7 リリスと陽色 いちゃいちゃ甘々 その1
「リリス……?」
遊ぶように弾むリリスの声に、俺は意識する事さえなく、彼女の名前を呼び視線を向ける。
「ただいま」
視線の先にはリリスの姿。求めていた彼女は、俺を見詰めながら、喜びにあふれるような笑顔を浮かべてくれる。
ただ、俺と逢えるだけで嬉しいのだと、伝えてくれるように。
それだけで、心が満たされる。喜びが、広がっていく。
ふわふわと浮かぶような心地好さと弾むような嬉しさに、俺はもっとリリスが欲しくて、迎えに行くように椅子から立ち上がろうとする。
でも、それより早く、リリスは俺の傍に。立ち上がろうとした俺の胸に、そっと手を当てる。
力を抜いても良いのだと、言葉も無く囁くように。
ふっと、意識せず強張っていた身体が脱力する。
ああ、自分はやはり疲れていたのだな、と。リリスのお蔭で、ようやく実感できた。
弱音を吐くつもりはないけれど、甘えてしまいたくなる。
俺は、求めるようにリリスを見詰め、リリスは受け止めるように柔らかく笑みを浮かべると、ふわりと俺の膝の上に乗ってくれた。
やわらかな重みと、身体の感触。リリスが、今ここに居るのだという確かさを与えてくれる。
それだけで、心地好い。
その想いが、表情に出てしまったのか?
向き合うように体を預け、俺を見ていたリリスはくすくすと笑うと、
「おかえりって、言ってくれないの?」
甘えるように上目づかいに俺を見詰め、ねだるように呼び掛ける。
くすぐったい気持ちに、俺も小さく笑うと、
「おかえりなさい、リリス――」
ぎゅっと抱きしめながら、
「逢いたかった……逢えて嬉しい」
素直な想いを口にした。それに応えるように、リリスも俺を抱きしめてくれる。
「私もよ、陽色」
濡れしめった、熱を感じさせる声。囁かれるだけで、ぞわりと痺れるような甘さが走る。
我慢できずに、頬にキスをする。匂い付けをするように、背中に手を這わせ身体を摺り寄せる。
「甘えんぼ……」
くすくすと笑いながら、楽しそうにリリスは言う。されるがままに俺に身体を預けながら、さらに促すように抱き着いてくる。
嬉しくて、安心する。求められているのだと、想えるから。
「甘えちゃいますよ……だって、こんなに逢えないとは、思わなかったんですから。随分、今回は長かったですね」
頭を撫でながら、俺は静かに問い掛ける。するとリリスは、迷うような間を置いてから返した。
「ごめんね。みんなと、いっぱい話し合わなきゃいけない事があったから。
でも、もう大丈夫。みんな、新しく作る街を発展させるのに、協力してくれるって。
だから、ね……陽色……また、しばらく逢えない時が、あるかもしれないの……」
ぎゅうっと、リリスを強く強く抱きしめる。湧き上がった不安に、リリスの言葉の意味を問い掛けるより早く、彼女は応えた。
「みんなも、現世に出て来れるよう、陽色から貰った私の権能を貸してあげようと思うの。
私だけが守護するよりも、その方がずっと街は発展する筈だから。
それにね、みんなも、みんなの勇者に逢わせてあげたいの。私が陽色を大事に想っているように、みんなも、自分の勇者を大切に想っているから。
だから、陽色――」
ごめんなさい
泣き出すように、堪えるように、そう口にしそうになったリリスの言葉より早く、俺は言った。
「愛してるよ、リリス」