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転生して十年経ったので街を作ることにしました  作者: 笹村工事
第一章 街を作る準備をするよ
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2 王に街を作れと命じられました その2

「幾つか条件がございます。よろしいですか?」

「許す。望みを口にするが良い」


(ん……これ、こっちが要求を出してくるのは想定済みか)


 間を置かず淡々とした声で返してくる王に、俺は少しだけ警戒心を増やす。


(下手なこと言えば、向こうの思い通りになりかねないか……用心しながら大胆に交渉していかないとダメだな)


 俺は、わざと余裕があるような笑みを浮かべ、要求を口にしていく。


「まず一つに、私に王国の公娼権(こうしょうけん)を頂きたい」

「……なに?」


 要求の内容が、あるいは順番が、予想外だったのか訝しげな声を王は上げた。けれど、


「そのようなもの、手に入れてなんとする」


 すぐに王は落ち着いた声で、こちらに探りを入れるように聞き返した。


「最大の理由は、我が仕えし神のためです」


 返す俺は正直に、偽り無き本音を口にする。


「我が仕えし神は情愛の女神リリス。ゆえに、その信仰者の中には娼婦や男娼たちも数多く居ります。

 だからこそ、我が神に信仰を捧げる者達に関わるは、女神リリスの神徒たる我が責務と心得ております。たとえ微力なれど我が尽力により、女神リリスへの信仰心がより多くなれば、なによりも我が喜びとなるのです。

 その為に、公娼権(こうしょうけん)を賜りたく思います」


 王国とそれに属する辺境領、その全てにおける風俗に関わる商売の利権と、規制に関わる法の制定権。極端な事を言えば、家の外でエロいことをするのに関わる一切合財の権利を寄こせと、俺は色々と言葉のオブラートに包んで言っている。


 これに、王の周辺にたむろしている家臣団からは失笑めいた気配が漂う。

 先ほどまでの身構えるような気配は消えている。

 よほど俺の願い出たことが馬鹿馬鹿しいと思っているのだろう。


 なにしろ公娼権(こうしょうけん)である。現時点では王国や辺境領が、それぞれにいい加減な、慣習に基づく適当な運用を行っているのがほとんどなのだ。

 つまりは、それぐらい重要視されていない、というよりもどうでもいいと思われている。


 これは旨味が少ないと思われていることもあるが、同時に汚らわしいだの下劣だの思われているのも原因だ。

 人間、エロいことが無きゃ生まれてくることは無いし、エロい気持ち自体はどういう形であれ(反発やら拒絶という形であったとしても)持っている自然なことだってのに、馬鹿にしているのだ。


(オッケー。そのまま勝手に舐め腐っといて)


 ほくそ笑みしそうになる自分を抑える。舐めてくれるなら好都合。こちらはそちらの隙をするりと突いて、欲しい物を取っていくだけ。


「王よ。如何でしょうか?」


 俺は王の答えを促す。否と言うなら、この場は蹴って即座に帰る覚悟を決めながら。すると、


「良い、許そう。そんな物でよければくれてやる」


 物好きだ、とでも言いたげな呆れたような眼差しを向けながら、王は許しを口にした。


(随分あっさりと、許しを出すな……というより、厄介事を押し付けることが出来て清々しているような……)


 王の態度にいぶかしさを感じていると、


「ただし、条件がある」


 王は続けて言った。


「前王の残した公妾(こうしょう)どもの面倒を、貴様が見ろ」

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