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臨海教室二日目。
午前中は一応学習ということで自然についての討論会?のようなものが各クラスごとで行われた。さくっと終了。
お昼は初日の豪華なバーベキューとは違い、サンドウィッチを作って終了という育ちざかりの男子高校生にはちょっと物足りないものだったが……皆、そんなことはどうでもよかった。
なんといっても、メインイベントのキャンプファイヤーが夜に待っているから。
ベタ感満載なイベントだが、誰もが楽しみにしている。自然に囲まれた中で、炎の周りをマイムマイムとか踊ったりするわけで。もちろん、パートナーはくるくる変わるがお目当ての相手と堂々と手を繋げるチャンスなわけで。
みゆと、踊りたい。切実に願う男が一人。
そして、そんな彼を後押しするかのような周りのサポートが入った。
「あ、コウくん、タカシくん、こっちー!」
鷹士と洸の二人が自由時間にフラフラしているところを見つけて、加奈が叫ぶ。その声の大きさにちょっと驚きつつ声のする方向を見ると、加奈と一緒にみゆと佐伯がいた。
でかした、カナブン!
「おう、なんだ?」
ニヤニヤしている加奈に、これまたニヤニヤしながら鷹士が聞く。
「キャンプファイヤーまで時間あるじゃない?だから、今のうちにちょっと川に遊びに行かない?」
「行く」
即答する洸に、皆が笑う。
「女子だけだとちょっと怖かったからね」
はにかみながら言うみゆに、また今日も悶える洸だった。
快晴の空の下、五人でのんびり喋りながら川岸へ移動した。
陽の光が反射して、水面がキラキラと眩しくて。それだけで全員のテンションがあがる。
「足だけでも水に入ろ!」
冷たい水に足をひたして。
「水が超冷たいけど、気持ちいいね、コウくん!」
そう言ったみゆの笑顔がすごく綺麗で、言葉もでなかった。
……オレ、ホントに、泣きたいくらいにこいつが好きだ。
洸は胸がキュンと甘く苦しくなるのを感じながら、一生この景色を忘れることはないだろうと思った。
しばらくそうして遊んでいると、少し離れたところから「おぉー!」という歓声が聞こえてきた。
「もしかして、キャンプファイヤー始まるのか?」
「あ、そうかも!」
鷹士と佐伯の会話に、慌てて集合場所へ向かう。
が、途中で「きゃっ」という小さな声に立ち止まる。先頭を歩いていた洸と鷹士が振り返ると、その場でうずくまっているみゆがいて慌てて駆け寄った。
「みゆ!大丈夫か?」
「大丈夫だよ。すぐにあとから行くから、みんなは先に行ってていいよ」
焦る洸に笑顔を向けるみゆ。
「でも、みゆ……危ないよ」
「カナ、ホントに大丈夫だから。間に合わないと先生に怒られちゃうから行って。で、私のこと伝えておいてくれればそれでいいから。ね」
「どうしよう」
困った表情の加奈と佐伯に、洸がみゆに近づきながらふんわり笑う。
「いいよ、オレが残ってみゆを連れて行くから、みんな先に戻ってて」
「えっ!いいよ、コウくん!悪いから……」
痛いくせに、我慢して笑うなよ。
「だから、先生には報告よろしくな」
みゆには返事をせずに言うと、みゆ以外の全員の表情が緩む。
「じゃあ、澤田さんのことは頼むな、コウ」
「みゆをお願いね、コウくん」
「気を付けて戻ってきてね。先生には報告しとくわ」
「おぅ、よろしくな」
三人が戻っていくのを確認してから、みゆを振り返る洸。
「大丈夫だから、ゆっくり戻ろう」
「……ありがとう、コウくん」
優しい笑顔の洸に返事をしたみゆは、少し泣きそうな笑顔で答えた。