15話 『使えない力』
黒の精霊との契約を交わした後、止まっていた時は動き出した。
周りの木々は優しい風に吹かれ揺れている。
色もあり、先程聞き取れなかったメイの声が遅れて聞こえてきた。
「心の対話だよ!」
「お、おう! ありがとなメイ!」
「ううん!精霊さんにも教えてやれって言われたから!」
丁度聞き取れなかった最後の辺りの言葉が聞こえ、俺はメイに聞く手間が省けたと安堵した。
だが、まだ止めなければいけない事がある。
それはレイナが未だ始めようとしている精霊との契約だ。
「レイナ! ちょっと待ってくれ。俺に契約はいらない」
「はっ? 本気で言ってるの? 今ちょうど貴方とも契約してくれそうな精霊を見つけたのに?」
「あぁ。ついさっき契約しちまったからな。他の精霊とは契約出来ねえよ」
俺はメイとレイナに黒の精霊のことを話すため近づいて行った。
「私の力を借りないで契約なんて出来るわけないじゃない」
「守人大丈夫? 頭おかしくなったの?」
まぁ確かに、さっきまでは契約しようとしていた奴が突然やめたらこういう反応になるだろう。それも、意味不明な言葉を言いながらだと尚更だ。
ここはやはり早く弁解しないといけないようだ。
「まぁ俺の話を聞けよ。というより、レイナは多分聞いた方がいいと思うぜ?」
「ん? なにかしら?」
「俺が契約した精霊についてだよ」
俺はメイとレイナに黒の精霊について話した。
最初の時が止まる段階から、契約が終わるまで詳しく話した。
というのも、俺が話し始めてから、レイナが食い入るように質問してくるのだ。答えるしか道はなかった。
「ふぅん。ま、大体分かったわ。確かに、最近精霊たちの間で噂になっていたのよね。私は信じてなかったけど、あなたの話は嘘じゃないみたいだし、本物のようね」
「レイナさん!その黒の精霊ってどれくらいやばいんですか?」
メイが目を輝かせながらレイナへと聞いている。
確かに、俺もどのくらい凄いのかは聞いてみたいものだ。
「教えてあげたい気持ちはあるんだけど、私もほとんど知らないのよ。やっぱり私みたいな女王が居なくても、個々で契約出来るという点や、とてつもない力を持っているとか。その程度しか知らないわ。なにせ、そういう特別な精霊が誰かと契約したなんて、何百年前とかよ? ずっと居ないと思っていたわ」
「じゃあ守人は相当凄いってこと!?」
「どうして選んだのかは分からないけど、まぁ精霊が気に入ったのだからなにかは凄いと思うわ」
「うーん。俺にはよく分からんけどな。それで、その精霊の力ってのはどう使うんだ?」
黒の精霊が凄いってのは契約時点で大体分かっていた。
レイナからもっと詳しく聞けると思ったが、どうやら知らないようだし、今はこいつの力を知ってみたい。
力を知れば実際に凄さも体験出来るだろう。
「そうね。そろそろ精霊の力の使い方を教えるわ。と言っても簡単なのよ。手を前に出して、精霊に心を傾ければその時使える力を教えてくれるわ。それを頼りに使ってみるといいわよ」
レイナに教えてもらい、俺とメイは実際にやってみることにした。
だが、俺が何度目を閉じ、精霊に聞いてもなにも答えは返ってこない。
その点、メイは違った。
すぐに精霊の力を使いこなし、手から一本の雷を飛ばしていた。
「なんで俺は力が使えねんだ……?」
「うーん。多分だけど、精霊が今は使うべきじゃないって思ってるんだと思うわ」
俺は首を傾げながら今は力を使えない事に納得した。
「わたしお腹空いたー!」
力を使い、契約までして疲れたのか、メイがその場に倒れお腹空いたと連呼している。
「守人。今はご飯を食べることにしましょ。その為にリンゴンの生えてる所まで来たんだから」
「それもそうだな」
俺たちはリンゴンを手に取り、何個か食べる事にした。
数個食べたあと、突然眠くなった俺は、その場に寝転んで寝る事にした。
幸い、メイとレイナは起きている。
モンスターに襲われることはないだろうと安心し、俺は眠りについた。