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