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6話 『謎の能力?』

 森の中を仲良くメイと歩いていた俺だが、今気付いた事があった。


 それはもうとにかく重要であり、森に入るなら迷わずするべき事だった。


「あーうん。やべえなこれ。道に迷った気がする」


「わたしもそう思うよ。帰り道どうしよっか……」


 未だに食べ物もなく、お腹は空いているというのに、さらにまた問題が発生してしまった。


「まぁでもまだ外は明るいし大丈夫だろ」


 俺がこんなにも楽観的なのには理由がある。

 まず、この森は現状太陽の光によって明るい。夜は分からないが現状ならば森を抜ける道が分かる筈だ。


 ただ、問題なのはこの辺りは明るくモンスターではなく動物も多いからなのか、ほとんど木の実や食べれそうなものはなかった。


 動物を狩って食べるという手段もあるが、今の俺とメイの装備じゃ仕留めるのも難しいだろう。


「やっぱり森の奥じゃないとダメかなぁ……」


「そうかもな。川とかはあるかもしれんけど食べ物があるかは限らないしな」


「でも、森の奥行くなら印とか付けないと!森から抜け出せなくなったら死んじゃうからね!」


 結局俺たちは森の奥へと進むことにした。

 メイの持っているナイフで木に傷をつけ、進んで行く。


 森はどんどん暗くなっていき、先程まで明るかった光は生い茂り密集している森に阻まれ森へと届かない。

 夜になったらもっと悲惨なことになるだろう。なんとかその前に食べ物を見つけないと。


「あっ! あそこに木の実あるよ! 」


 メイの指差した方向には真紅に光る林檎のような木の実をぶら下げている木があった。


「待て。あれは食べれる木の実なのか?」


 周りを見渡せばこの真紅の木の実が実っている木が沢山ある。

 ここまで残されているのは動物もモンスターもこの木の実を食べないということだ。


 それに、ここまで綺麗な赤色は毒という可能性もある。


「わたしも食べた事ないからなぁ……あ、でもあの木の実に似た色違い? みたいのは食べた事あるよ! それは美味しかった!」


「ってことは、それが本物でこっちのは偽物って事じゃねえのか? さすがに色が二つある木の実で両方とも美味しいなんて無いだろ」


「どうなんだろうね。『鑑定』とか使えないし食べてみないと分かんないや」


 メイは一つだけ木の実を手に取り、じっくりと眺めている。

 食べない方がいいという選択肢もあるが、今の俺とメイの胃袋は空だ。


 ここまで美味しそうな木の実を食べたくなってしまうのも無理はない。


「メイ。ちょっとその木の実渡してくれねえか?」


「えっ? あ、うん! 分かった!」


 メイから木の実を受け取り、俺もマジマジと見定める。

 近くで見れば見るほど現実世界の林檎に似ている。


 そして、近くに寄せて初めてわかったが、匂いが凄い。俺自身の口から涎が垂れそうなほど美味しそうな匂いを発している。


 単に俺のお腹が空いているからという可能性もあるが、もしかしたらこの匂いで誘き寄せて実を食べさせ毒に侵すというものかもしれない。


「ねぇわたしお腹がもう空いちゃって、食べていい? 目の前に食べれそうなものがあるのに耐えるなんて拷問すぎるよ……」


「あと少し待って……って、マジか……」


 俺がもう少し待ってもらおうと思ったら既にメイは食べ始めていた。

 めちゃくちゃ笑顔で食べてるからその姿は可愛いが、本当に危険はないのだろうか。


 そう思いながら俺は実を凝視する。


 そうすると、何故か分からないが俺の頭にこの実の情報が流れてきた。


『リンゴン』


 滅多に見ることは出来ず、一つ見つければ辺りには真っ赤に染まった最高級の実が実っている木が沢山生えている。


 生で食べるのが最もな食べ方であり、この実は調理すれば毒となってしまう。


 「はぁ? なんだこれ 」


 突然流れてくる情報に俺は驚きを覚える。

 もちろん、俺が一度だけ流れた情報を覚えれるわけもなく、ただ生で食べるのが正解ということしか分からなかった。


 まぁ毒がないと分かればそれで良い。


 「どしたのー? 美味しいよ? 食べないの?」


 メイが俺を見て首を傾げている。

 確かに、これが食べれるというのは謎の情報によって分かったが、それも信用していいのか分からない。


 そんなことを考えているが、俺のお腹は待ってくれなかった。


 俺は自分の手に持つ通称『リンゴン』を齧り、味を確認した。


 「なんだこれ!美味! やばくね?」


 「うん!毒なんてなかったね!!」


 俺とメイは夢中になってリンゴンを食べた。

 二人で10個くらい食べた頃にお互いの胃は満腹になり、残っている実は持ち帰ることにした。


 持てる限度はあるがここまで美味しい実は持っておくべきだろう。


 「あ、そういや、さっき驚いた理由ってのがな、なんかこの実を見つめてたら頭にこの実の情報が流れてきたんだよ」


 「あー。だからこの実の名前が分かったのね。もしかして初めから守人が知ってんのかと思ったの! でも、何だろうねそれ。鑑定では無さそうだし……」


 「やっぱり鑑定ではないのか。んー、ま、でもこれを使えば食べれる物とか分かるし便利だな!」


 もしかしたらこの能力も護る能力の一つかもしれない。

 仲間を毒から護るために活用するとか?


 「それもそうだね! さて、お腹もいっぱいになったし暗くなる前に森を出よっか!」


 「おう! そうしようぜ!」


 俺たちはその場から離れ歩き始めた。


 もしも、俺達が帰るために残した木の傷が無くなっていたら俺たちはこの森に迷う事となる。


 夕方の今なら傷が見えるが、夜になれば見えなくなるだろう。それだけは避けなければならない。


 そう考えていると、俺の足は自然と早足となっていた。

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