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転生して十年経ったので街を作ることにしました  作者: 笹村工事
第二章 街の予定地に魔物が溢れているので対処を始めるよ
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12 ひとまず勝利です。でも―― その1

「お疲れさま! 皆さんの活躍で、魔物に打ち勝つことが出来ました!」


 新種の魔物に率いられた軍勢をなんとか倒した俺達は、蒸気機関車に乗って前線基地に戻って来ていた。


「これは、この地での初めての勝利です! 全ては皆さんのおかげです! 感謝します!」


 疲れ切ってふらふらな人も居るけれど、誰もが皆、昂揚感をその表情には浮かべている。


「今日の戦いで、私は確信しました! 皆さんと協力し続ければ、必ずこの地から魔物をすべて排除できると!」


 根拠も確信もあるが、絶対とは言い切れないことを、俺は断言する。

 それが、俺の仕事だ。

 気心の知れた個人同士ならともかく、お互いを知り尽くしえない集団では、意思を統一し士気を高める共通認識が不可欠だ。


 一歩間違えれば地獄に行進させるようなことでも、口にしなければいけない。

 その上で、誰もそうならないようにするのが、俺たち勇者の仕事なんだ。


「今日は始まりの日です! ここから打ち勝ち続けましょう! これから待ち受けている困難の全てを、皆さんの力を借りて打破します! どうか、よろしくお願いします!」

「おう! 任せとけ!」


 俺の言葉に、魔術師のみんなと一緒に居た五郎が力強く返す。

 意見の誘導。

 後ろめたい気持ちはあるけれど、必要なそれを、勇者のみんなには頼んでいる。


 それに続いてくれる人が出るかは賭けだったけれど、仕込みで準備していた勇者のみんなが返してくれるよりも早く、魔術師のみんなは返してくれる。


「頑張ります!」


 元気な声で返してくれたのは、若い魔術師のコニーだ。

 魔術協会に訪れた時に門衛に就いていた彼は、こちらに好意を感じてくれている。

 だから、俺を見詰める眼差しは輝いていた。


(……うぅ、心が痛いよぅ……)


 必要なことだけど、割とろくでもないなぁと自覚している事で純粋な眼差しを向けられると、罪悪感にキリキリする。なのだけど、


「俺だってやってやります!」

「わ、私も頑張ります!」

「魔物なんか、全滅させましょう!」

「俺の活躍をメイドさんに見せつけますよ!」

「お前は黙ってろ!」


 若い魔術師を中心に、一部なんか方向性が違ってるけど、熱い情熱が返ってくる。

 しかも、その熱気に当てられたのか、中堅どころの年かさの魔術師たちも、声は上げないが熱気のある眼差しで俺を見詰めていた。


(士気の維持は何とかなったか)


 みんなの様子に、ひとまず胸をなでおろす。

 魔物の軍勢に打ち勝ったとはいえ、楽勝だったとは、とても言えないからだ。


 瑠璃の魔術で、怪我をした魔術師は出なかったけど、魔物から受けた痛みや恐怖の記憶まで消えた訳じゃない。

 下手をしなくても、心が折れる人が出てもおかしくは無かったけれど、幸いそこまで行った人は居ないみたいだ。 


 それは、俺達が救援に向かうまで戦い続けていた武子達の活躍が大きい。

 みんなを励ましながら、積極的に戦い。守りながら鼓舞し続けた。


 魔物との戦いの中にあって、勇気を見せ、そして奮い立たせた姿が、折れそうな心を支えたみたいだ。

 それもあってか、特に武子の周囲には、熱い視線を向ける魔術師たちが集まっている。


 気のせいか、女の子が多いような気がするけれど。

 遠巻きに熱い視線を向けてるのは、男どもが多いけど。


 武子は笑顔でみんなに囲まれてるんだけど、気のせいか冷や汗をかいてる気がする。

 以前に聞いた話だと、男にはモテなかったけど女にはモテたって話なので、それを思い出してるのかもしれない。


(……男にモテないっての、単純に声を掛ける勇気のあるヤツが居なかったからじゃ……)


 遠巻きに見詰めてる男どもを見てるとそんな気がするけど、それはそれで置いておいて、俺は俺で自分の仕事をしていこう。

 みんなの歓声が落ち着くのを待ってから、俺は声を上げる。


「ありがとうございます! 皆さんの賛同が、力強いです! この勢いを、維持していきましょう!」


 再び上がった歓声を聞きながら、盛り上がった気持ちが消えないよう気を付けながら、落ち着いて貰えるように言葉で誘導する。


「皆さんの想いに、感謝です! それを維持するためにも、適度な休憩は必要です! これから休憩して貰う班と、警護に当たって貰う班に分かれて貰います!」


 俺の言葉に続くようにして、コンテナ車両の1つから、メイドさん達が出て来る。

 彼女達は、蒸気機関車の引っ張っている車両の中で、一番頑丈で防音設備が整っていたコンテナ車両で待機して貰っていた。

 万が一の時は、有希の神与能力がバレるのも覚悟の上で、避難用の空間移動の扉も内部には完備してあるコンテナ車両だ。


 俺達が戦っている間も、ある意味一番安全な場所に居て貰ったとはいえ、メイドさん達は全員、平然としたものだ。 

 人材派遣業をしている、誓約神ミトラの勇者、坂上東海子が、


「肝っ玉座ったの派遣するから。頼りにしてちょうだい」


 と言っていたけれど、実に頼もしい。その分、お給料は高いけど、安く思えるぐらい十二分だ。


「休憩班の皆さんは、今あちらに居るメイドさん達がお世話をしてくれますので、休憩用の設備が整ったコンテナ車両で英気を養って下さい」


 俺の言葉に、特に一部の男どもの間で、歓声が上がる。正直者だ。

 思わず苦笑しそうになったけど、それを抑え、俺は手早く指示を出して行く。


 そうして、一先ずの待機態勢が整う。

 五郎や有希、そして和花たちに、まだ余力のある魔術師の人達を指揮して貰いながら周囲の索敵をして貰う。

 幸い、今のところ周辺に魔物の気配は無い。しばらく休む余裕はあるだろう。


 残りの魔術師の人達は休憩に回って貰う。

 こちらは、カルナやラングレーさん達、魔術師サイドの上役に当たる人達に対応を任せた。


 そして、一時的に指揮者役から離れた俺は、蒸気機関車に向かう。

 反省会を、五十鈴とするためだ。


 ドアを開け、中に入る。先に来ていた五十鈴は、ゆったりと椅子に座りながら、


「運が良かっただけやねぇ」


 やわらかな口調で言ってくれた。

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