表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/9

はじめてのスキル

「ナオ様、『すてーたす』という女神様からの新しい神託なんですけど」

 直秀が宿の部屋で腰を下ろしたときにピンクのチュートリアルがようやく始まった。彼女はすっかりステータスのことを忘れていたようだ。

 直秀は言われた通りに『ステータス』と口に出し、頭に広がった内容を確認する。



 志島直秀

 人族

 遊び人

 HP 122/122

 MP 25/25

 体力  72 

 筋力  76

 器用さ 53

 素早さ 85

 賢さ  31

 魔覚  5

 精神力 135

 幸運  216

 魅力  98


 攻撃力 42

 防御力 57+1

 走力  70+10

 魔法  9 


 【スキル】

 ねるLv.1

 【固有スキル】

 初見誘惑、言語マスター、高速習熟、ステータス表示、ストレージ、女神の加護


 【装備】

 よれよれTシャツ 防御力+0

 だぶだぶジーンズ 防御力+1

 穴あきスニーカー 走力+10


「ねる?」

 直秀が首を傾げて呟くと頭の中に詳細が表示された。


【ねるLv.1】…寝る。HPとMPの回復速度上昇。寝具に関係なく心地よく寝られる。


「【ねる】は、遊び人の初期スキルですね。基本暇ですから」

「なるほど」

 そう呟いて直秀は、宿の部屋に備え付けられた粗末な寝台を見た。

 それを表すに相応しい言葉は、木の台だ。人を乗せる台があって、申し訳程度に毛布が敷かれている。寝心地は最悪だろう。

「じゃあ、スキルを使ってみますね」

「え?」

 驚きの声をあげるピンクを残して、直秀はそのまま寝台へ転がり、

「じゃ、おやすみなさい、ピンクさん」

 寝た。



 チュンチュン。

 朝の爽やかな鳥の声が聞こえる。

「ふぁ~よく寝た」

 直秀は大きな口をあけて寝台から上半身を起こした。

 あらゆるものが体から抜け出て、これほどまでに気持ちのいい寝起きを感じたことがなかった。体が軽く、心は空をも飛べそうだ。


『遊び人スキルの習熟度が上がりました。

【てあそびLv.1】を覚えました。

【ねるLv.MAX】→絶技【有余涅槃】を習得しました。

【ステータス】が更新されました』


「おお、なんかすごそうですね」

 ぼそりといった直秀の言葉に隣で寝ていたピンクがびくりと体を震わせる。

「…ふ、ふみゅっ!? にゃお様!?」

「あ、ピンクさん。おはようございます」

 呑気に笑って挨拶をした直秀の顔を見て、ピンクは泣きそうになりながらも顔を赤らめて怒る。

「お、おはようございますじゃありませんよ! 十日も眠りっぱなしだったんですよ!」

「ああ、通りでお腹が空いてるんですね」

「か、かるっ!! 普通死んじゃいますよ! 心配してたんですから!」

「ありがとうございます。では、食事にしましょう」

 直秀は軽すぎて唖然としているピンクを連れて、食堂へと下りていった。


「このロクデナシ。ずっと寝っぱなしだったんだってね。これだから遊び人は」

 辛辣な女将さんの言葉をあはは、と軽く流して直秀は野ウサギのシチューと固い黒パンを食べた。

 甘みは足りないが、具だくさんの野菜と柔らかい肉が空きっ腹を満たしてくれる。直秀は、適当に頼んだエールを片手にモリモリと食べる。出されたものは美味しく全て頂くのが直秀の信条だった。

 そんな直秀の行動に呆れつつもピンクは、服装をどうにかしようと提案した。

 食事が終わって二人はさっそく村の雑貨屋で服を買うことにした。

 町のメインストリートは、非常に短く、二人が泊まる宿屋の周辺に雑貨屋、鍛冶屋、商人の店などが数軒立ち並ぶほどしかない。

 直秀は適当に目に付いた丈夫そうなチェニックやズボン、ピンクに絶対必要だと言われたナイフや小さな鍋、火付け石などの旅道具、念のために革のサンダルを買い込むと金の粒で会計を済ませようとした。

「釣りはないよ」

 眼光の鋭い老婆にそう言われて、直秀は金の粒の価値分の雑貨を買い込むことになった。保存のききそうな塩漬け肉、焼き固めたカチコチのパン、毛布やマントを一揃い買い込み雑貨屋を出る。

 両手一杯になった品をせっせと運び、村の広場から少し外れた木陰で『ストレージ』に全部しまう。雑貨屋で『ストレージ』を使おうとした直秀をピンクが注意したためだ。

「ダメですよ。その魔法はおいそれと人前では使っては行けないと女神様よりのお達しです」

 そんなことを言われたら直秀は素直に従う。

 買い物を済ませてもまだ昼にはならない。買い物が終わってからしきりにピンクが言う魔王討伐へ行こうという誘いをやんわり断り続けながら、直秀は木陰でぼーっとしていた。

(なかなか新鮮で面白いですねぇ。この世界は)

 村の広場に目を向けると、村人達が雑談をしたり子供達が遊んでいる。服は粗末だが、純粋に生きることを楽しんでいる人達を見ていると、直秀の心も温かくなってきた。

 十日も寝ていたのにまた眠気がじんわりと体を包んだ。

 直秀はその場で横になって肘で頭を支えつつ、ぼんやりと村の様子を見ていた。

 ふと、朝の事を思い出した。

「『ステータス』」


 志島直秀

 人族

 遊び人

 HP 122/122

 MP 25/25

 体力  72 

 筋力  76

 器用さ 53

 素早さ 85

 賢さ  31

 魔覚  5

 精神力 135+100

 幸運  216

 魅力  98+30

 New神聖  1


 攻撃力 42

 防御力 57+2

 走力  70+10

 魔法  9 


 【スキル】

 ねるLv.MAX

 NEWてあそびLv.1

 【固有スキル】

 初見誘惑、言語マスター、高速習熟、ステータス表示、ストレージ、女神の加護

 NEW【絶技】

 有余涅槃


 【装備】

 丈夫なチェニック 防御力+1

 固いズボン 防御力+1

 穴あきスニーカー 走力+10


(神聖? それと絶技ってなんでしょうか?)

 そんな疑問が浮かび、その項目に集中すると、


【神聖】…神が帯びる威光。

【絶技】…スキルを極めた者に与えられる奥義。

【有余涅槃】…あらゆる悩みから解脱する。HPとMPの回復速度大幅向上。痛み極耐性、恐怖極耐性、鬱極耐性。低位アンデッドの浄化。


(あれ? 私は寝ている間に解脱して、神様になっちゃったんでしょうか?)

 遊び人からいつの間にか神へとなった自分に直秀は少し驚いていた。

ステータスは仮です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ