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転生して十年経ったので街を作ることにしました  作者: 笹村工事
第一章 街を作る準備をするよ
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7 リリスと陽色 いちゃいちゃ甘々 その2

 ぎゅうっと、リリスは強く強く俺を抱きしめる。

 まるで、俺の言葉を確かめるように。


陽色(ひいろ)……」


 泣き出しそうな表情で、リリスは俺を見詰める。

 そんな表情をさせたくなくて、俺はやさしく見詰めながら、想いを口にした。


「大好き。愛してるよ、リリス。逢えなくたって、それは変わらないから。

 だから、大丈夫。寂しくて、苦しいけど、リリスを想うだけで我慢できるから。

 リリスが、謝る理由なんてどこにもないんだよ。

 苦しまないで。お願い、リリス」


 涙を浮かべ、リリスは苦しげに笑みを浮かべる。

 自分も、寂しくてつらいのだと、言葉にしたい想いを飲み込むように。


 リリスに、そんな表情をさせたくなくて、俺は何かを口にしようと思う。

 でも、そんな物は必要ないのだと言うように、リリスは俺の胸にちょこんと額を当てると、


「ありがとう。私も大好きよ。愛してるわ、陽色(ひいろ)


 甘えた声を上げてくれた。

 それが、嬉しい。頼られているようで、心が浮き立つ。

 俺は頭を撫でながら、リリスに返す。


「嬉しいです、そう言って貰えるとすごく。それに、誇らしいんですよ。自分の好きな人が、そんな風に誰かの事を大事に想ってくれるんだって。

 きっと、俺以外の勇者も、嬉しくて嬉しくてたまらないと思います。

 だって、みんなも自分の大事な(ひと)に逢いたいと思ってるんですから」


 納得するように言いながら、俺はリリスを抱きしめる。

 リリスの選択は、きっと最善の選択だ。

 だから、俺は納得しなくちゃいけない。それぐらい我慢できるんだって、見栄を張りたい気持ちもある。

 でも、それでも寂しい。その寂しさを埋めるように、俺はリリスを求める。


 それは、リリスも同じだった。 


陽色(ひいろ)……」


 俺の頬に手を寄せて、確かめるように優しく撫でてくれる。

 くすぐるように耳を指の腹で滑らせ、やわやわと揉むようにつまむ。

 そして小さな子供にするように、髪を梳くように頭を撫でてくれた。


 されるがままに、俺はリリスの愛撫を受ける。心地好くて、言葉も無く、俺はリリスを見詰めていた。


 同じように、リリスも俺を見詰めてくれる。そして心地好さそうに微笑みながら、


「まだ、大丈夫だから。神々が現世で生きることのできる権能を貸すのは、街が出来て、しばらくしてからにするつもり。

 だから、しばらくは離れ離れにならなくても良いの。

 それにね、街が発展すればするほど、私が現世で振える力は大きくなるはずだから。

 そうなれば、一度に多くの神々を、私も現世に留まったまま、喚ぶことが出来るようになるの。

 ……そのために、しなきゃいけない事も、出て来るとは思うけど」


 気を沈ませるようなリリスに、俺が心配になって問い掛けようとすると、それより早くリリスは続けた。


「街を立派にするの、頑張ってね、陽色(ひいろ)。そうすれば、何もかもみんな、上手くいくと思うから」

「…………」


 すぐには俺は返せなかった。

 少しだけ、リリスは俺に隠し事をしているような気がしたから。

 でも、その疑問を俺は飲み込む。リリスがいま口にしたくないのなら、それで良い。きっといつか、伝えてくれる筈だから。

 何もかもさらけ出す事と、信じることは違うんだ。少しぐらいの隠し事や嘘ぐらい、許せないのは心が狭い。

 それがダメだというのなら、俺がリリスに見栄を張るのだって、いけない事になってしまう。


(それに、なんだか可愛いしな)


 隠し事をして、俺に悪いと思っているリリスがかわいい。すごくかわいい。誰が何と言おうがかわいい。


陽色(ひいろ)……?」


 リリスの事をかわいいと思うあまり、ゆるんだ表情を見られてしまったのか、不思議そうに呼び掛けるリリスに、


「なんでもないですよ~。リリスはかわいいなぁ、って思っただけですから」


 隠す気も無く素直な気持ちを口にする。するとリリスは、ほんのり顔を赤く染めると、


「もう……ばか……」


 恥ずかしそうに、そして嬉しそうに、俺の胸に額をちょこんと当ててきた。


「うあっ、もうっ、やっぱかわいいですっ」

「んっ……もう、そんなことばっかり言うんだから」


 ぎゅむぎゅむと、俺たちは抱き合う。抱きしめるリリスのやわらかな体が心地好くて気持ちいい。

 リリスを感じながら、俺は甘えるように問い掛けた。


「今日は、もう神座に戻らなくても大丈夫なんですか?」

「ええ、大丈夫。しばらくは、戻らなくても良いぐらい、話し合いをしてきたもの。だから、ね――」


 リリスはうるんだ眼差しで俺を見詰めると、


「今夜はずっと、一緒だよ。一緒に、いようね」


 甘えるように言いながら、ねだるように目をつむる。

 俺はそれに、キスで応えた――


 ――そして陽色とリリスは、2人きりの夜を過ごした。


 そのお蔭で気力の充実した陽色は、朝一番で、街を作る為の下準備に精力的に動き出す。

 そのために向かったのは、魔術協会だった。

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