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転生して十年経ったので街を作ることにしました  作者: 笹村工事
第一章 街を作る準備をするよ
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7 リリスと陽色 いちゃいちゃ甘々 その1

「リリス……?」


 遊ぶように弾むリリスの声に、俺は意識する事さえなく、彼女の名前を呼び視線を向ける。


「ただいま」


 視線の先にはリリスの姿。求めていた彼女は、俺を見詰めながら、喜びにあふれるような笑顔を浮かべてくれる。

 ただ、俺と逢えるだけで嬉しいのだと、伝えてくれるように。


 それだけで、心が満たされる。喜びが、広がっていく。

 ふわふわと浮かぶような心地好さと弾むような嬉しさに、俺はもっとリリスが欲しくて、迎えに行くように椅子から立ち上がろうとする。


 でも、それより早く、リリスは俺の傍に。立ち上がろうとした俺の胸に、そっと手を当てる。

 力を抜いても良いのだと、言葉も無く囁くように。

 

 ふっと、意識せず強張っていた身体が脱力する。

 ああ、自分はやはり疲れていたのだな、と。リリスのお蔭で、ようやく実感できた。


 弱音を吐くつもりはないけれど、甘えてしまいたくなる。

 俺は、求めるようにリリスを見詰め、リリスは受け止めるように柔らかく笑みを浮かべると、ふわりと俺の膝の上に乗ってくれた。


 やわらかな重みと、身体の感触。リリスが、今ここに居るのだという確かさを与えてくれる。

 それだけで、心地好い。


 その想いが、表情に出てしまったのか?

 向き合うように体を預け、俺を見ていたリリスはくすくすと笑うと、


「おかえりって、言ってくれないの?」


 甘えるように上目づかいに俺を見詰め、ねだるように呼び掛ける。

 くすぐったい気持ちに、俺も小さく笑うと、


「おかえりなさい、リリス――」


 ぎゅっと抱きしめながら、


「逢いたかった……逢えて嬉しい」


 素直な想いを口にした。それに応えるように、リリスも俺を抱きしめてくれる。


「私もよ、陽色(ひいろ)」 


 濡れしめった、熱を感じさせる声。囁かれるだけで、ぞわりと痺れるような甘さが走る。

 我慢できずに、頬にキスをする。匂い付けをするように、背中に手を這わせ身体を摺り寄せる。


「甘えんぼ……」


 くすくすと笑いながら、楽しそうにリリスは言う。されるがままに俺に身体を預けながら、さらに促すように抱き着いてくる。

 嬉しくて、安心する。求められているのだと、想えるから。


「甘えちゃいますよ……だって、こんなに逢えないとは、思わなかったんですから。随分、今回は長かったですね」


 頭を撫でながら、俺は静かに問い掛ける。するとリリスは、迷うような間を置いてから返した。


「ごめんね。みんなと、いっぱい話し合わなきゃいけない事があったから。

 でも、もう大丈夫。みんな、新しく作る街を発展させるのに、協力してくれるって。

 だから、ね……陽色(ひいろ)……また、しばらく逢えない時が、あるかもしれないの……」


 ぎゅうっと、リリスを強く強く抱きしめる。湧き上がった不安に、リリスの言葉の意味を問い掛けるより早く、彼女は応えた。


「みんなも、現世に出て来れるよう、陽色(ひいろ)から貰った私の権能を貸してあげようと思うの。

 私だけが守護するよりも、その方がずっと街は発展する筈だから。

 それにね、みんなも、みんなの勇者に逢わせてあげたいの。私が陽色(ひいろ)を大事に想っているように、みんなも、自分の勇者を大切に想っているから。

 だから、陽色(ひいろ)――」


 ごめんなさい


 泣き出すように、堪えるように、そう口にしそうになったリリスの言葉より早く、俺は言った。


「愛してるよ、リリス」

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