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13話 『少女の心』

今回は視点が違うよん!

 ────今わたしは夢を見ている。


 厳密にはよく分からない。けど、私の前には幼少期のわたしと両親がいる。


 さっきまでは守人とレイナさんと一緒に居て、契約をする筈だったのに、どうしてか夢を見ていた。


 精霊が私の周りを回って、綺麗だなぁって思ったのは覚えてる。


 でも、精霊が私の体の中に入った時、わたしは突然夢を見始めた。

 そう。突然だ。


「わたし……こんな顔してたんだ……」


 幼いわたしを見ながらわたしは呟く。

 呟きに誰かが反応するんじゃないかと思ったが、それは杞憂に終わった。


 わたしのことがまず見えてる人も居ないし、わたしを気にかけている人もいない。

 いわゆるわたしは透明人間だ。


 夢の中だからかもしれない。


 というよりも、普通は夢の中で意識はハッキリしない筈だ。

 それなのにわたしの意識はハッキリしていて、考えることすら出来るし、自ら望んで声を発することも出来る。

 という事は、この見せられている映像は精霊との契約に必要という事だろう。


『パパーママー!』


『メイ。どうしたんだい?』


『あらあら、そんなにはしゃいだら転んじゃうわよ』


 幼いわたしは昔は居た両親に走って行く。

 これはすべてわたしの記憶にも残っている出来事だ。

 このあと、記憶通りなら転ぶはず。


 そう思っていたら本当に幼いわたしは転んだ。


 焦って駆け寄る両親。それを見て密かに微笑んでいた今のわたし。

 でも、そんな時、知らない声が隣から聞こえた。


『お前は両親が好きか?』


 姿も形もない。ただ、声だけがそこから聞こえる。

 わたしは顔をそちらへと向けることもなく、両親と幼いわたしを見ながら返事をした。


「うん。大好きだよ。生まれも分からないわたしを拾って育ててくれたから」


『あんなにも裏切られたのにか?』


 声と共にわたしが見てた画面は変わる。

 さっきまでの微笑ましい光景ではなく、エルフの住人全員から迫害されるわたしと両親。


「あぁ……あぁ……」


 この時わたしは両親が最後まで味方でいると信じていた。

 でも、きっとその時から気付いていた筈だ。

 両親がわたしを裏切るって。


 そう思った時、ついに両親の顔は少し変わった。困ったような、複雑な表情だ。


『ごめんな。メイ。本当にお前を娘だと思って愛してたんだ。でも、ごめんな』


 母は泣き、父は幼いわたしの頭を最後に撫でている。

 この時のわたしは今から捨てられるとわかっていた。一度捨てられているからなんとなく分かっていたのだ。


 そして、案の定わたしは捨てられた。


 それから守人と出会うまで他人とは関わらず、隠れてひっそりと暮らしていた。

 今思えば、口調が変わったのも一人で緊張せずに話すためだ。


 昔のことを思い出したら少しだけ笑えてくる。


『お前は……強いな。捨てられても尚エルフを、両親を恨まないのか』


「うん。だってさ、わたしを拾って育ててくれたんだよ? 全くの赤の他人なのに! そんな人を恨むなんてわたしには出来ないよ。幾らもう一度捨てられてもね、あの時拾って貰わなかったらわたしはきっと死んでたか、今のわたしは居ないはずだから」


『そうか。私はお前を選ぶよ。幾らお前の心を覗くためとはいえ、辛い記憶を見せて済まない』


「大丈夫! むしろ思い出せて良かったよ。逆にありがとね! それと、これからもよろしくね!」


『あぁ、こちらからもよろしくと言わせてもらうよ。あぁ、それとこの契約の本質について話しておくよ。後で想い人に教えるといい』


「な、何言ってんの!? そんな人居ないけど! ま、まぁでも教えてくれるなら、後で守人に教えてあげるけどね!」


『全く。たった少しの間でよく好きになれたものだ。精霊の私にはよく分からんな』


「もう!良いから早く教えてよ!」


 わたしの言葉に今まで形もなかった精霊が姿を現した。

 と言っても、あやふやな形の黄色に光る女性だ。


 その女性が現れると同時に、映像は止まり、辺りには静寂が流れた。


『この契約の本質はな、対話だ。無論、口を使う対話ではない。一番嫌な記憶と、一番良い記憶を蘇らせ、隠れている心と私のような精霊が対話するのだ』


「そうなの? 教えてくれてありがと! 」


『全く。普通は覗かれて無理やり対話させられて嫌がるところだろうが……』


「いや別にわたしは大丈夫だよ?」


『ははっ……契約者がお前で良かったよ。それじゃ、元の世界に戻るとしよう。私の使い方は後でレイナにでも聞いてくれ』


「うん!分かった!」


 精霊の言葉の後、わたしは意識を失った。

 まるで突然眠ったような感じだが、今はとにかく契約出来たことがなによりも嬉しかった。

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