9 進撃開始 その1
俺が率いる部隊を先頭に、上空から見ると逆Vの字になるような陣形を取る。
右斜め後ろをカルナが、左斜め後ろを五郎が率いている。
ここまでが、魔物を見つけると同時に襲撃を行い、即時撤退を行う部隊だ。
そのサポートに回る形であと2部隊が、カルナ達の更に後ろに位置している。
周囲の索敵をメインに動く彼らは、遠距離攻撃が得意な有希と五十鈴に率いられている。
魔物を引き付けつつ撤退する際に援護射撃を行い、撤退戦をスムーズに行えるよう動いて貰う予定だ。
残り1部隊は、前線基地に待機して貰っている。
俺達が撤退し前線基地に出ると同時に跳び出して、場合によっては挟み撃ちや、部隊の入れ替えを想定していた。
「あと5分で予定地点まで到着するけど、周囲に敵影はある?」
俺は、通信用の魔導具を介し、後方の索敵を担当する五十鈴に尋ねる。
イヤリングの形をした魔導具は、同じ型の魔導具を持った相手なら、意識するだけで音声を繋げることが出来る。
返事は、すぐに返ってきた。
【敵影なしやわ~。このまま予定地まで、到着しといてぇ~】
すぐ傍で話しているような鮮明な声が聞こえる。それに小さな声で俺は返した。
「志願者のみんなは、様子はどう?」
【問題なしやわ~。実戦初めてで、緊張しとるけど、これなら十分やね~。なんかあっても、こっちは、うちがどうにかするんよ~】
「ありがとう。任せるよ。その代り、俺の部隊は、俺が守るから」
魔物の排除作戦と同時に、志願者の強制強化も目的の内なので、それを意識しながら更に進む。
身体強化魔術で進軍速度は、その気になれば時速50キロぐらいまで出せるけど、可能な限り疲労を避ける意味でもわざと速度を落とし、30キロ程度で進んでいる。
その速度のまま進んで、予定地点に辿り着くよりも早く、魔物の一団に巡り合った。
「進軍停止。陣形を維持したまま、警戒に当たって」
通信で皆に伝え、魔物と距離を取って対峙する。
距離は、まだ200mは離れている。
けれど、油断できる距離じゃない。その気になれば、10秒ちょっとで詰めて来ようと思えば来れる距離だ。
だから俺達の部隊は警戒をしたままで、魔物の判別は後方の部隊に任せる。
僅かな間を空けて、結果は返ってきた。
【下級18体、中級4体の総数22体です!】
僅かに上擦った、緊張した声が聞こえる。
経験値稼ぎのために、魔物の判別は志願者に任せている。
地味に見えて、敵の力量把握は優先事項の1つなので、出来るようになって貰わないといけない。
「了解。判別結果を前提に、これから動くよ」
全員に通信で伝えたあと、五十鈴だけに通信を合わせる。
「五十鈴、伏兵は居ると思う?」
少し前にシュオルで戦った経験を活かし、五十鈴に尋ねる。
あの時は、発見した魔物を攻撃している間に、横合いから攻撃されたのだ。
今回も、そうならないという保証はない。
だから訊いてみたんだけど、五十鈴の答えは気楽な物だった。
【無いと思うわ~。周りの地形やと、伏兵出来るような場所あらへんし~。超長距離攻撃できるほど離れた場所に居る可能性はあるけど~、それやったら使われる前に魔力の余震で分かるわ~】
魔術は行使する時に、周囲の魔力にも影響を与えるのだけど、それを魔術師は捉えることが出来る。
威力が大きければ大きいほど分かり易いので、五十鈴が言うのももっともなのだ。
そうして、安全だと言ってくれた五十鈴だけど、万が一の可能性も考えて提案をしてくれる。
【ほぼ確実に伏兵は居らんと思うけど~、念の為に制圧射撃を周りにしてみるわ~】
「威力偵察って事だね」
【そういうこと~。有希にも伝えといて~。あと、制圧射撃でなんか変化でるかもしれへんから~、気をつけといて~】
「分かった。発見した魔物が刺激されて動くかもしれないし、みんなには伝えとくよ」
俺は全員にこの事を伝え、なにがあっても対処できるよう警戒する中、五十鈴と有希は率いている部隊に号令をかける。
「それじゃ、詠唱開始~。有希の部隊が攻撃するのに合わせて~、向こう側に攻撃魔術ブチ込んで~」
「こっちの攻撃目標はあの辺り一帯っすよ。慌てないで良いから、落ち着いて、全員で合わせていくっすよ~」
緊張させないよう気を付けながらの2人の声に従って、後方の魔術師たちは各々魔術を起動する。
幾つもの魔術が活性化され、解き放たれる時を待ち、五十鈴と有希の声と共に放たれた。
「それじゃ、攻撃開始~」
「一斉攻撃っすよ~」
轟音が周囲に響く。
炎が、そして雷が。或いは圧縮された空気が目標とされる地点に叩き込まれ、土煙を上げて爆発する。
攻撃を叩き込まれた場所からは、何かが出て来る気配は無い。
けれど、目前の魔物達は一斉に興奮したように動き始める。
まっすぐにこちらに向かって来る魔物が4体。手に魔術で作った武器を持っているから、アレは中級だろう。
それ以外の下級は、てんでバラバラに動き始めているだけだ。
それを確認し、俺は開戦の号令を上げた。
「近接戦用意! 俺の部隊と、カルナと五郎の部隊は、こちらに向かって来る中級の殲滅!
後方部隊は周囲の警戒を第一に、余裕があれば援護射撃! 可能なら返事を!」
即座に、返事はみんなから帰って来た。
その声に心強さを感じながら、俺は率いる部隊と共に、進撃を開始した。




