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平民王子の覇道  作者: 宮本護風
第1章
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第9話 視察と考察

レオポルド一行は、領民視察のため、近くの村を訪れた。

「レオポルドさまだ!」

「おはようございます!」

領民たちが口々に叫ぶ。それほどレオポルドは人気なのだ。

「これはこれは、レオポルドさま、ようこそいらっしゃいました」

「ボンか。久しいな」

村の長であるボンが老いた体を動かして、レオポルドの元へ来た。

「今回の報告会はいかがでしたかな」

「うん、うまくいったよ。ありがとう」

「それは何よりでございます」

領民の前で報告会の内容を明かすことはできない。レオポルドへの命令は決行までは機密扱いとなっている。 

「レオポルドさまのおかげで我々は本当にいい暮らしをさせていただいております。聞くところによると、他の領国では税が重かったり、領への奉仕活動なども課されるそうな。それに比べてここメガロシュは、領民のためにある国のようです。これもひとえにレオポルドさまのおかげ、ありがとうございます」

ボンからの感謝の言葉を聞き、照れるとともににレオポルドはふと思った。領民たちはみんな現状に満足している。それなのに本当にゴリモティタを攻略する必要があるのだろうか。このままの状態を維持すればいいのではないか。そう考えると止まらなくなりそうだった。

「レオ、急に静かになってどうしたのよ」

エミリアが尋ねる。

「ん? いや、ちょっと考え事をな」

「ボーっとしないで、しっかりしてよね」

レオポルドの苦悩を知らないエミリアは何気なくそう言った。

「馬鹿ね、エミリア。レオには考える事が山ほどあるの。どれだけあんたは無神経なのかしら」

正論を展開し呆れるフェリスに何も言い返せないエミリア。またうるさくなりそうだ。

「そうだな、よし、視察はこれくらいにするか。領民の状況もよくわかったし、大収穫だ」

レオポルドは視察を完了させて、邸宅への帰路についた。


「じゃあ私はここで」

「ああ、またな。あと、昨日はありがとう」

レオポルドは別れの挨拶をするとともに、昨日の感謝を伝えた。

「何がよ? 別にお礼を言われるようなことじゃないわ、じゃあね」

昨日とは違って、いつも通りのエミリアに戻っていた。エミリアとは彼女の家の近くで別れた。

「レオ、昨日は何があったの?」

フェリスが恨めしそうにレオポルドに尋ねる。

「ギルバートのことは知っているか?」

レオポルドもある程度は吹っ切れたようだ。あの事件についてを語ろうとする。

「ええ……。残念だったわ」

「あいつは俺を慰めてくれたんだ。いつもとは違う、優しい口調でな」

「エミリアは優しいから」

フェリスは突然彼女を褒め出す。

「あの子はね、お母さんはエミリアを産んだ時に亡くなって、お父さんは軍人さんでしょう? だからすっと一人だったの。寂しかったに決まってるよね。そんなエミリアだから、みんなの苦しみがわかるんだと思うの」

レオポルドはエミリアの知らない一面を知る。

「そうだったのか」

「うん、だからエミリアを悲しませないであげてね」

フェリスは喧嘩こそするがエミリアを大切に思っているのだ。レオポルドはそのことに気づいた。


邸宅についたレオポルドはフェリスと別れて部屋に戻った。辺りはすっかり暗くなっている。レオポルドは暗闇の中、考え事をした。ゴリモティタの攻略を命じられているから、それを遂行しなければならない一方で、メガロシュは攻略を要さないほど安定している。攻略の必要性は全くないだろう。それでもレオポルドはゴリモティタ偵察を経て、今までは庶民のように振舞っていたが、今は自分は王族であることにも気づいた。だから、領民の生活の安定ではなく、国としての安定、栄華も求めなければならない。そう考えると、そのどちらをもこなしているエルンストはやはりすごい。レオポルドはエルンストを肯定はしないまでも、エルンストは王族としての義務を完全に果たしているのだと少し見直した。そのままレオポルドは眠りについた。


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