9話 『家までの道のり』
メイとエルフ、その後ろに俺という形で歩きながら俺は二人が話しているのを聞いていた。
なにやら女子会かのように話している。
こっちはまだ名前も知らないってのに、メイは親しげに名前でエルフと話していた。
いやまぁ別に名前とか知りたいわけじゃないけどね。うん。別に混ぜてほしいとか思ってないけどさ。
「あ、そうだ。そこの人間。貴様がメイの相棒だから教えといてあげるけど、私の名前はレイナだ。ただ、人間に名前で呼ばれるなんて反吐が出るのでエルフと呼んでくれ。というか、是非呼ばないでくれたら助かる」
エルフのやつ言い切るだけ言い切ったらまた前を向いて歩き出した。
なんなんだよ。どんだけ人間嫌いなんだよ。
こうなったらもうむしろ名前で呼ぶしかねえな。
反応を見て楽しんでやる。
「なぁレイナ。あとどれくらいでお前の家に着くんだ?」
「…………」
くっそぉぉ……なんだこいつ。無視するのかよ。名前呼びだと無視なのか? エルフと呼べと。
「ねぇレイナさん。あとどれくらい?」
「あー、そろそろよ。メイは疲れたのかしら?」
「ううん!守人が知りたがってたからー!」
「あら優しいのね。でも人間にそんなに優しくしちゃダメよ? あんなの同じ人と思っちゃダメ。人の皮を被ったモンスターなんだから」
「んー。でも守人は違うと思う! 私にも優しいし、口調とかも一人だと変なままだったし、それに、守人は違う世界から転移してきた人だから!」
メイの言葉を聞いた瞬間、レイナは一度驚いたかのように俺の方へと振り向いた。
そんなに転移してきた奴は珍しいのか? それとも、メイがほかの人間と違うとか言ったからなのか?
「あなた。本当に転移者なの?」
「あ、あぁ。なんか死んだら神様にここに飛ばされたんだよ。だから初めはなにも分からなくてな。メイには助けられたわ」
「そう。貴方を誤解してたわ。今度からは一応名前で呼んでもいいわよ。それと、質問にもある程度は答えてあげる。と言っても、人間に変わりはないから調子には乗らない事ね」
どうやらメイのおかげで少しだけ待遇が変わったようだ。
その点については助かるが、やはり人間だからダメなのか。
そう考えると少しだけエルフに転生したくなってしまう。
「さて、そろそろ家に着くわ。聞きたいことがあるなら家で聞くわよ」
「あの……無理を承知で頼みます。私と守人を泊めてくれませんか!」
メイは家に入る前にレイナへと聞いていた。
確かに、このまま家に泊まれなければ俺とメイは自分がどこにいるのかも分からない森で一泊する事になる。
モンスターにも襲われるだろうし、あまりにも危険すぎるだろう。
「うーん……メイと人間が一緒に寝るなら泊めれるけど、流石に男と女だし……」
「あ、大丈夫ですよ。俺、小さい子に興味ないので」
レイナの中で俺はメイを襲うとか思われてたのだろうか。
まずメイを性的な目で見ることなんて出来ないし、襲うなんて俺には無理だ。
「あら。てっきり小さい子が好きなのかと思ってたわ。なら大丈夫ね。良いわよ。家に泊まっていきなさい」
「ほんと!? ありがとっ! レイナさん大好きー!」
「こらこら抱きつかないの。歩きづらいでしょ」
メイはレイナに抱きついている。
なんていうか、親子のように見えなくもないが、これは口にするのはやめておこう。
「おっ、あれが……家?……いや、マジ?」
「あら、着いたわね」
「なにこれ!すご!!!」
俺たちの前にあるレイナの家は、普通の家とは違った。
もしかしたら、昔のエルフ達はこういう家が普通なのかもしれないが、人間の俺と今のエルフのメイが見ても驚いてしまう。
「さ、入りましょ」
レイナが家のドアを開く。
おおよそ高さは普通の一軒家ほどの大きさ。
だけれど、レイナの家は普通の一軒家ではなく、巨大な木だった。