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平民王子の覇道  作者: 宮本護風
第2章
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第20話 メガロシュ防衛戦

このメガロシュには広大な平原が広がっているが、数多くの大石があり、岩かげが多くできる。さらに、大石のせいで、軍を細くして進軍することしかできない。シルヴァはそれを狙って岩陰にに400ずつ兵を伏せるというのだ。これには一体何の意味があるのだろうか?

ダリオとエステバンは目の前をスコターディア軍団の最後尾が通った時に攻撃を仕掛けられるよう、伏兵の指揮を執り、レオポルドとシルヴァは本陣を高台に構え1000の兵と共に控えておく。

スコターディア軍がものすごい勢いで進軍してくるのが見える。

「やはり相手はこちらの力を甘く見て、兵力で押してくる魂胆か。お前の言うとおりだったな、シルヴァ」

「そのようですね」

「作戦の成功は決まったな」

レオポルドは勝利を確信する。それほどシルヴァの策は素晴らしいものなのだろう。

伏兵の前をスコターディア軍が通りすぎ始める。

「そろそろですな」

「ああ、あいつらにかかっているからな」

高台から戦況を見下ろすレオポルドとシルヴァ。



一方伏兵側では一回目の伏兵が攻撃準備に入っていた。

「いいかお前達! この作戦の要は俺たち伏兵だ! わかってるな!?」

「おおおおおおおおお!」

伏兵の前を軍の最後尾が通り過ぎようとする。

「今だ! かかれ!」

隊長の号令で一つ目の伏兵が攻撃を仕掛ける。

「なんだ!?」

「伏兵だぁっ!」

スコターディア軍に少しの混乱が生じるが大軍には痛くもかゆくもない。

「伏兵です!」

「数はいくらだ!?」

「約500です!」

「その程度か! 構わん! 1000だけ対応に当たらせろ! 他は構わず進軍だ!」

将軍らしき男が数に騙されて、そう命令を下した。少しの兵力のみ割いて、そのまま進軍を続けた。これが予想だにしない結末を招くとも知らずに……。



「さらに伏兵! 500です!」

従者が焦ってそういう。

「なんだと!? これで何回目だ?」

将軍は面倒くさそうだ。彼はこんな面倒な侵攻は早く終わらせたかった。

「これで6回目です! いかがなさいます?」

「また兵を割け。我々本隊が行くまでもなかろう」

伏兵が現れるごとに、スコターディア軍は同じ対応を取る。そうすることでスコターディア軍将軍はどうなるかをまだ気づいていなかった。

高台から見おろすレオポルドとシルヴァは会話をしている。

「相手の兵は数に任せて何があっても少数の兵だけを割いて進軍を続ける。一度だけなら痛くもかゆくもないだろうな。だが10回もそれを繰り返すとどうなるか? それだけ進軍を続ける将軍の周りの兵力が少なくなるということだよ。そして今そうなりつつある」

最後の伏兵であるダリオとエステバンが岩陰から飛び出た。将軍の周りには兵士はもう1000といない。こうなれば同じ1000でも進軍をつづけて疲弊している1000と将軍の首を取り、故郷を守る1000とでは質が違う。今、アインフォーラ軍は圧倒的優位に立ったのだ。

「全く、そんなことを思いつくお前はやっぱり大したやつだよ」

「ありがとうございます。普通なのですがね」

「お前にとってはな」

とても戦場とは思えないような会話だ。次の瞬間、シルヴァの目がカッと見開かれる。

「今が好機! レオポルドさま、ご命令を!」

「よし、全軍突撃! 狙うのは将軍に首一つだ!」

レオポルドの軍は一斉にスコターディア軍へと向かっていった。



「今の本隊の兵力は!?」

異様に兵士が少なくなっていることに気づくスコターディア軍将軍は従者に尋ねる。

「おおよそ1000!」

「少なすぎる!」

そう思った時、もう既に遅かった。レオポルドの本隊がこちらに迅速で向かってきていた。

「ひっ!」

将軍は弱々しい声を出す。

「ご命令を!」

従者は命令を乞う。命令は浅ましいものだった。

「わしを守るのじゃ! 死なせるでない! なんとかわしを生かすのじゃあ!」

スコターディア軍はもはや軍としてのまとまりを失っていた。



レオポルドたちはもうスコターディア軍本隊目前に迫っていた。

「愚かだな……」

そう呟くレオポルド。

「将軍の首を取るのだ! それ以外は気にするな!」

「うおおおおお!」

レオポルドの大号令に兵士たちは大声で答える。スコターディア軍はなんとか持ちこたえようとするが、完全に疲弊し切っている。アインフォーラ軍の相手ではなかった。赤子の手をひねるかのようにアインフォーラの猛士たちはスコターディアの兵士を倒していく。そうしているとすぐに将軍らしき男がレオポルドの目に止まった。

「貴様を将軍と見た! このレオポルド=リオス=アインフォーラ、貴様を討つ!」

「いやだあぁぁぁ!」

一人逃げる将軍。レオポルドは呆れる。

「大軍を率いている男が敵に背を向けて逃げるとは、なんたる失態! 貴様のようなものは将軍には値しない!」

そう言って、レオポルドは将軍の背中を斬る。将軍は音もなく倒れた。

「スコターディア軍の将はこのレオポルドが斬った! スコターディア軍にはもはや勝ち目はない! 速やかに降伏するのだ!」

レオポルドの声が聞こえているものは武器を捨て、恭順の意を示す。離れすぎて聞こえていないものたちも、本隊が跡形もなく消えているのを見て、既に戦意を喪失していた。2倍の兵力差がありながら、スコターディア軍を完璧に打ちのめしたレオポルドたち。この完全勝利はひとえにシルヴァの力のものだった。

「我々は、故郷、メガロシュを見事に守ってみせた。勝負は決まった! これは、俺たちの新たな参謀、シルヴァ=トーレスの功績によるものだ! 彼がいなければ、メガロシュは落ちていた! 彼を讃えるために、叫べ、そして喜べ、諸君!」

兵士たちが雄叫びをあげる。しかしシルヴァだけは状況を冷静に見ていた。

「自らの危険も厭わずに敵軍に率先して突撃する姿、まさしく本当の将の姿だ。あの方こそ、かならずこの戦乱を収めるだろうな」

そう思ってシルヴァはようやく勝ち鬨を上げた。


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