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3話 『初めての遭遇』

 メイと仲良く喋りながら歩いていたが、丘を超えた辺りで騒ぎが起きているのが見えた。


 どうやら綺麗に舗装されている道で誰かが襲われたらしい。


 その場に見えるのは殺されたであろう馬と、一人勇敢に戦う護衛。


 あとは、馬車の中に人が居るだけだと思う。


「なぁ、あそこの人を助けるか?」


 俺はメイに助けるべきかを聞く。

 本来なら助けるべきかなんて速攻決まるべきだとは思うが、今の俺には何も出来ない。


 この世界についてもあまり知らないのだ。


 それなら今一緒に居るメイに聞いてから助けに入った方がいいだろう。


 メイが助けれないと言うならば、仕方ないと割り切り諦めるしかない。

 力がない者が無理に助けようとして死んでしまったら元も子もないのだ。


「そうね。私もあんまり強くないけど……やっぱり助けたいわ」


「よし。分かった。俺も頑張って戦うわ」


 俺とメイは走って襲撃されている馬車へと向かった。


 俺達が辿り着くと同時に守っていた一人の護衛が倒れてしまった。

 見たところ、モンスター?に殴られたようだ。


「なぁ、馬車を襲撃してるのって、ゴブリンじゃねえよな?」


 見た目や武器、肌の色から考えて俺の知っている小説などに出てくるゴブリンそっくりだった。


 ゴブリンは漫画や小説でもよく人を襲う。

 だから、この異世界にもそういう生物がいるかもしれない。


「多分ゴブリン。でも、三体だから大丈夫。一体は任せてもいい?」


 走りながらだから、結構喋るのは辛い。

 だから俺は言葉を発さずにとりあえず頷いた。


 現実の世界において、ゴブリンは基本的に弱かった。

 だから、弱い俺でも一体くらいならと思ったのだ。


 そんなことを考えているうちに俺たちは馬車へと辿り着いた。

 急な増援に驚いているのか、ゴブリン達は俺たちを凝視している。


 さらには、倒れている護衛の男すら俺たちを見ていた。

 いや、俺じゃなくメイを見ている。それも、とても嫌な目で。


「わたしが先制で攻撃するから!」


 そう言うと、メイはポケットから数個の何かが書いてある石を取り出した。


 そして、目を閉じてそれを握り、ゴブリンへと投げつけた。


「『フレイム!』」


 ゴブリンに石が当たり、メイの言葉と共に石は膨張して爆発した。


 あれが魔法なのだろうか。


 だが、俺にそんなことを考えている余裕はなかった。

 味方が倒され、俺たちを完全に敵と認識したゴブリン二体は分かれて俺たちを襲い始めた。


「じゃあそっちは頼むね!」


「ちょ、ま、武器がねえって!」


 俺の手に武器はもちろんない。

 なのに、ゴブリンは棍棒を持っていた。それも、メイの方に向かったゴブリンは何も持ってないのに、俺の方に来たやつは棍棒を持っているのだ。


 さすがに武器がなきゃ倒せない。


「大丈夫!なんかなるから!」


 喋り終わったメイはゴブリンと対峙し、戦闘を開始した。


 もちろん俺は困惑して動けずにいる。

 幸いにもゴブリンは俺が動かないことを不審に思ってるのか、未だ動いていない。

 

「この辺りになんかねえのか……」


 周りを見渡すが武器らしきものは見つからない。

 せいぜい壊れた馬車の車輪くらいだ。


 もはや俺に迷ってる暇はなかった。

 ゴブリンは痺れを切らして俺を攻撃しようとしている。


 だから、俺は落ちている車輪を手に取り、思いっきりゴブリンへと投げつけた。


 鈍い音が響きわたる。


 その音と共に恐怖で目を閉じていた俺は目を開いた。


「やべぇ……奇跡じゃん……」


 俺の目の前には、なんとゴブリンが倒れていた。

 死んではいないようだが、気絶しているようだ。俺の投げた車輪が思った以上に悪いところに当たったのだろう。


 俺からすれば奇跡だが、ゴブリンからすれば殺せた相手に負けたのだからショックなはずだ。


「メイー!大丈夫かー?」


 俺の戦闘が早すぎたのか、まだメイは戦っていた。

 さっきの石がなくなったのか、メイは小さな短剣で応戦している。


 メイとゴブリンの身長はそんなに変わらない。だが、体格がまるっきり違った。

 だから、メイがゴブリンに押されるのは時間の問題だった。


「ちょっと!早く助けなさい!!」


 どうやら大丈夫じゃなかったようだ。

 俺は落ちている車輪を手に取り、メイへと走った。


 だが、俺の行動は遅かった。

 俺が走って辿り着くよりも早くゴブリンの拳がメイへと振り下ろされそうなのだ。


 「ちっ……当たれやぁぁぁぁぁ!!!」


 自分の行動の遅さに舌打ちし、俺は車輪を投げる。

 メイに当たる可能性もあり、俺がまず外す可能性もあった。


 だが、今出来ることはこれしかなかった。


 俺はゴブリンに上手く直撃することを祈りながら、重い車輪を思いっきり投げた反動で前に倒れたのだった。

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