12 ひとまず勝利です。でも―― その4
「冒険者の人らって、地方で魔物とか魔獣の相手しとる傭兵みたいな人達のことなんよね?」
普段は、勇者のみんなで作った商会の警護方トップをしている五十鈴は、確認するように訊いてくる。
「商品運ぶ時とかで、護衛を頼んだりするんやけど、そういう人らに協力して貰おう言うん?」
「うん。気になる点はあるかな?」
ちょっと考え込んでから、五十鈴は返してくれた。
「一つ目は、戦力やね。
冒険者の人ら、魔術使えたり、歴戦の傭兵みたいな人らも居ることは居るよ。
やけど中には、農村で居場所がのうなった、長男以外の人らがしょうがなしに就いてたりする人もおるやん。
戦力がバラバラすぎるから、戦力として見るのは難しゅうないん?」
五十鈴の言葉はもっともだ。
元々冒険者は、王都や辺境領の中枢以外の地方で、戦力が届き辛い場所を補うために自然に発生した物だけど、それだけに質がてんでバラバラなんだ。
稀に魔術師の家系ではない所から生まれてきた魔術師の才を持った人達や、なんらかの異能を持った人達ならば、それぞれ単体でも戦力になる。
そうでなくても、ある程度訓練され連携が出来る集団なら、武器を揃えれば下級の魔物ぐらいなら何とかなる。
けれど五十鈴が言ったように、中には食い扶持にあぶれて他に出来ることが無いからやっている、なんて人達も居るんだ。
「見極めはするつもりだよ。下手に戦えない人まで呼び込んで、現場に混乱と被害を出す訳にはいかないから」
「そうした方がええやろうね。やけど、それどうやってするん? そもそも、どこから呼び込むつもりなん? 伝手はあるん?」
矢継ぎ早に五十鈴は問い掛けてくる。
それはしょうがない。何しろ冒険者と一括りに言っても、どこかが全部をまとめて組織しているような所がある訳じゃないからだ。
基本的に冒険者は、都市や地方が許容できる範囲を超えた人達の集まりだ。
あとを継がせる余裕のないあぶれた家族や、その集団が受け入れられない異物としての誰か。
要らない者達を外に捨て、足らなくなったら一部を受け入れる。
そうでなければ、危険な魔物や魔獣の対処といった、汚れ仕事を押し付ける。
元々は、そういうものだ。
だから、王政府や辺境領中枢は、そういった人達がひとまとまりになることを嫌っている。
積極的に排除すると、地方が崩壊したりするので消極的に受け入れてはいるが、決して一塊として力を付けることは許さない。
ましてや、冒険者の総数は、全てを合わせれば数百万人を超える。
放浪する一つの民族のような、どこにも属していない相手に、団結という力を与えたくないんだ。
そんな雰囲気があるせいで、最大で千人程度が所属するギルドが出来ることはあっても、冒険者全員が所属している組織なんてものはない。
だから、場合によっては個別の冒険者ごとにやり取りをして、協力を取りつけなけりゃいけない状況なんだ。けれど、
「伝手はあるよ。安心して」
俺は、事実だけを伝えるように、五十鈴に応える。
「ほんまに?」
「うん。本命が一つに、思わぬ縁で転がって来たのが一つ。あとは、ダメ元なのが一つかな」
「そんなにあるん? ……あっ、ひょっとして、壮真に頼んでみるん?」
「うん。それが本命だよ」
不屈の神ピュラーの勇者である石動壮真は、地方で魔物や魔獣の撃退、それに盗賊の討伐なんかをやっている。
だから、必然的に冒険者の人達と関わることも多く、伝手も出来ているんだ。
「もう、壮真には連絡してあるんだ。今回の戦いには間に合わなかったけど、近い内に連絡を貰えると思う」
「そういうことなん。さすがに仕事が早いやん。で、他の2つの当てって、なんなん?」
「一つは、五郎が縁を運んできてくれたんだ」
「五郎が? どういうことなん?」
「五郎には、この前、蒸気機関車の高級車両で出す料理を決める料理勝負をして貰ったりしたんだけど、そこでアルベルトさんって人と仲良くなったんだ」
「その人って、今回の戦いでも参加してくれた人やよね? 所属が魔術師でもなんでもない料理人とか書いてあったから、気になっとったんやけど」
「うん。彼、以前は冒険者のギルドマスターをやってたらしいんだ。それも、数百人規模の」
「大手やん。なんでそんな所のギルドマスターが、料理人しとるんよ」
「元々、料理人になりたかったみたい。ギルドを任せられる人が出来たから、その人に丸投げして、残りの人生をやりたいことをしようとしたみたい」
「脱サラして始める料理人生活みたいな事になっとるねぇ。それはええけど、そっちの方は、巧くいっとるん?」
「それはまだ、分からないよ。もう、取れるだけの連絡は取って貰って、勇者の館の方に来て貰えるようにしてるけど、ちょっと見通しは立ってないよ」
「ん~、ダメ元の大穴って感じやね。それで、最後の1つは?」
「他の勇者で、すでに関わりを持ってる所に、人を回して貰えないかなって思って。五十鈴の所の商会でも、専属契約している人達居たでしょ」
「ごめん。無理やわ」
予想していた通り、五十鈴は即座に断った。
「必要最低限に、プラスアルファで多少の余裕が出るぐらいしか専属契約しとらんもん。それで引き抜かれたら、仕事に支障が出るわ~」
「やっぱり、無理?」
「そやね~。将来的には、可能かもしれへんよ。でもすぐには無理やわ~。だいたい、ええ所は、目ぼしい所が手を付け取るし。そうやない所を引き抜いたとしても、それは、そこが守っとった地域の戦力を奪うことになるんやもん。気軽にスカウトなんか出来へんわ」
「そうだよね。そういった所も、問題なんだよね」
地方の守りに就いている冒険者を引き抜けば、その地域は魔物や魔獣、場合によっては盗賊に襲われかねない。
自分達の街のためにそれをする気にはなれないので、結局の所はどことも専属契約を結んでいない、自由に移動しているような冒険者を集めなきゃいけないんだ。けれど、
(そういう人達って、大抵クセが強いからなぁ……)
クセが強くなければ、自由気ままにやって生き残れないとも言えるけども。
「問題は多いよ。でも、それでもやらなきゃ、だからね」
俺は、ちょっと無理をして笑顔にしながら五十鈴に応えた。
「やれることはするよ。だから、しばらくここから俺は離れるけど、他の勇者のみんなと一緒に頼むよ」
これに五十鈴は、にっと笑って力強く返してくれた。
「まかしときいな。ちゃ~んと、誰も犠牲を出さずに、持ちこたえてみせるんよ。やから、追加の人員の方は、任せるんよ~」
「うん。任せて」
力強く、俺も返す。
(さて、戻ってから、頑張らないと)
心の中で俺は呟きながら、決意した。
こうして陽色が王都に戻る中、現地に残った魔術師たちと勇者たちは、拠点を拡大させながら魔物の進行を防いでいった。
その中で、陽色は人員の補充に苦労していったが、それを妨害する者達が居た。
未だ、多くの者が知らぬ闇の中で、奴らは暗躍のための談合を重ねていた。




