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転生して十年経ったので街を作ることにしました  作者: 笹村工事
第一章 街を作る準備をするよ
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13 襲撃される2人 その2 魔物来襲

「見てきます。カルナさまはここで――」

「ダメだ」


 独りで、破壊音の聞こえてきた玄関に行こうとするミリィをカルナは止める。


「相手は単体だが魔物だ。私も出る」

「っ! なぜ魔物がここに……」

「分からない。だが、どう考えても敵対的だ。考えるのは、排除してからにしよう」


 そう言うとカルナは、その場で個人用の防御系付与魔術を構築。無詠唱でミリィに3つ重ねて掛ける。


「カルナさま。私よりも先に御自分に魔術はお掛け下さい」


 心配そうに言うミリィに、


「戦い方を考えて、ミリィを優先しただけだ。気にする事は無い」


 カルナは微妙に言い訳するように返しながら、


「ミリィ。すまないが前衛を任せる。私はサポートに回る。頼めるか?」


 ミリィに反論させないよう一気に言う。これにミリィは、


「はい。任せて下さい」


 頼られる嬉しさを飲み込みながら静かに応え、自身の身体強化系魔術を活性化させる。

 ミリィは魔術を使えるが、同時に起動できる数は2つが限界のため、この状態で使える魔術はあと一つ。

 それを戦闘時の切り札として取っておくために、カルナは更に魔術をミリィに掛ける。


「白銀よ、敵砕く、手甲と化せ。顕現せよ、魔銀手甲」


 呪文詠唱と同時に、ミリィの両手を輝く白銀の手甲が覆う。


「行けるか? ミリィ」

「はい」


 返す言葉は短く、けれど応えようとする強さをミリィは込める。

 準備を整えた2人は、ミリィを前方に置き、カルナが後ろに就く配置を取る。

 2人の動きに停滞は無く、言葉無くとも通じ合うような滑らかさがあった。


 だからこそ、ミリィが無言で部屋を出ると同時に、カルナも距離を崩さず後についていく。

 いま2人が居る部屋は、陽色(ひいろ)と会談した一階最奥の部屋。

 部屋を出ると同時に、聞こえてくるのは玄関口から聞こえてくる破壊音。


 ミリィは、不快そうに眉を寄せ一気に走る。

 瞬き一つ費やす間に、現場に着いたミリィが見たのは歪な人型。


 それは例えるなら、筋肉で膨れ上がった怪物。

 全身を黒に染めながら、肥大化した筋肉の様相を見せる。


 巨大である。2mは超えるだろう。

 岩のような拳を振るう度に、周囲を破壊していく。

 目は一つ。顔の中央に握り拳ほどの赤黒い瞳が、爛々と殺意を灯していた。


 傍に居るだけで身のすくむような、暴力の塊のような怪異。

 けれど、それを前にしたミリィは静かでさえあった。


「どなた様か知りませんが、お帰り頂けますか?」


 情報収集も兼ね、試しに声を掛けてみる。

 けれどその返答は、暴力だった。


 壁の一部を魔物は拳で破壊すると、その残骸を手にし投げつける。

 まっすぐに飛んでくるそれは、ミリィの心臓を目掛け、目にも止まらぬ速さで迫った。


 瞬き一つする余裕すら無く迫るそれを、ミリィは当たる寸前に粉砕する。

 腕の一振りで、弾く事すらなく粉々に砕く。


 避けられないから砕き迎撃したのではない。

 自分の後ろには、守るべき主が居るのだ。

 どんな攻撃だろうと、通す気はない。不退転の覚悟を抱き実行したのだ。


「お帰り下さい。さもなければ、拳でお応えいたします。お選びください、好きな方を」


 挑発するように言いながら魔物の出方を探る。

 僅かに、魔物は何かを待つように動きを止めていたが、次の瞬間、弾けるような勢いで踏み込んできた。


 屋敷の床を踏み破る勢いで跳び込んでくると、風を打つ音をさせ拳を振るう。

 当たれば人体など吹き飛ぶような剛拳。その一撃は、鉄を砕くような轟音と共に打ち落とされた。

 

「遅いですよ」


 魔物の拳の軌道を途中から書き換えるような、弧を描き放たれた左拳。

 先に拳を放った魔物より、後からでありながらなお速く。ミリィの一撃は鋭かった。


「オオオオオオアアアアアッ!」


 先制攻撃を防がれた魔物が絶叫する。怒りを爆発させるように吠え叫び、衝動のままに殴りかかる。

 1撃で足らなければ2撃。それでも足らなければ幾らでも重ねるとでも言うように、目にも止まらぬ連打を叩き込む。


 顔を砕き胸を貫き、腕を潰し胴体を粉砕しようと、打ち放つだけで周囲を震わせるような拳の全て。

 それを、ミリィは尽く打ち落した。


 足さばきは軽やかに。魔物の動きを読みながら、一歩も退くことなく前へ前へと。

 暴風のように打ち出される十数の拳のこと如くを、打ち落とし逸らし弾いていく。


 その激しさに、魔物は連いて来られない。

 先んじて拳を放ったにも拘らず全てを打ち落とされ、挙句に両腕を連打で弾かれ胴体ががら空きに。


 そこに、ミリィは踏み込む。

 身体を沈め捻りながら、動きの全てを連動させた右ストレートを叩き込む。


 床を反動でふみ壊すほどの一撃は、魔物を後方に吹っ飛ばすほどの威力を見せた。


 吹っ飛ばされ倒れ込む魔物。どこか呆然としているかのように動かない。

 そこに、ミリィは静かな眼差しを向け言った。


「もう、終わりですか? でしたらお帰りを。逃がすつもりは、ありませんが」


 その言葉に、魔物は身体を震わせる。

 怒りを表すようなその異変は、新たなる脅威となって現れた。


 魔物の背中が盛り上がり、新たに一対の腕が生える。

 変化はそれだけに留まらず、頑強さを増すかのように全身が膨れ上がった。

 暴力の塊が、更に凶悪さを増す。けれど、


「手数を増やしましたか」


 ミリィは、どこまでも落ち着いた声で、


「ならば私はギアを上げます」  


 自身の身体強化を更に一段上に跳ね上げ、主の脅威を取り除くべく、前へと進み出た。

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