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*******


 ピンポーン

 ピンポーン


 遠くで、チャイムの鳴る音がしている。

 遠慮がちに開くドアの音。


 ・・・あぁ、タカが来てくれたのか。


 そう思いつつも洸の瞼は重く閉じたままだった。

 少しの間があって、ひんやりとしたものがおでこの上に乗せられる。


 冷たくて、超気持ちいい。

 思わず口角が上がる。


 サイドテーブルに置きっぱなしだった体温計の電源を入れる音がした後、計測。


 ピピピピピ


 そっと体温計が抜かれて。


「わぁ、・・・凄い高い熱!」


 ・・・!!?


 熱もだるさも吹き飛ぶ衝撃を受けて目を見開く洸。

 みっ、みゆの声っ?!


「みゆっ、ゴホッ」


 慌てて体を起こす洸に驚いてみゆが「きゃあ」と言う。


「な、ななななんで?」


 頭が重たいやら、状況が飲み込めずどもる洸。


「あ、ごめんね勝手に入っちゃって。タカシくんが寝てるけど鍵開けてくれてるから入っちゃって、って言うから・・・」


 おい、タカ!

 頭の中で怒鳴る。

 と、はっとしてみゆを見つめる。


「って、今何時?!ダンパは?」


 グルグル回る頭を必死に堪えながら聞くと、ふんわりと笑うみゆ。


「今頃みんな、踊ってるんじゃないかな?」


 マ・ジ・か! 


「せ、先輩は?」

「先輩のパートナーはカナに交代したから」

「そっか・・・ごめんな」


 楽しみにしてたんだろ?という言葉は胸の中で続けて。

 少しの、沈黙。


 先に口を開いたのはみゆ。


「私・・・色々ごめんなさい。コウは全然悪くないのに・・・」

「え、なんでみゆが謝るの?」


 きょとんとした洸の顔を見て、みゆがまた優しく微笑む。


「ホント、優しいよねコウって」

「え?」

 

 声が小さくて、よく聞こえずに聞き返す。


「ううん、何でもないの!それより、お粥作ってきたんだけど食べられそう?」


「!!たっ、食べますっ、ゲホッ」


 熱とは違う赤みが増えただろう洸の顔を見て、みゆがクスクスと笑う。

 そんなみゆを見て、顔がにやける洸。


 みゆ手作りのお粥を温めなおしてくれて。


「い、いただきます」

「はい、どうぞ」


 パクリ、と一口。


「美味い!」


 ついさっきまで食べ物のことなんて考えるだけでもだるかった洸の、恐るべき愛のパワーがいかんなく発揮された。

 そして、あっという間に完食。


「よかった、食べられたね。そしたら、次はお薬ね」

「はぁい」


 みゆには逆らいません、とばかりの行儀のよい返事を返す。

 おとなしくみゆの言うことを聞く。


「コウの周りに、いい人がたくさん集まってるよね」


 ポツリ、ポツリと話し始めるみゆ。


「私ね、あのあと・・・自分でも色々反省してたんだけど。呼び出されちゃったの」


 あはは、と小さく笑う。

 ちょっと困ったような。でも、嫌ではないという笑み。

 思わず抱きしめたくなるが、この体調ではそれもできずやきもきする洸。


「って、呼び出されたって、誰に?」


 洸が訝しげに聞くと、ふふっっと思い出し笑いをするみゆ。


「んー、コウのお兄さんと、弟?」


「・・・は?」


 ・・・兄弟は、姉貴だけだけど。


「・・・って、誰?」


「お兄さんがね、『あいつ羨ましいくらい一途な熱血バカなんだ。

 真っ直ぐな気持ち、伝わるだろ?信じても裏切られたりしねぇよ。

 あと、意外と泣き虫だから泣かせないでやってくれるか?』って」


 心臓が、ぎゅうっと掴まれたように熱くなる。

 ・・・ユキちゃん・・・。


「弟くんはね、『ちょっとストーカー入ってるけど、それだけゾッコン(死語)なんだよ。

 周りの女なんてまるで興味なし。だからあいつのこと信じてやって。

 俺が女だったら付き合いたいくらいいい男だよ。

 また、今までみたいに仲良くしてくれよ。

 ・・・あいつ、一人暮らしで今寝込んでるから、もしよかったら元気づけに会いに行ってくれないかな』って」


 ・・・お前が女になっても付き合わねぇよ!つか、オレよりガタイのいい弟なんて欲しくねえよ!


 ・・・でも。

 ありがとう、ユキちゃん、タカ。


 思わず涙ぐむ洸を見て、みゆが微笑む。

 その笑顔に、見惚れた。








 

 

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