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転生して十年経ったので街を作ることにしました  作者: 笹村工事
第二章 街の予定地に魔物が溢れているので対処を始めるよ
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6 これからどうするか考えよう その3

「まだ、目星もついておらんのか?」


 和花の問い掛けに、俺は返す。


「長老たちが協力してくれてるお蔭で、少しずつ俺達が襲われた時間帯に、どこで何をしていたかとかの事情聴取は出来てるよ。

 でも、とてもじゃないけど、魔術師の人たち全員から話を聞ける状況じゃないから」


 俺の話を引き継ぐように、カルナが続ける。


「魔術協会内で、強力な地位を持っている家に所属している相手からは、何も聞き出せていません。

 それ以前に、協力自体を拒む相手がほとんどで」

「しょうがないよ。どこの誰かも分からない、そもそも、魔術協会に所属している相手だったのかも分からない。そんな犯人を捜すのに協力しろ、って言われても、嫌になるだろうから」

「じゃからと言って、そのままにはしておけんじゃろ。協力関係を結ぶ相手が、こちらに危害を加えないと信じれるだけの情報は欲しい所じゃ」

「そうなんだけどねぇ……」


 正直、頭が痛い。

 魔術協会の人にとっては、痛くもない腹を探られているようなものだ。反発する人達が出ても仕方ない。

 とはいえ、だからといって、そのままにしておく訳にもいかないのは事実だ。

 どうした物かと悩んでいると、ドアを叩く音が。

 そちらに視線を向けると、ミリィがティーワゴンにお茶を乗せて持って来てくれている。


「お茶をお持ちました。初めて入れるお茶なので、もしお気に召しませんでしたら仰ってください。淹れ直してまいります」


 生真面目に言うミリィに苦笑しながら、俺達は返す。


「気にしなくて良いよ。ちょうど喉が渇いてたんだ。美味しく頂くよ」

「そうじゃそうじゃ。気にせんでも良い」

「そだよね~……って、なんだか懐かしい匂いがする~」

「ホントだ。煎茶の匂いだ……懐かしい……」


 五郎が、こちらの世界の葉っぱで再現してくれた煎茶の香りに、少しだけ懐かしさが湧いて出る。

 お茶を渡されて、香りを楽しんでから一口飲み干す。

 ほんのりとした渋みと、僅かな甘み。それが喉を通るとすっきりとした後味となって、最後に爽やかな香りが抜けていく。

 余計な力が抜けていくような心地好い飲み味が、悩んで硬くなった頭をほぐしてくれるみたいだ。


「美味しい。ありがとう、ミリィ」


 俺や、他のみんなも礼を言うと、


「いえ、喜んで頂けたなら、それだけで十分です」


 少しだけ恥ずかしそうに、そして嬉しそうにしながら、ミリィは頭を下げる。

 そんなミリィを、どこか誇らしげに見つめているカルナ。

 なんか微笑ましくて、心がほっとする。


 そんな風に、気持ちが落ち着いていると、ミリィが一枚の封書を渡してくれる。

 封の刻印は、俺たち勇者が使っている物だ。


「ヒイロさま宛てに、つい先ほど届けられたそうです。家令の方から、お渡しするよう言付かりました」


 俺は礼を返し受け取ると、魔術で封をされた蜜蝋に指を当てる。

 刻印に記録された魔力と、俺の魔力が適合し封が外れた。中身を確認してみれば、


「真志からだ。捜査の進捗状況を知らせてくれてるみたいだ」


 魔術協会に、捜査協力で出向している真志は、元の世界で刑事だったこともあって、こういう時には凄く頼りになる。


「なんて言ってきてるんじゃ?」

「ん、ちょっと待って……ようやく、捜査を本格的に出来る体制が整ったみたいだ」

「そうか……なら、魔術協会に犯人が居るかどうかの目星は、つきそうじゃの」

「ん~、どうだろ? 真志のことは信じてるけど、難しいと思うし」

「じゃが、あいつでダメなら、わしらの誰が調べても無駄じゃろ。成功するにしろ失敗するにしろ、わしらも動ける準備はしておかんといかんじゃろうよ」

「そうだね……まだ捜査も、時間かかるだろうし。かと言って、その間も何もしない訳にもいかないから、やれることを考えておこう」


 俺は少し考え込んで、みんなに提案する。


「とにかくまずは、魔術協会の人達と一緒に、シュオルでの実戦をしてみよう」

「威力偵察でも、するの?」


 マゲイアの膝の上に乗ったまま足をぱたぱたさせながら、瑠璃が俺に訊いてくる。

 どら焼きを一口サイズにちぎってマゲイアに食べさせながら、思慮深さも感じられる、おっとりとした声で続けて問い掛けてくる。 


「まだ、街の入り口で、ちょっと戦っただけなんでしょう? それじゃ、敵情視察にもならないし」 


 この問い掛けに俺は返す。


「いや、そこまでする気はないよ。まずは、こちらの戦力把握の方が先だし。

 カルナ、予想で良いんだけど、どれぐらいの人達が来てくれると思う?」


 俺の問い掛けに、カルナは少し考え込んだ後、応えてくれる。


「300から500の間かと。

 長老たちが全面的に呼び掛けてくれるとは思いますが、未だに魔王との戦いで刻まれた恐怖を、皆は忘れていません。

 積極的に参加を表明するのが300程度で、そこから家名の維持を目的に参加するかもしれない数が200といった所でしょう。

 どの程度の戦力を持った魔術師が参加するかまでは、予想しきれませんが」

「ありがとう。それだけ予想できてれば十分だよ。

 正直、こっちの指揮できる人数にも限りがあるから、あまり数が多くても問題だったからね。

 むしろ、最初はそれぐらいからの方が良いよ」


 俺はカルナに礼を返すと、少し考えてから続けて言った。


「ひとまず、いまカルナが言ってくれた、300から500の人数で出来る戦い方と、必要な装備を考えていこう。実際に使えるかどうかは別にして、まずはどんなアイデアでも上げて欲しい。

 そこから、色々と広げて煮詰めていこう」


 俺の呼び掛けに、みんなは応えてくれる。

 さて、色々と考えていかなければならない事は多い。今日も徹夜になりそうだけど、頑張っていかないと――


 そう、陽色が意気込んでいる頃、魔術協会に捜査協力で出向していた草凪真志は、魔術協会から付けられた助手役の少女と話をしていた。

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