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転生して十年経ったので街を作ることにしました  作者: 笹村工事
第二章 街の予定地に魔物が溢れているので対処を始めるよ
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2 街予定地に到着するまで車内販売試食会 その6 アンドロイドな運転手は甘酒好きです

「運転どうしたの!?」


 運転役の出雲と八雲、ついでにデミウルゴスのみんなが総出で食堂車に来てるので、思わず俺は声を上げる。

 けれど、3人は落ち着いた声で返す。


「気にすんな。別に事故は起こしゃしねぇよ」

「抜かりはないぞ、リリスの勇者よ」

「この子が、運転してくれてるのだ」

「ま゛っ!」

「え? って、なに、それ……」


 出雲の頭に乗っかっている、ソレに気付き俺は疑問の声を上げる。

 手の平に、ちょこんと乗りそうなソレは、一言で言うとロボットだった。


 人型ではあるけれど、全体的に丸っこい。SF的というよりは、どこか無骨でレトロな外観のそれは、八雲が好きなスチームパンクに出て来そうな形をしている。

 以前、八雲達が着ていた蒸気式パワードスーツに、どこか似ていた。


「ロボット、なの?」

「違うのだ!」


 出雲が腰に手を当てて胸を張ると、頭に乗ってるそれも同じポーズを取る。


「この子は、自分で考えて自分で行動できるのだ! だからロボットじゃなくて、アンドロイドなのだ!」

「ま゛っ!」


 ヤベー。人工生命作っちゃってるよ。

 

「アンドロイドって……出雲の神与能力は知ってるけど、そこまで無茶な物、作れたっけ?」


 出雲の神与能力「直感発明」は、理屈どころか作り方自体分からなくても、何となくで望みの物が作れてしまう能力だけど、それにしたって限界はある。

 自分で考えて自分で行動するような、そんな自我を持った存在を作れるほどじゃなかった筈だ。


 そこまで出来たら、それこそ「神の領域」だと思っていたら、神であるデミウルゴスが説明してくれた。


「リリスの勇者よ。その事なのだが、恐らく私が現世に訪れている事が関係している」

「どういうことです? デミウルゴス」

「ふむ……一言で言えば、神与能力がパワーアップしておる。勇者の神与能力は、我ら神々と契約する事で得られた能力だが、我が現世に居ることで、出雲の能力が強力になっておるのだ。八雲も同様なので、間違いはないと思う」

「そんなことが……でも、俺はリリスとずっと一緒に居ましたけど、それで神与能力が強力になってる実感は無いんですが」

「恐らく『神々を現世に実体を伴って召喚する』という事に、汝が本来得る筈だった神与能力の大半は消費されておるからな。そのせいで、巧くいかんのだろう」

「……なるほど。そういうことなら、納得できます」

「悲観する事はあるまいよ。汝の能力は、代償を必要とする代わりに、あれはあれで十分過ぎるほど強力だからな」

「ええ、それは自覚してます。それはそれとして、話を戻しますが、このアンドロイドは、なんで作ったんです?」


 この問い掛けに、デミウルゴスだけでなく出雲と八雲も返してくれる。


「昨日、工房に来た時、蒸気機関車に変形機能付けるのはダメって言っただろ」

「うん。どう考えても使い道ないし」

「しかし、俺達は諦めなかった!」

「諦めて! お願いだから!」

「だからどうにかできないかと考えたのだ」

「その時間を安全面とかに振り分けて」

「心配するでない、リリスの勇者よ。安全を十二分に確保した上で熟慮しておる」

「だからって、なにしても良い訳じゃないんですよ、デミウルゴス」

「むっ、別に何も考えずにしていた訳ではないぞ。少なくとも、蒸気機関のような巨大な内燃機関が必要な現状では、変形機能を入れると安全面の確保が著しく難しいことが、皆の考察で分かったのだ」

「みんなって……」

「工房の連中もノリノリだったぞ」

「なにその、マッドサイエンティストの魔窟みたいな状況」

「とにかくみんなで考えて、今すぐ変形機能を付けるのは断念したのだ」

「良かった……本当に良かった」

「だからとりあえず、先に制御面から考えたのだ」

「……諦めた訳じゃないんだ」

「無論」

「無駄に力一杯断言しないで下さい、デミウルゴス」

「ふっ、そう言うな、リリスの勇者よ。汝も、出雲と八雲の偉業を聞けば、わぁすごい、と納得する筈だ」

「……一応、聞いときますけど、何したんです?」

「うむ。変形機能の制御と運用には、まずは魔術で対応しようとしたのだ」

「前に、蒸気式パワードスーツ見せただろ? 最初は、あれの基幹部分を応用しようと思ったんだけどな。ただ、あれだと機能的に足らないことが分かってな」

「制御しなきゃいけない部分が複雑すぎるし、多すぎるのだ」

「勇者達の世界には、コンピュータ、とかいうのがあったらしいが、それを使っても無理だろうという結論が出てな」

「俺たちが生きてた頃の性能じゃ、無理だからな。機械的な制御と、人間的な、生き物の感覚で運用する両方が必要だからな」

「だから考えたのだ。機械と生物の、両方の能力を持った子を創って、その子に全部丸投げしちゃえって。だから創ったのだ」

「考え方が飛躍しすぎ! どんだけぶっ飛んでんの!」


(変形ロボットを作るために、アンドロイドを作ってどうするだろう、ホントにもぅ……)


 たった一日、目を離しただけでこれなので、デミウルゴスが現世に居る時は今まで以上に気を付けよう。そう心の底から誓う。


「どうしたのだ、リリスの勇者よ? 頭痛をこらえるような表情をして」

「……いえ、自分のうかつさに、ちょっとめまいがしたと言いますか……」


 気持ちを切り替えるために軽く息をついて、俺は出雲達に尋ねた。


「それで、その子は、なにが出来るの? 今、この蒸気機関車を運転してるって言ってたけど」

「そり通りなのだ。この子は、自分の魔力を浸透させた機械を、自分の身体にすることが出来るのだ。だから、ここで離れていても、蒸気機関車全体を通して外を見ているし、安全に運転してくれているのだ」

「自動運転をしてくれてる、みたいな感じ?」

「そうなのだ。すごいのだ、うちの子は」

「ま゛っ♪」


 褒められて、出雲の頭の上で喜んでる。なんかかわいい。

 なんて思っていると、ぎゅっと服を掴まれる感覚が。

 見れば、いつの間に来たのか、リトがキラキラした目で、出雲の頭の上で小躍りしているアンドロイドを見詰めている。


「ひいろさまっ、ひいろさま! なに? なになに? その子、なんなの?」


 好奇心いっぱいに訊いてくるリトに、出雲は笑顔で応える。


「ロコなのだ。ロコ・モーターって言うのだ。触ってみる?」

「うん! 触る!」


 出雲は、頭の上に乗っていた、ロコと呼んだアンドロイドを手に取り、手のひらに乗せると、リトの前に差し出す。

 恐る恐るといった感じにリトは手を伸す。すると、


「ま゛っ!」


 リトの人差し指を、両手でぎゅっと握るロコ。そのまま、上下に腕を振る。


「わ、わわっ、握手。握手できるよ、この子!」

「ま゛、ま゛ま゛っ♪」


 喜ぶ2人。なんか和む。すると、


「ねぇ、この子、この子なにが好きなの? ご飯あげたい!」


 子犬か子猫でも相手しているかのように、リトがねだる。


「ご飯は、無理なんじゃないかな?」

「いや、普通に喰うぞ」

「食べるの!?」


 思わず八雲に聞き返すと、平然と返ってくる。


「なんでも喰うぞ。鉄でも鉛でも、うちの工房にあったもんは全部、食えたからな。だから人が食うもんでも、大丈夫だろ」

「……一体、どんな仕組みで……」

「さぁ? 材料は俺が作ったけど、出雲の神与能力で創られてるからな。創った本人にも、さっぱり分かってない」

「……相変わらずのブラックボックスか。ま、それはいつもの事だからいいけど、何を食べさせてあげたら良いのかな?」

「それもなぁ……一応、俺らが食ってたパンも食べてたけど、美味いと思ってたかどうかは別だからな」

「だったら、試しにこいつを飲ませてみたらどうだ?」


 いつの間にかやって来ていた五郎が、幾つかコップを載せたお盆を差し出す。

 コップの中身は、とろみのある白い飲み物だった。

 ほんのりと、甘い香りがする。


「これって、ひょっとして甘酒?」


 懐かしい香りに俺が尋ねると、


「おう。こっちの世界の物で作ってるから、厳密には違うかもしれねぇが、味は保障するから安心しろ」


 五郎は自信ありげに答えてくれる。


「うわ、それは嬉しいな。好きだったんだよね、甘酒」


 物珍しそうに見つめるだけで手を伸ばさないリトを安心させる事も考えて、俺は最初に甘酒に手を伸ばす。

 手に取ると、ひんやりとしている。氷を持ち込んでるみたいだから、それで冷やしたのかも。


「いただきます」


 くいっと一口。とろみのある甘酒を口にする。


(あ、美味しい)


 くどくはない、さっぱりとした甘味が口の中に広がる。


(酒粕とか使ってない、純粋なヤツだ、これ)


 やさしい、どこか純朴な甘さが、じんわりと舌に染み込んでくる。

 とろみがあるので、いきなり濃い味が突き刺さってくるような感じは無い。

 その代り、やんわりと余韻が残ってくれる。


(酒粕が使ってあるのだと、ちょっと苦みとか匂いがあるから俺は好みじゃないけど、こういうのなら好きなんだよな)


 こくこくと、一気に飲み干す。とろみのある喉越しを楽しみ、心地好い甘さを味わった。


「美味しい。飲んでみる? リト」

「うん!」


 俺が美味しそうに飲んでいたのを見て、自分も飲みたくなったのか、じーっと見ていたリトにコップを取って渡してやる。

 満面の笑顔で、こくこくと甘酒を飲むリト。ため息をつくように、一端口を離し、そのあと一気に飲み干した。


「美味しいーっ。これ好きーっ。私これ好きーっ!」


 飲み干すなり、大喜びで声を上げるリト。


「うん、本当に美味しいよ、これ。これって、俺でも作れるかな?」


 出来れば、ちょくちょく飲みたいので五郎に訊いてみると、


「温度管理とか大変だからな、無理だと思うぞ。2、3度違うだけでガラッと味が変わるしな。それに発酵の途中で、それ以上進まないように加熱する必要も出て来るしな。素人だと難しいぞ」

「そっか……残念」

「そういうな。ちょくちょく作って、持って行ってやるからよ。それより、そっちのチビ助に飲ませないのか? どんな反応するのか、興味あるんでな」


 ロコを興味深げに見つめながら言う五郎に、


「だったら私がご飯あげるーっ!」


 リトは、誰も手を出していないコップを手に取ると、出雲の手の上に乗るロコの前に差し出す。

 ロコは、出雲に顔を向け、軽く首をかしげるような仕草をする。それに出雲は笑顔で返しながら、


「大丈夫なのだ。きっと美味しいから、飲んでみると良いのだ」


 ロコに甘酒を勧める。するとロコは、コップの縁を両手で掴み、顔を中身の甘酒に向けてちょんっとつける。


(あ、あそこが口なんだ)


 大体、人間と同じところに口があるみたいだ。

 ロコは、試すように口をつけると、ぴたりっと身体が固まる。

 そして次の瞬間には、身体を乗り出すようにして、甘酒を飲んでいく。


 みるみる内に中身が減る。甘酒にダイブするんじゃないかってくらいの勢いで飲んでいき、途中から自分の身体より大きいコップを両手で持ち上げ、一滴も残さず飲み干した。


 全部カラになり、それに気付いたロコは、


「ま゛ぁぁぁぁぁ……」


 へにょへにょという感じに、沈みこむ。そんなロコに苦笑しながら、


「美味しかったみたいなのだ。五郎、まだあるなら、もっと欲しいのだ」

「おう、良いぜ。いつまでも立ったままってのもなんだし、空いてるテーブルに座っときな。そこに持ってくからよ」


 出雲はロコを手に乗せたままテーブルに付き、五郎は台所に向かう。  

 リトは、ロコの頭を撫でた後、ミリィ達のテーブルに戻り、八雲とデミウルゴスは、出雲とロコが待つテーブルに。

 皆がそれぞれ席に着いたのを確認してから、俺も自分の席に戻った。

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