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3

 洸がみゆに振られた翌日。学校に着いてすぐに保健室へ向かった洸がガラッと勢いよくドアを開けたその音に驚いて白衣を着たメガネ美人が振り向いた。

 そして、その美人に洸は情けない顔で飛びつく。


「ユキちゃぁぁぁん!オレ振られちゃったよ!その広い胸で慰めてぇぇ!……っていてぇぇ」


 泣きついた直後に落ちてきた拳骨に涙目になる洸は、若干くらくらしながら恨めし気に美人を見上げる。

 

「だから、ユキちゃんじゃなくて由貴ヨシタカだっての!それ以前に、先生だろ」

「いやん、怒っても美人だねユキちゃん」


 聞いてない。


 そんなことを言いつつも涙目の洸を見るその瞳は優しい保険医、柴崎由貴、26歳男。180センチを超えた長身に化粧映えする美しい面差し(洸談)、そして学生たちの悩みも真剣に聞いて答えてくれる正にパーフェクトな彼はふざけたそぶりの洸がかなりショックを受けているということもお見通しで苦笑しながらその頭を軽くポンポン、と叩く。


「で?どうだったんだ?」


「昨日さ、呼び出して告ったんだけど『好きな人がいるから付き合えません』って。しかも、ダチ連れてきてさぁ。どかーんと玉砕だよ!」


「べつに、今日くらいは明るくしなくたっていいんじゃねぇの?……頑張ったな、

諦められないんだろ?今日くらいは甘えさせてやるぞ?」


 優しいその言葉に、堪らずぎゅうっと抱き着く。


 ……ダメだよユキちゃん。こんな風に優しくされたら折角我慢してるのに涙が出ちゃうじゃんか。


 思い出す、入学式。

 桜の花びらの舞い散る中、少し茶色いふわふわの髪を風になびかせながら友達と笑っていたみゆ。

 あまりにもその表情が可愛らしくて。


『ずっとその笑顔を見ていたい』

『オレが護ってやりたい』


 一瞬で、恋に落ちた。


 素直で真っ直ぐなみゆを知れば知るほどどんどん好きになって。

 はまっていく自分が怖いくらいで。

 こんなに誰かを好きになれるなんて思っていなかった。


 そして、みゆを見つめていると必然的に気づくその視線の先。


 彼女は、いつもあの男を潤んだ瞳で見つめていた。一つ年上の、サッカー部の男。


 ……まぁ、確かに女子受けしそうな優しそうな顔してるかな。


 同じ中学出身で多少面識があるらしくたまにだけれど挨拶程度?の話をしているところを見かけたこともある。

 洸の嫉妬心がメラメラと燃える。


 あいつを見つめ、赤く染まる頬。

 オレを見てそうなってほしい。

 オレのことを潤んだ瞳でみつめてよ。


 ねぇ、オレのこと好きになってよ。


 好きになればなるほど欲がどんどん増えていく。


 たまに話しかける程度じゃ我慢できなくなってくる。

 もっとずっと傍で、みゆを感じたい。


 ……なんで、こんなに好きなんだろう。


 そんな問いかけを自分にしても答えは出てこない。


 オレだけの、みゆにしたい。


 胸が痛いくらい。苦しいくらい。


 みゆが欲しくて。 

 みゆが恋しくて。


 恋ってこんなにツライものだなんて。

 ユキちゃんに涙見られて、オレホントかっこわりぃ。


 だけど……諦められない。諦めたくないんだ、この恋を。みゆを。


 強く、強く想いながらぎゅっと拳を握りしめた。


「ごめん、ユキちゃん、なんかオレめちゃくちゃカッコ悪い」


 赤い目を見られたくなくて俯いたままそう言う洸の頭の上で由貴が優しく笑う。


「んなことねぇと思うけど。お前チャラそうな外見だけどやることやってるし。 

 一途な恋って恰好いいんじゃねえ?俺はお前、いけてると思うぜ?」

「ユキちゃん、大好き!!」


 ゴツン、ともう一度拳骨が降る。


「諦めないんだろ?……だったら、なりふり構わずいってみろよ」


 挑発するように言われて。


「あぁ、やってやる!絶対、オレに惚れさせてみせる!」


 覚悟しとけ、澤田みゆ!絶対、オレの彼女にしてみせるからな!いつだってパワーをくれるユキちゃんという強い味方もいるんだからな!


 ありがとうなんて、照れくさくて言えないけど、笑顔全開で保健室を出る。


 だから、ドアが閉まった後の


「頑張れよ、コウ」


 その応援は、もう充分もらった。

 洸は、頼りになる兄貴(心の)に感謝しながら教室へと向かった。 

 

体調を崩していて更新すっかり遅くなってすみません。(読んでいてくれてる方がいたら (笑))

りんご病、まだ完治ではないけどこれから完結まで頑張ります!

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