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平民王子の覇道  作者: 宮本護風
第1章
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第5話 帰還

「レオポルドさまが帰ってこられたぞ!」

「お帰りなさい! レオポルドさま!」

レオポルド一行はメガロシュの民から熱い歓迎を受ける。これがレオポルドの徳のなせる技だ。レオポルドは民衆に手を振る。この民の笑顔を見るために俺は頑張っているんだ。これを見れるのならこんなに幸せなことはない。そう思っているといつの間にかレオポルド邸に到着した。


馬車を降りると、メガロシュ防衛軍将軍、ダリオ=サヴォイアらをはじめ、防衛軍が出迎えてくれた。

「おかえりなさいませ、レオポルド様」

「ただいま、俺がいない間、何もなかったか?」

「はい、異常なしです」

レオポルドがダリオと言葉を交わしていると、邸宅から一人の女がレオポルドの元に来る。

「帰ってきたの、おかえりレオ」

彼女はエミリア=サヴォイア。防衛軍将軍の娘だ。彼女とはレオポルドがこの地に派遣されてから知り合った。

「ああ、ただいま」

「別に帰ってこなくても良かったのに」

相変わらず可愛げのないやつだ。そう思いながらレオポルドは邸宅に入ろうとすると、フェリスがレオポルドの手を握っている。

「ちょっとレオ、フェリス! あんたたち何手握っちゃってるの!?」

「え〜、別にいいでしょ。だったエミリアはレオが帰ってこなくても良かったんでしょ?」

ツンツンしていながらもレオポルドが大好きなエミリアの指摘にフェリスが鋭く返す。

「でも片手が空いているのは不格好だわ。私があんたの手を持ってあげるわ! 感謝しなさいよね!」

「意味わかんねえよ……」

またこの二人に囲まれる日々が今日から始まると思い、レオポルドは深いため息をついた。


フェリスとエミリアをなんとか振り切り、自分の部屋に入ったレオポルドはようやく一息つくことができた。

「ふぅ……」

ため息をつきながら、また考えを巡らせる。考えることは毎回同じだ。

「やるしかないか」

定例報告会以降初めて、レオポルドなりに割り切って、ゴリモティタ侵略に向かい、何をすべきかを考える。

まずはゴリモティタの内情の偵察。これは戦争においてまずすべきことだろう。次に戦力の確保だ。レオポルドのメガロシュでは、侵略活動を行わないまま今まで来たので、領民たちがある程度の戦闘能力を備えて緊急時にはそれに対応すると言うシステムを取ってきた。そのため、常備軍は存在しない。あるのは必要最小限の防衛軍だけだ。急に戦争を行うために徴兵すると言うと領民たちの不満は高まるだろう。これは悩みの種だ。次は兵糧の調達だ。これに関しては、作物生産を中心に行ってきたメガロシュでは、食物の余剰が起こっているため、心配ないだろう。



ある程度計画を立てたところでレオポルドの頭の中に一つ問題が生じた。誰がスパイとしてゴリモティタの内情調査に向かうかだ。これにはかなりの危険が伴うだろう。スパイには、臨機応変な対応力と、確かな戦闘能力、そして最も重要な、情報収集能力が求められる。この三つを加味しても、適任なのはレオポルドしかいなかった。スパイとして内情調査のためゴリモティタに赴くのは、王族としては異例だが、レオポルドで決定だろう。

しかし、これに伴い、また問題が生じる。ギルバートや爺をどう説得するかだ。これが目下最大の試練になるのは明らかだった。



それから数日が経ったが、レオポルドはまだ誰にも言い出せていなかった。説得できる理由が見当たらない。相談する相手もいない。フェリスやエミリアに相談したところで猛反対されるのがオチだろう。

「もうこれは一つしか方法がない!」

その方法は事後報告だ。もうそれしかわからなかった。レオポルドは早速準備に取り掛かる。

それがどんな結末を招くのかも知らずに。事後報告を決意した瞬間、突然雨が降ってきた。


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