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 水遊びという名のみゆウォッチングを満喫したあとは、バーベキュー。

 もちろん、計画通りクラスは違うけどみゆのグループと合同だった。

 肉肉、と呟きながら準備を進めつつさりげなくみゆの傍へ近づく洸。


「みゆ、それ重たいからオレが持つよ」

「あ、ありがとうコウくん」


 はにかむ笑顔に胸を射抜かれた。だが、そんな動揺を見せることなくこちらも負けずに王子様スマイルを出す。


「その代わり、美味いの作ってくれよな」

「焼くだけだけどね」


 うるさい、カナブン。


 なんだかんだ言いつつも和気あいあいと皆で楽しく食事を終えた。みゆとの会話を楽しみつつ、若干妙に仲良さげな鷹士と佐伯の様子も観察していた洸。

 後片付けをてきぱきとしていると、こっそりと加奈に話があるんだけど、と呼ばれてさりげなく洗い場へ移動した。


「で?話ってなんだよ?」


 オレとみゆの時間の減らしてくれて、という言葉は心の中に押しとどめて手を動かしながら聞いた洸に、少し暗い顔をして加奈が口を開く。


「その、みゆのことなんだけど。……今日のみゆ見て、どう?」


「……は?どうって?……無理して笑顔作って明るくしてるってことと関係ある?」

「やっぱり、コウくんにはわかるんだね」


 一人納得して頷く加奈。そんな彼女を前に、若干居心地悪そうにした洸を見て、プッと吹き出した。


「コウくんって、ホント隠し事できないタイプだったんだね」


 失礼な、と少しムッとする洸を見て、カナは慌てて「ごめんごめん」と笑顔で謝る。


「悪い意味で言ったんじゃないの。ホントはね、最初にみゆに告白した時にからかってるんじゃないかなって思ってたのよ。あたしも……みゆも」

「はぁっ?!んなわけないだろ!」

「うん、もう今はちゃんと本気なんだってわかったから。だって、コウくんって女子にすごい人気じゃない?だから最初は、ね。

 でも、みゆと話したりしてるコウくん見てて、ちゃんと伝わってきたから。コウくんの気持ち」


「あ、そ?」


 カナブンごときの言葉に、少し照れる。


「だからね……」


 一度、きゅっと唇をかみしめて真っ直ぐに洸を見つめて。


「昨日、みゆと今日のために買い物に行ったの」

「……うん、それで?」


「その時にね、あたしとみゆ二人とも見つけたのよ。神崎先輩を」

「神崎って……あの、サッカー部の先輩ってやつか」

 

 爽やかな男の、無駄に爽やかな笑顔が浮かんできて、嫌な気分になる。


「そう、その先輩。それで、その時に見ちゃったんだよね」


 言いにくそうにする加奈を見て、なんとなくその後の内容を理解した。


「彼女といたのか?」


「うん……キス、してたんだよね」


 ……あんの、バカ男がぁぁっ!!!


「わかった。ありがと、カナブン」


「……え?カナブンっ??」

「あ、しまった。つい言っちゃった。ニックネーム、可愛いだろ?」


 誤魔化す。誤魔化されろ。


「カナブンって、可愛い?……ま、いいけど」


 よし、誤魔化された!


 ほっとしつつも怒りはまだ収まらない。だが、甘い瞳を細めて軽く微笑む。


「大丈夫。オレが、あいつを護るから」


 真剣に。思いを込めて。そして、それは間違いなく加奈に伝わり、ほっとしたようにふんわりと笑った。


「ありがとう。みゆ、泣かせないでね」


 うん。カナブンがみゆの一番のダチなのがわかった。

 そのことに満足しつつ、洸はみゆの元へと急いだ。


 みゆ。

 頼むから、一人で泣くなよ。


 そう願いながら。



 **********



 急いで帰った洸は、すでに片付けを終えてクラスのみんなの方へ戻ってしまったみゆを見つけて軽く肩を落とした。


 仕方ない。こんな時は、ユキちゃんのところへ行こう。


 しばらく話しかけられそうもないことを感じて、由貴を探すためにキョロキョロ辺りを見回す。


「あ、いた!ユキちゃぁぁん!!」


 背中を向けて立っていた由貴に呼びかけて、次の瞬間しまった、と固まる。同じクラスの女子が、泣いていた。

 洸の姿を確認した途端に、走っていってしまう。


「ゴメン、ユキちゃん……もしかして、もしかしなくてもお邪魔しちゃった?」


 ちらり、と由貴の顔を見ながらそう言うと少しバツが悪そうな顔をして頭をかいた。


「いや、……大丈夫だよ」

「告られたり、してたよね?」

「うーん、ま、されたな」


 苦笑いするその姿も、洸とはまた違う大人の色気が滲み出ていて、洸はこっそり悶えた。


「そっか。結構可愛い子だよね」

「可愛くても、俺には生徒の一人としかみえねぇからなぁ」


 そう言いながら煙草に火をつける。喫煙場所に来たところに、突撃されたのか。


 ……うん、大人の魅力大放出中。


「やっぱり、ユキちゃんはモテモテだなぁ」

「自慢することでもないけどな」

「なんで?それだけユキちゃんがいい男ってことじゃないか?」


 思わず本音をもらすと、ビシッとデコピンされる。痛い。


「ばぁか。自分の好きな女以外に恋愛感情で好かれても困るだけろ?断るしかできないんだから」


 あぁ、うん……その通り。


「断るのも、あんまりいい気分じゃないからねぇ」

「ま、そういうことだ。で?」


 と、由貴が洸の目をすっと覗き込む。


「……ユキちゃんて、やっぱエスパーだよね」


「お前が単純なだけ」


 ふ、っとそれはもうたまらないくらい魅力的な微笑みを向けられて、やっぱりエスパーじゃなくていじめっ子だ、と負けオーラを出しつつ軽く睨むように見つめた。


「相談っつーか、なんていうのかな。ちょっと、ユキちゃんにまたパワーをもらいたくってさ」


 まだまだお子様なんだな、と自覚しつつ少し顔を赤らめながら言う洸に、ふうん、と最後の一服を終えて携帯灰皿に吸殻をしまってから。

 にやり、と悪魔のように笑った。


「俺さぁ、結構生徒たちから相談事とかもちかけられるんだよなぁ」

「話しやすいんだよね、兄貴みたいな存在でさ」

「だからさぁ、……誰かさんの想い人とかからも相談とかされたんだよなぁ」


「!!!」


 マジですか!!!


「ユユユユユユキちゃんっ?!!」

「ぶはっ!ユが多すぎだろ!」


 いやいや、それどころじゃないって!!


「ももももしかして、オレの話とかも出てきたり……?」


 一気に心拍数が上がる。


「まぁ……先輩?の話……」


 がっくり……


「と、お前の話も出たかな?」


 がばっと顔をあげた洸の視界に、にやにやといやらしい笑顔を見せる由貴が映る。


「み、みゆはオレのことなんて?」


 バクバク鳴る心臓を押さえつつ聞くが、そこはやはり大人の由貴。


「それは、俺に相談してくる相手に失礼だから、それ以上は話せないけどな」


「ですよねぇ」


 そんなに爽やかに告げなくてもいいのに、と思いつつそんな由貴だから好きなんだと再確認をしたり。

 と、ふと由貴が真面目な顔になる。


「保健の先生からの特別授業」

「ユキちゃん?」


「お前らしくしとけ。以上」


「は?」


 拍子抜けした間抜けな表情をした洸の頭を軽く、優しくポンポンと叩いてそれはもう見惚れてしまうような優しさ溢れる笑顔を向けて。


「頑張れよ、青春少年」


「はいっ」


 思わず、行儀よく返事をしてしまうくらい。


「と、そろそろ点呼じゃねぇ?」

「わ、やべっ!……ユキちゃん、ありがと」


 素直な気持ちで、そう言えた。


 うん、頑張ろう。

 オレはオレらしく。

 みゆを、手に入れるために。


 まだまだ、臨海教室は終わらない。

更新滞りすみません!!

もっと精進します……汗

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