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平民王子の覇道  作者: 宮本護風
第1章
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第10話 民衆の理解

「よし、これでいこう」

レオポルドは視察からの数日間、ずっとダリオと作戦を考えていた。それがようやくできたのだ。

「して、決行日はいつになさいますか?」

ダリオがレオポルドに尋ねる。

「明後日だ」

「は!?」

ダリオは耳を疑った。そんなに早く実行に移すものではない。明後日など絶対に不可能だと思った。

「それは少し厳しいのでは……」

ダリオはレオポルドを諌める。

「大丈夫だ、こうなることを予期して、かなり前から、防衛軍とは別に軍隊を養成している。兵糧の準備もできている。あとは彼らに命令を出すだけだ。決行が遅くなって、情報が漏れてはいけないのでな」

「なんと!」

ダリオはレオポルドの用意周到さに驚愕した。やはりレオポルドは只者ではない。

「わかりました。それではそれでいきましょう」

「兵士たちには、今日明日は家に帰ってもらってくれ。これが最後かもしれんからな」

レオポルドの提案にダリオは苦言を示す。

「レオポルドさま、お気持ちはわかりますが、そうしてしまうと兵士が逃げ出す可能性が……」

ダリオの意見はもっともだ。しかしレオポルドはこれに答える。

「そんなことで逃げ出す兵士には逃げてもらえ。戦場では役に立たないからな。俺は彼らを信じている」

ダリオは感嘆した。やはりレオポルドは只者ではない。再びそう思った。

「ダリオもエミリアと過ごしてやってくれ。あいつ、寂しそうだったぞ」

「いえ、しかし私は……」

「これは命令だ」

レオポルドは笑いながらそういう。優しい人だ。

「それでは、そうさせていただきましょう」

ダリオはレオポルドに感謝して、会議室を出た。



レオポルドは邸宅の前に各村の長を集めた。

「今日は重大な発表がある」

それは何なのか。気にする長たちが、口々に予想する。

「このレオポルド=リオス=アインフォーラは、ゴリモティタ攻略の命を受けた。によって、決行は明後日ということに決まった。この戦で、皆には苦労をかけるかもしれない。未熟な私を許してほしい」

レオポルドは頭を下げる。批判が来るに違い無い。しかし、領民たちの反応はレオポルドの予想に反していた。

「なんだ、そんなことですか」

「え?」

レオポルドは驚く。そんななか、ボンが口を開く。

「私たちはレオポルドさまに多くのご恩を受けて参りました。私たちは恩を受けるばかりで、何も返せてはいませんでした。それが悔しくて。しかし、今こそ恩返しできるときではありませぬか。私たちにとってこんなにも嬉しいことはありません」

これがレオポルドの徳治のなせる技だ。レオポルドは領民たちの理解に感謝した。

「私たちにできることならば何なりと、お申し付けください」

「ああ、ありがとう、みんな!」

レオポルドの目はかすかに潤んでいた。



帰宅した兵士たちは家族との幸せなひと時を過ごした。

「とうちゃん戦争に行くの?」

「戦争?」

「ああ、そうだ」

「んー、よくわかんないや』

「はっはっは。そうだと思ったよ。いいかい? とうちゃんはな、レオポルドさまのために戦うんだ」

「レオポルドさま?」

「ああ、ここの領主さまだ。あの人のおかげでみーんな、幸せに暮らしてるんだ」

「へえ、そうなんだ! じゃあとうちゃん頑張らないとね!」

「ああ、頑張るぞ!」

こんな会話がいたるところで行われている。子供と話す父。恋人と話す男。母と話す若者。過ごし方は様々だ。

「でもな、とうちゃんはいなくなっちゃうかもしれない。その時は、きっとまた会えるから、それまでかあちゃんの言うことをしっかり聞いて、いい子でいるんだぞ!?」

「うん、わかったよ。とうちゃん!」

その隣では母と思しき女が泣いていた。戦争とは、そんなものだ。必ず勝者と敗者が存在する。それに伴い、必ず、負けた方には死ぬものだけでなく、残されるものも生まれる。勝った方には殺してしまったという、後悔の念が必ず残る。そんな、悲しいものなのだ。みんなが悲しくなる。人間とはかつて協力して生きてきた。それなのに、どこで間違ってしまったのだろうか?レオポルドはきっとこんな感情なのだろう。


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