1 女神さまに相談しよう
王宮で無理難題をぶち投げられたその日、俺は愛しの女神さまに聞いてみた。
「どんな街が欲しいですか? リリス」
「突然、どうしたの?」
執務机の端に、ちょこんとお尻を乗せて。
愛しの我が女神は、耳をくすぐるような心地好い声で返してきた。
「プレゼントをくれるって言ってたけど、まさか街をくれるの?」
「ええ、そうですよ」
俺の応えにリリスは、ちょこんと首をかしげる。
うん、今日も我が女神は、かわいい。
俺の視線の先に居るのは小柄な少女。
夜闇を思わせる艶やかな黒髪を背中に届くほどに伸ばし、透き通るような白い肌は瑞々しく張りがある。
淡い空色のワンピースに包まれたその体は、これから伸びやかに育つ硬さと共に、女としての柔らかさも同居していた。
蠱惑的でありながら清純な、相反する魅力を持っている。
彼女が我が愛しの女神たる、この世界に俺を転生させたリリスなのだ。
リリスは思案するように黙っていたが、不思議そうに問い掛けた。
「どうして、そんなことになってるの?」
「王に無理難題を投げられたからです」
「ん……どういうこと?」
よけい分からなくなったというような表情をするリリスに、俺は続けて言った。
「話すと少し長くなりますね。でもそんなことよりも大事なのは、貴女がどんな街が欲しいかです」
これにリリスは、お尻を乗せていた執務机から、ぴょんと降り立ち。
床に脱いでいたミュールを穿いて俺の傍にまで来ると、
「本気で街をひとつプレゼントしてくれるの? 陽色」
リリスは俺の膝の上に座り、身体を預けてくる。
やわらかな重みと、温かな肌の温もり。
心地好さを感じながら、俺は返した。
「貴女のための街を造ろうと思っているんです。貴女が受け入れてくれるなら、貴女にその街の、守護女神になって貰いたいと思っています。嫌、ですか?」
「嫌じゃないわ。でも、唐突ね。事情がまだ呑み込めないわ。王宮に呼び出されたかと思ったら、帰って来るなり私を喚んで、そんなこと言うんですもの。ね? ちゃんと説明してくれるんでしょう?」
「勿論ですよ」
俺はリリスのお腹に手を当てるようにして抱き寄せながら、王宮での出来事を説明した。