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 みゆと先輩のやり取りをみたあと、洸は自分がどうやって自宅に帰ったのかも覚えていない状態だった。

 気づいたら自分の部屋で、ただ震える身体を抱きしめながらベッドで布団をかぶっていた。


 ……女々しいかもしれないけど、でもこんなことがあっても好きなんだよ。

 悔しくて、悲しくて。

 でも、愛しい。


 ダン、と固く握っていた拳を真っ白な壁にぶつける。


「なんで、みゆ……」


 仰向けになって手を広げ、ぎゅうっと唇を噛みしめる。


 わかっていた。

 別に、あの男はみゆのことを好きなわけじゃない。

 みゆも、以前のような恋心は抱いていない。……はず。


 だけど。


 他の女に抱きつかれたことは確かに洸に隙があったのかもしれないけれど。


 夢見ていた。

 キラキラ光りを浴びながら、フロアで踊るみゆと自分を。……キャンプファイヤーではできなかったから余計に。


 高校の3年間という限られた時間の中での二人の思い出を作りたかった。


 ……みゆは、一度返事したからにはもう断ることはしない……いや、できない性格。ならば、やはり今年のダンスパーティーを二人で過ごすのは無理で。


「みゆ。オレ、お前を振り向かせるまで頑張るつもりだけど。……これは、キツイなぁ」


 眠気もやってこず、布団の中で永遠にも感じる時間をやり過ごす。

 ほとんど眠れないまま昇ってきた眩しい朝日が、少し憎らしく感じる洸だった。







 休みたいくらいの気分だったがそんなこともできずに重たい足を引きずって学校へ向かう。

 その足は教室ではなく真っ直ぐ保健室を目指していた。


 今日は力一杯ドアを開ける元気もないや、と自嘲気味に笑いながら保健室の中へ入っていく。


「ユキちゃぁぁぁん」


 いつものように机に向かって何かを書いている由貴に情けない声で呼びかけると、なぜかいつもよりも驚いた顔で振り向いた。


 ……あぁ、今日も眩しいくらいに美人。


 そんなことを思いつつそのままベッドへダイブ。


「ユキちゃん、一生のお願い。今日はここで寝かせて」


 ここなら、眠れそうな気がするから。


 ベッドの上に突っ伏したままの洸を見下ろしながら洸の傍に近づく由貴。

 そして、優しく頭に乗った大きな暖かい手のぬくもりにじんわりと涙が浮かびそうになるのを必死でこらえる洸。


「どうした?」


 声まで、優しいなんて。


「うーん。ちょっと、パワー切れみたい」


 わざと出したあいまいな答えに反ってきた言葉は。


「そっか。ま、一日くらいのんびりするのもいいんじゃねぇの」


 その発言を聞いて、洸は思わず笑い始めた。

 教師として、その言葉はどうかと思うが、その言葉に救われたのは確かで。でも、素直に言うのは恥ずかしくてこっそりと「サンキュ」と呟いた。

 そんな洸を眩しく見つめ、ふんわりと由貴が笑う。


「いい子で寝てろよ」

「はぁい、センせ」


 


久し振りなうえに短くてごめんなさい。

次回は早めに更新します!

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