第19話 帝国の足音
レオポルドたちは1日かけてメガロシュへと到着した。リンダはレオポルドと同じ馬に乗って、レオポルドにしっかりつかまっていた。この1日の間にレオポルドとエステバンはシルヴァの作戦に驚嘆していた。それほど素晴らしいものだったのだ。
「ついたぞ! メガロシュ領主、レオポルド=リオス=アインフォーラが帰還したぞ! 門を開けよ!」
メガロシュの門が開く。彼らは急いでメガロシュ領主邸へと向かった。
「レオポルド、今参ったぞ!」
邸宅の扉が開くと、見覚えのある顔の二人が走ってきた。
「レオー!」
フェリスとエミリアだ。彼女らは顔を赤くしたレオポルドの元へかけてきた。
「生きてたんだね! よかった!」
「生きてのは私がお祈りしてあげてたおかげよ! 感謝しなさい!」
フェリスとエミリアは口々にレオポルドに生きていたことへの喜びの言葉をかける。レオポルドにはそれに対応する時間がなかった。
「ああ、悪いが今は一大事だ。悪いが行かせてもらう」
「待って」
二人はレオポルドを引き止める。冷たい声だった。
「この女の人は誰?」
レオポルドはギクリとした。レオポルドの後ろには、馬の上でレオポルドにしっかり抱きついているリンダがいたのだ。それを見た二人が黙っているはずがない。
「これはだな……、いろいろあったんだ! 事情は後で話す! 行くぞ、エステバン、シルヴァ!」
「はい!」
レオポルドたちは逃げるように領主邸の会議室へと走った。
会議室にはダリオがいた。レオポルドとエステバンの顔を見たダリオの顔が明るくなる。
「おお、レオポルドさまにエステバンさま! よく来てくださいました!」
ダリオは喜びを言葉にする。しかし見慣れない顔が一人いる。
「レオポルドさま、この男は?」
「俺の参謀、シルヴァだ。シルヴァ、彼はダリオだ。将軍を務めている」
「よろしくお願いします、ダリオさま」
深々と礼をするシルヴァ。それを見たダリオもエステバン同様、黙っているはずがなかった。ダリオは声を荒げる。
「レオポルドさま! 私が知らないものを参謀に取り立てるとはどういうことですか!?」
エステバンの諫言と全く同じだった。
「エステバンにも言ったのだが、ここでシルヴァが参謀にふさわしいかどうか判断してくれ」
そういうレオポルドの言葉に、ダリオはエステバンの方を不満そうに見る。エステバンはダリオにどうにもならないというふうに首を振っている。
「わかりました。ではシルヴァどの、ここはあなたにお任せしましょう」
「お任せください」
シルヴァは再びダリオに頭を下げる。
「よし、では始めようか」
レオポルドは会議を始めた。
「なるほど……、確かに素晴らしい」
ダリオも二人同様、シルヴァの策に感嘆する。
「これでいいか?」
「ええ、不満はありません」
ダリオもシルヴァに納得した。
「それでは、伏兵のグループは4000を10に分けていきたいと思います。ダリオ様とエステバン様にはその一角をお任せしたいと思います。絶対に相手を自分たちのところから離さず、食い止めてください」
「うむ」
「あいわかった」
二人は納得する。
「それではこれで終了です。あとは敵が野営地を発って攻めてくるのを待つだけです」
「わかった、ありがとう」
レオポルドとシルヴァがそう言って、しばらく休もうとしたその時、偵察兵が突然会議室に入ってきて、静寂は破られた。
「スコターディア軍に動きあり! こちらに進軍している模様です!」
「敵はどうやら俺たちを休ませてはくれないようだな」
レオポルドらはそう言って出陣の準備をした。




