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平民王子の覇道  作者: 宮本護風
第2章
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第18話 メガロシュ危機

レオポルドはシルヴァを連れて領主邸へと帰還した。エステバンや、これまでレオポルドに長い間仕えていた重鎮たちは驚いた。

「レオポルドさま! その男は何者ですか!?」

エステバンがあまりの驚きのせいで、シルヴァをその男呼ばわりする。

「エステバン、失礼だろう。この男はシルヴァだ。この男、見かけは男らしさはなく、頼りなさそうだが、その能力は一級品だ」

「レオポルドさまのその評価も失礼と存じ上げますがな」

レオポルドとシルヴァは互いに茶化しあい、大声で笑う。エステバンはこんなにも楽しそうなレオポルドを見たのはギルバートが死んで以来、かなり久しぶりのような気がした。だから、レオポルドが笑顔でいるなら、シルヴァを雇ってもいいと思った。

「そうでしたか、シルヴァどの、先ほどの無礼をお許しください」

「いいえ、私は立派な人間ではないので」

「それは俺の真似か? シルヴァよ」

「ばれましたか」

二人はまた大声で笑う。エステバンや他の家来はレオポルドが笑っているのを見て、嬉しくなった。しかしそれが続いたのはレオポルドが驚愕の事実を告げるまでだった。

「今日から、このシルヴァを俺の参謀とすることにした」

「!?」

レオポルドとシルヴァを除く全員の目が丸くなる。

「レオポルドさま! 正気ですか!? 初めて会うものが参謀になると言われて、私たちが納得するとお思いですか?」

エステバンが声を荒げる。

「まあこれからのシルヴァの働きを見ておれ。シルヴァが参謀にふさわしいかどうかすぐにわかる」

「宜しくお願い致します」

エステバン始め、家来の顔は赤くなる。ぽっと出の男が参謀になるというのだ。納得いかないのも仕方ない。

「シルヴァどのの力、見極めさせていただきます」

エステバンがそう言った次の瞬間、領主邸の扉が勢いよく開いて、状況が一変する。

「レオ!? 大変よ!」

「誰だ貴様!?」

警備兵が制する。

「私はリンダよ! レオに伝えないといけないことがあるの!」

「リンダ!? どうした!?」

レオポルドがリンダの前に姿を現わす。

「レオ! 門のあたりのお店で買い物してたら、ボロボロの兵士さんがやってきて、レオに伝えることがあるっていうの! すぐに来て!」

「わかった! シルヴァ、エステバン、ついてこい!」

「はい!」

4人は城門前へ急ぐ。



城門前に4人がつくと、傷だらけの兵士が倒れていた。

「私がレオポルドだ。一体何があった?」

レオポルドは優しくいたわるように問いかける。

「メガロシュがスコターディア軍に攻められています。その数、およそ10000。いち早く帰還していただきたいと、ダリオ様が……」

「何だと!?」

レオポルドらは危機を覚えた。

「今はどういう状況なんだ?」

「今はスコターディア軍はメガロシュに向けて進軍中です。私はスコターディア軍と鉢合わせてしまい、何とかここにたどり着きました。レオポルドさま、迅速に、メガロシュへ……」

そのまま兵士は動かなくなった。

「この兵士を手厚く葬ってやってくれ」

兵士は住民に連れて行かれる。

「まずいな……、今はメガロシュには1500の兵士かいない。状況は不利だ。どうすればいい」

レオポルドはエステバンとシルヴァに尋ねたが、シルヴァがいち早くこたえる。

「私に策がございます。これが私の力を示す良い機会になるかと」

「そうだな。ならばシルヴァ、その策、直ちに実行に移すぞ!」

「はっ!」

先ほどまで大笑いしていた二人がこうも真面目な顔になるのかと、二人のやり取りを見ていたエステバンは驚く。

「ならば私も!」

「だったら私も!」

エステバンとリンダも呼応する。

「エステバンはともかく、リンダはどうしてくるんだ?」

「だってレオのかっこいいとこ見たいし……」

リンダは恥ずかしそうにそういう。

「レオポルドさま。彼女も連れて行きましょう」

「どうしてだ?」

「民衆にもレオポルドさまと私の能力を示すことができますので」

シルヴァが進言する。

「なるほどな。いいだろう、リンダ、お前も来ていいぞ」

「やった!」

「ただし、命の保証はできない。それでも来るか?」

レオポルドは急に真顔で深刻な話をする。レオポルドは大切な人に死んでほしくないのだ。もうこれ以上は。

「うん、わかった。それでもいいから連れて行って」

「よし、それではシルヴァ。お前の策を聞かせてくれ」

ことが決まり、レオポルドはシルヴァに策を尋ねる。

「そんな時間はありません。現在進行で話をしていきます。まずはここの兵、3500を連れてメガロシュへ向かうのです」

あれから、降伏したスコターディア軍兵士も加えたので、兵力には余裕があった。

「よし、わかった。直ちに出陣だ!」

「お待ちください!」

シルヴァの発言を鵜呑みにしようとするレオポルドをエステバンが諌める。

「10000に対して、こちらはメガロシュの駐在軍と合わせて5000ですぞ? 得策ではありません! 第一、その女を連れて行くのにも私は反対です! シルヴァどのも策を明らかにするべきでしょう!?」

エステバンは正論を言う。彼は正しい。が、今はそんなことを気にしている時間はない。メガロシュを守らなければならないのだ。

「エステバンよ、力を見極めると言ったのはお前であろう? シルヴァの力を見極めてみるんだ。そもそも俺にはこの状況を確実に打開する策など思いつかん。ここはシルヴァに頼るほかないだろう」

レオポルドはシルヴァの力を認めた上で、シルヴァに従おうとしている。それを見たエステバンはもうどうにでもなれと思った。

「誠に遺憾ではありますが、シルヴァどのに従わせていただきましょう。その力、しかと見届けさせていただきますぞ!」

「望むところです、エステバンさま」

ようやく出陣のめどがつき、レオポルド、エステバン、シルヴァはリンダと3500の兵を引き連れて、メガロシュへと直行した。


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