表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生して十年経ったので街を作ることにしました  作者: 笹村工事
第二章 街の予定地に魔物が溢れているので対処を始めるよ
81/104

7 リベンジ兼ねて実践演習に向かいます その1

 魔術協会に魔物退治の協力を要請してから3日後。

 早速、魔物が蔓延るシュオルに向け、蒸気機関車で向かっていた。

 乗り込む魔術協会からの応援は483名。

 予想の上限ギリギリまで来てくれたのは、正直ありがたい。

 魔術師の名家が、それぞれの威光と権威を守るため送り出してきた300名と、募集に応じた志願者183名。

 その内の1人、志願者として来ていたコニーに俺は声を掛けた。


「緊張してる?」

「へっ、は、はい! じゃなくていいえ!」


 青年というよりは少年と言った見た目のコニーが、緊張した声で慌てて返す。

 思わず苦笑する。こちらの世界の常識だと、すでに大人の仲間入りをした年齢だけど、やっぱりまだまだ子供だ。 


「緊張しても良いんだよ」


 俺は、気負い過ぎた意気込みをほぐすようにコニーに言う。


「い、良いん……ですか?」


 恐る恐るというように聞き返すコニーに、


「うん。だって、緊張してるってことは、それだけやる気が漲ってる証拠だよ。それを消しちゃ、もったいないよ」

「で、でも……怯えてるみたいで……」

「なおのこと良いよ。それって、状況が見えてる証拠だもの。これから魔物と戦おうってのに、何も感じない方が問題だって。怖いものが無いって、それは単なる考え無しと同じなんだから」

「けど……」

「怖くて戦えそうにない?」

「それはっ……――」


 コニーは、すぐに返そうとして、思い悩むような間を空けて返してくれた。


「分からないです……父さんの仇を討ちたくて志願して来たのに……怖さは消えてくれなくて……」

「大丈夫。戦えるよ」


 ぽんっ、と。コニーの肩に手を置いて、俺は意識して穏やかな声で言った。


「やる気も恐怖も手に入れてるんだ、あとは慣れだけだよ。それを手に入れる時間は、俺達が用意する。安心して欲しい」


 すると、コニーは俺を黙ってじっと見ていたが、やがて目をキラッキラに輝かせて、


「はい! 俺、頑張ります!」


 俺を信じ切るように返してくれた。


(……うぅ、心が痛い……)


 どう考えても自分がやってるのは扇動行為なので、罪悪感めいた物が湧いて出る。なのだけど、


「勇者さまのお蔭で、俺、戦える勇気が湧いてきました! 期待に応えられるぐらい頑張ります!」


 更にコニーは、やる気を見せてくれる。しかも、それはコニーだけでなく、いま居る車両の若い子たちみんなが、同じような眼差しで俺を見詰めていた。


(うぅ……心だけじゃなくて、胃も痛くなってきた……)


 内心は結構キツイ物があるんだけど、戦意高揚は大事な仕事なので、キッチリやり遂げないといけない。

 だから俺は更に、みんなの戦意を高めるように続けて言った。


「みんな、聞いて欲しい」


 呼び掛けを一つ。みんなの視線と意識がこちらに向き、俺の言葉を待ってくれる。

 けれどすぐには口を開かず、みんながじれるような間を空けて俺は続けた。


「あと2時間で、現場には到着する。そこでの戦いは、苦しいものになると思う。けど、キミたちなら大丈夫。絶対に死なない。生き残れる。俺たち勇者が、約束する」


 みんなは言葉もなく、食い入るように俺を見詰める。

 必死という言葉をそのまま表しているかのような、みんなの態度に、俺は心地好さを感じながら続けた。


「今回の戦いでみんなに知って欲しいのは、生き残ること、これだけだよ。他は何も要らない。

 勝たなくても良い、倒さなくても良い。必要なのは戦って、生きて帰って来れること。

 それを今回の戦いで学んで欲しい。

 なぜなら、魔物との戦いは、決して終わらないんだ」


 俺の言葉に、みんなの表情は強張る。相打ち覚悟で死ぬ気で戦っても、それでは決して終わらない徒労。それを直に聞かされて、怯むような気配が滲む。

 けれど、それだけじゃない。終わらぬ徒労だろうと立ち向かおうとする気迫が、その目の輝きには灯っている。


 その眼差しに、ほころびそうになった表情を無理やり抑え、更に続ける。


「続けること。それが俺達に出来ることだよ。それは、繋げることでもあるんだ。

 今日の自分の経験を、明日の自分に重ねることも出来る。

 ここには居ない誰かに、伝える事だって出来るんだ。

 だから、負けても良い。逃げても良い。

 その代償は、俺たち勇者が払うから」


 息を飲むような気配が沸き立つ。どこか罪悪感めいたそれに、俺は苦笑しながら返した。


「後ろめたさを、感じる必要はないよ。だって、俺達は信じてるから。

 いつかきっと、俺達が居なくてもみんなは、やっていけるようになるって。

 それまでの時間稼ぎなら、喜んで俺達はするよ。その為にも、生き残って欲しい。

 そして必死になって欲しいんだ。それがきっと、みんなの未来に繋がる筈だから。

 出来るかな? みんな」


 俺の問い掛けに、みんなはすぐには返せなかった。

 けれど、覚悟を決めるような間を置いて、


「出来ます! やってみせます!」

「もちろんです! 任せて下さい!」

「頑張ります!」


 みんなは口々に決意を返してくれた。


(……ぁ、マズい。ちょっと泣きそう……)


 やる気を見せてくれるみんなに嬉しくなって、少しうるっと来る。

 それを誤魔化すように、俺は笑顔を浮かべながら、


「うん、みんなやる気を出してくれて何よりです。

 でも、それと同じぐらい、英気を養える時には養わないとダメだよ。という訳で、今の内に食事をとっておこう」


 そんな俺の言葉を待っていてくれたかのように、良いタイミングで、ミリィ達が戦う前の食事を持って来てくれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ