一話
最後まで読んで頂けたら光栄です。
とある訓練所…
「はあ!とう!えぃや!」
一人で空を相手に剣を振り回している少年がいた。
体型は小さいが、筋肉がつき始め、いかにも青年といった所か。
「おい、レイ!そろそろ飯が出来るぞ!剣ばっかり降ってねぇで、速くこっち来い!」
五十過ぎたようなおやじがこっちを見て叫んでいる。
息づかいを荒くしながら、レイは動きを止めた。
「いま行くよ。じぃさん。」
剣を渋々腰にかけ、歩き出した。
賑やかな繁華街などを通り過ぎ、裏道に入った。
周りの人は剣を持つやつや、ローブをきたやつなど、色々だった。
彼らは皆この国の兵士なのだ。
レイは一人前の兵士を目指し、修行中の身であり、一般兵の正式なテストを目前にしていた。
しばらく歩くと、古びた人目につかないような小屋があり、二人はそこへ入っていった。
「もう少し練習を控えたらどうだ?テストはもう一週間後だぞ。体でも壊してみろ…。」
レイがじぃさんと呼んでいる男、アモンが口を開いた。
「分かってるよ。でも、落ちるわけにはいかないんだ!」
「ああ、分かっているさ。三度目のテストだもんな。」
アモンは明らかに笑いをこらえていた。
レイは下を向いて黙ってしまった。
「悪い悪い。今度こそ受かるもんな。ははは」
「あ、当たり前さ!前の試験は剣の調子がだな…。」
二人はしばらく談笑して夜を過ごした。
そして、レイはテスト当日を迎えた。
「しっかりやってこいよ!」
アモンは朝も早いと言うのに大声でレイを見送った。
「やってやるさ!じぃさん、見てろよ!」
そんなレイの後ろ姿を見ながら微笑んでいた。
「こいつはつくづく親父さんに似てないな…。あいつはもっと優秀だったが…」
と心の中で思っていた。
テストは訓練所で行われた。
レイはさっさと登録を終わらせ、出番を待ち望んでいた。
テストの内容は至ってシンプルだ。
戦いの基礎となる、力、素早さ、体内に秘められた魔力、などなどを検査するものであった。
これらの力が戦いで役に立つ程度まで達していれば合格。
でなければまた来年…。
やっとレイの番が回ってきた。
気合いを入れ、建物の中へ入っていった。
「試験長、あの子はもう三度目です。力と素早さはずば抜けていますが…」
「うーむ。分かっておるのだが…。魔力が…ゼロに等しいのが…問題ありじゃ。」
「しかし、ファイターやスカウトならば十分通用します!せめて合格だけでも…」
試験長は無言のままレイの書類を見た。
「!」
いきなり目を見開いた。
「どうされました?試験長。」
「ま…まさか…。」
数秒間の沈黙の後、試験長が口を開いた。
「あの子を合格にしなさい。」
「は、承知しました。」
あんな子を野放しにしておくとは…!もっと早く気付くべきであった!
と試験長は悔やんでいたのであった…
ありがとうございました!