遊び人はあそぶ
「神聖ですか? 私にはよくわからないですね。『ステータス』はナオ様だけの神託ですので内容までは…あ、え?」
直秀が神聖について知りたいと思い、ピンクに聞くと彼女は話の途中で空を見上げ始めた。
「あ、はい…わかりました」
「どうかされたんですか?」
「女神様からです。そのままのお言葉をお伝えすると『神聖があっても神様と同じ訳ではないです。人として普通に死にますし、なんでもできませんのでご注意ください』らしいです」
「そうですか。それを聞いて安心しました」
「え? 嫌なんですか? 神様になるの?」
「はい。そんな柄じゃありませんからね、遊び人が私らしいです」
カラカラ笑って直秀はそう言っていた。
ピンクはやっぱり納得いかない顔をしていた。
「かっこいいお兄ちゃん」
不意に声がした。
そこには小学生ぐらいの男の子が直秀を見ていた。その後ろには四人の子供達もじろじろと直秀を観察している。
直秀はキョロキョロと辺りを見回す。
「もしかして、私ですか?」
直秀は自分しかいないことに気がついて、初めて「かっこいいお兄ちゃん」のことが自分であるとわかった。生まれてこの方、キモいやデブは何度も聞いたことがあるが、かっこいいという形容詞には縁がない。
「うん、そう。何してるの?」
「喋ってました」
「そうなんだ。ねぇ、遊び人なんでしょ?」
「はい。遊び人です」
「なら、遊ぼうよ。大人はみんな忙しくて遊んでくれないんだ」
こちらを伺うように少年はいった。
どうやら子供達のなかでもリーダー格なのか身長もほかの子供よりも高く、言葉使いもしっかりしている。
それにニコリと笑って、直秀は頷く。
「いいですよ。何しましょうか?」
「追いかけっことか?」
「追いかけっこですか…」
直秀は考えを巡らせる。
自分は短足で足が遅い。こんな少年達の体力についていけるとは思っていなかった。
彼は自分の体にまだ慣れていないのだ。今ならそこらへんの村人では追いつけないほどの速度で走ることが出来る。それを彼はまだ知らない。
「追いかけっこは苦手なので…手遊びをしましょう」
「てあそび?」
首を傾げてくる少年に直秀は楽しそうに聞いた。
「はい。お家に紐とかありますか?」
「うわぁすげぇ! すげぇ!」
「かわいい!」
子供達の歓声が広場の外れで上がった。
直秀は子供達に囲まれながら技を披露していた。
縦横無尽に表現されていく紐のアート。
あやとりだ。
山、太陽、川、花、蝶々などあらゆるものが色の付いた紐で作り出され、たちまち変幻していく。
それに子供達は囃し立て、教えてくれとせがんでいた。
『遊び人スキルの習熟度が上がりました。
【てあそびLv.4】→【てあそびLv.5】
【かおあそびLv.1】を覚えました。
【くちぶえLv.1】を覚えました。
【ステータス】が更新されました』
【てあそびLv.5】…手を使った遊び。レベル毎に器用さが上がる。Lv.5訓練された者以外には目で追えない。
【かおあそびLv.1】…顔で遊ぶ。低レベル時には魅力が大幅下がる。Lv.1変顔が上手くなる。
【くちぶえLv.1】…口笛で遊ぶ。生命体を呼び寄せる。LV.1半径10mぐらい
怒濤のごとく更新されていくステータスを頭の中に感じつつ、直秀は子供達と夢中で遊ぶ。
「よし、次は…」
あやとりを止めて、子供達に背を向けた直秀がごそごそと何かをし始めた。
「え? なになにー?」
目をキラキラさせて子供達は直秀を待った。
クルリと振り向き、
「ボンレスハム!」
「ギャーハハハハ!」
「アハハハハハ!」
どっと子供達が腹を抱えて大笑いした。
紐で顔をグルグル巻きにした直秀が白目を剥いている。
「プッーフフフフ! ナオ様……プフっ…ハッ! つい私も笑ってしまいました! おそるべし遊び人!」
釣られて笑っていたピンクが愕然とショックを受けていた。
「ナオお兄ちゃん、ピンクちゃん、バイバーイ! また明日も遊んでね!」
「また明日な!」
夕暮れ、子供達が笑顔で大きく手を振って帰って行く。
直秀も満足そうに笑って手を振り返して、ポツリと
「ピンクさん。しばらくここにいましょうか」
「えっと…そんな気がしてましたけど…いつまで…?」
「そうですねぇ。遊び終わるまでですかね」
「………」
ピンクは墜落しそうになるほど落胆した。
【ステータス】
志島直秀
人族
遊び人
HP 122/122
MP 25/25
体力 72
筋力 76
器用さ 53+15
素早さ 85
賢さ 31
魔覚 5
精神力 235
幸運 216
魅力 128-13
神聖 1
攻撃力 42
防御力 57+2
走力 70+10
魔法 9
【スキル】
ねるLv.MAX
てあそびLv.5
かおあそびLv.4
くちぶえLv.3
NEWうたLv.1
【うたLv.1】…歌う。レベル毎に魅力が上がる。Lv.1すこし楽しい気持ちにさせる。




