8話 『救出』
目を瞑り、ただ死ぬのを待った俺たち。
だが、どうもモンスター達の近付く音が聞こえなかった。
その代わり、俺の近くに誰かが居るのが分かった。メイ以外の誰かだ。
「はぁ……どうして私は人間なんて助けてるのかしら……」
ボソボソと呟いている声が聞こえるが、どうやら聞く限り俺たちを助けてくれるようだ。ものすごく嫌そうだが。
「氷の精霊達よ、今ここに現れ全てを氷獄へと封じ込めよ『ブリザードゲージ!』」
誰かが詠唱した時、俺たちの前は青く光った。
その光に俺は目を開けてしまい、驚きを覚えた。
モンスターが全て氷の檻に閉じ込められているのだ。だが、魔法を放った者が俺たちの近くから離れたような形跡はない。
ということは、離れた位置から魔法を飛ばした? 魔石という線も考えたが、明らかに詠唱していたから魔法を放ったのだろう。
そして、そんな魔法が使えるのは俺達が探している古いエルフ族に違いない。
「誰か分からないけど助けてくれてありがとう! それで、是非会って話したい事があるんだ! 姿を見せてくれないか!」
「守人? 一体誰に話し掛けてるの?……って、なにこれ!なんでモンスターが!?」
メイは驚いて辺りを見渡している。
俺も魔法のおかげで辺りが少し明るいのを利用して見渡しながら古いエルフを探す。
だが、どうにも姿は見えない。
これが姿隠しの魔法なのだろう。何故小さい森ではなく、この森の奥に居るのかは分からないが、小さい森に居るなんて所詮は噂だったという事だろう。
「くっそ……やっぱり無理か……」
「ねぇ守人! そこに誰か居るよ? その人が私たちを助けてくれたんじゃないのかな!」
「はっ? どこにも居ねえぞ? 」
「ううん! その木の裏に居るよ!」
メイが指差した木の裏へと俺は近付く。
メイに見えているということは古いエルフではなく知らない人なのか?
「はぁ……バレたなら仕方ないわ。まさか姿隠しの魔法が見破られるなんてね」
俺が近付くよりも早く、木の裏から人が現れた。
身長は俺よりも少し低く、耳はメイのように少し長い。
それに加え、肌は真っ白。
エルフということは確信した。
「さっきは助けてくれてありがとうございます」
「別に感謝なんていらない。たまたま貴方達がそこに居て、私が通りがかったからモンスターを閉じ込めたのよ。私に危害が加わるのを避けただけよ。そんな事よりも、そこの貴方。どうして私の姿が見えたの?」
隠れていたエルフは俺のことを通り過ぎ、メイへと近付いた。
メイは少しだけ震えていたが、近付いてくるエルフに口を開いた。
「わ、分かんないけど。なんか見えたから……まさか魔法を使ってたなんて思わなくて……」
「良いのよ。それよりも、貴方のことが今気になってしまったわ。貴方の両親はどんな人なの?」
「分かりません。ほとんど会ったことがないから……」
「そう。まぁ貴方の肌の色が全てを教えてくれたわ。それと、あなたが私の魔法を見破れたのは、あなたが同類だからよ。貴方も私たちと同じ、古いエルフの血を持っている。だから分かったのよ」
俺一人を除け者にし、メイとエルフは話し合っている。
まぁ俺が入れるような話ではなさそうだが、除け者というのは少しだけ複雑な気持ちになってしまう。
「あ、あの。ありがとうございます。助けてくれて……」
「良いのよ。あなたは仲間だもの。むしろ助けて良かったわ。さ、私の家に来てちょうだい。話をしましょ。仲間に会ったのは久しぶりだもの」
「家に行って良いんですか!?」
「えぇ! 是非来てちょうだい! それに、早くしないとそろそろ私の魔法も解けてしまうわ」
メイとエルフは何故か手を繋ぎ歩き出した。
話を聞いていない俺には既に何が起きているのかすら分からない。
「守人! この人が家に来ていいって!!」
「う、うーん……人間……ホントはものすごく嫌だけど……女王として……招待するのも……」
めちゃくちゃ頭を抱えながらボソボソ呟いているが、やはり人間は嫌なのだろうか。
まぁこの世界の現状から見て人間を家に入れたくないのはなんとなく分かる気がする。
「はぁ。早く来なさい。行くわよ」
「ほらほら!守人! 早く!」
「お、おう!わかった!」
仕方なく許可された俺は、メイたちの後ろを歩く。
暗闇の中歩くとのかと思いきや、エルフが何かを唱えると、淡い光が道を作り、俺たちの行くべき道を教えてくれた。
こうして、俺とメイは奇跡的に会いたかったエルフに助けられ、家まで招待された。
メイのお陰と言っても過言ではないが、これもまた運命だろう。