3 愛しの女神さまに報告終っていちゃいちゃするよ
「という訳なんですよ」
「ふ~ん、そうなんだ」
俺の話を聞き終えたリリスは、俺の膝の上で足をぷらぷらさせながら考えている。
その間、やわらかな重みとお尻の感触が膝に乗って、なんと言うかエロい。
「なに考えてるの~?」
「エロいことです!!」
「もぅ、ばかなんだから~」
リリスはくすくす笑いながら、身体を預けて来る。
うわ~い、えろ~い。遊ぶようにじゃれ合うのが、すごく楽しい。
最近忙しくて、いちゃいちゃ出来なかったから、こういうのは嬉しい。
リリスも同じ気持ちなのか、甘えるようにこちらに身体を預けてくる。
そして甘えた声で訊いて来た。
「本当に、私が街の守護女神になって欲しいの?」
「もちろん。それが俺の願いです」
「そっか……うん。だったら頑張らないとダメだよね。みんなが、住んでて好かったって思える街にしようね」
「ええ。もちろんですよ」
やわらかくリリスを引き寄せ、やさしく抱きしめる。
リリスは、くすぐったそうに小さく声を上げると、俺の手に自分の手を重ねながら言った。
「甘えてくれてる?」
「甘えてますよ~。だからリリスも甘えてくれて良いですからね」
「うん! へへ~、大好き~。陽色~」
ぎゅむぎゅむ抱き着いてくれるリリス。
「うあっ、もうかわいいーっ! このまま押し倒したいーっ!」
「本当?」
期待感一杯の眼差しで、俺を上目づかいで見つめるリリスに思いっきり流されそうになるが、そこは必死に堪える。
俺一人分の理性だと無理だったけど、色々諸々の責任が背中に乗っている今の状態が重しになってくれたお蔭で何とかセーフ。
「押し倒したいのは本気ですけど、やらなきゃいけない事があるので我慢します。リリスに街をプレゼントする為にも、頑張らないとダメですからね」
「うん……そうだね。陽色は頑張らなきゃ、ダメなんだもんね。頑張ってね、陽色。でも――」
リリスは俺と手を繋ぎ、優しい眼差しを向け言ってくれる。
「――苦しくなったら、絶対に教えてね。私が出来ることなら、何でもしてあげる。それが、私の嬉しいことなんだから。忘れないでね、陽色」
自分の全てを捧げてくれるようなリリスの言葉に、俺は泣きそうになる。でも、そんな無様な真似は見せたくなくて、
「忘れる訳ないでしょう? 貴女を連れ出した時から、貴女は私の者なんですから」
俺はリリスの頬ににキスをした。そして、
「だから俺も、貴女の者です。貴女も、頼ってくれなきゃダメですよ、リリス」
見栄を張るように格好つける。それぐらい、好きな女の前なんだから、やってやるってなもんである。するとリリスは、泣き出しそうな表情なると、
「ありがとう。嬉しい」
ぎゅっと、強く強く抱きしめてくれた。
あぁ、本当に、このままぐちゃぐちゃになるぐらい、リリスと一緒にお互いを貪りたい。
でも、そんな訳にはいかないので、無理矢理に意識を切り替えリリスに言った。
「それじゃ、そろそろ話し合いに行く準備をします。また、しばらく忙しくなるかもしれませんけど、待ってて下さい。絶対に、リリスのために時間を作ります」
「うん……嬉しい。そう言ってくれるだけで、心が一杯になるよ」
リリスは穏やかな声で言うと、そっと俺から離れ、続けて言った。
「陽色達ばかりを大変な目に遭わせる訳にはいかないから、私たち神々も、出来る事が無いか話し合って来るね」
「……神座に行かれるのですか?」
「うん。話し合って来るね。向こうのみんなも、それを望んでいると思うから」
この世界の神々と呼ばれる存在が、本来居るべき位相空間である神座。神と神の力以外の何物も、本来なら存在しない寒々しい場所。
俺が自分の神与能力の大半を失うことを代償にして、リリスをこの世界に連れ出した場所でもある。
「お願いします、リリス。きっと、それも必要なことだと思いますから」
「うん、分かってる。それじゃ、行って来るね」
「行ってらっしゃい、リリス。またあとで」
安心するようにリリスは笑顔を浮かべ小さく手を振ると、次の瞬間、この世界から完全に消失した。
神座に転移し、名残のように残るリリスの気配に、俺はほんの少しだけ浸ると、
「さて、頑張りますか」
俺は俺のするべき事を成すために、身だしなみを整える。準備を整えた所で、
「陽色さん、そろそろ良いですか?」
執務室のドアをノックして、俺の秘書をやってくれている、菊野さんが呼び掛けてくれる。
「ええ。もう準備は出来てます。行くとしましょう」
俺は菊野さんの呼び掛けに応え、転生者の調整役としての意識に切り替えると、皆に会うために部屋を後にした。