それぞれの日常
「殿下。アウグスト殿下」
「ん?」
アールスハイド王城内を移動していたアウグストを、官僚と思われる男性が呼び止めた。
「なんだ、どうした?」
「お呼び止めしてしまい、申し訳御座いません。ディセウム陛下が御呼びで御座います」
「父上が?」
「はっ。会議室にてお待ちで御座います」
「分かった。ご苦労だったな」
「勿体無いお言葉で御座います」
こうしてアウグストがディセウムに呼ばれることは、実は最近よくあることである。
立太子の儀を終え、王太子になる前から国政に積極的に参加するようになった。
それもひとえにシンのせいだろう。
人生で初めてできた全く遠慮をしない友人。
しかもその友人は、自重知らずの常識知らずときた。
シンがなにか騒動を起こす度に、その尻拭いともいうべき行動を率先して行ってきた。
そして、現在は自分自身がアルティメット・マジシャンズの次席。
マーリンは半ば隠居の身であるため、実質、世界二位の力を持つ魔法使いとなった。
そのため、特に軍事に関しては、アウグストの発言力はかなり大きいものになっていた。
今現在、王国の議会で最優先の議題となるのは、先日までアウグストも参加していた魔人領攻略作戦についてである。
今回呼ばれたのも、その最後の詰めの部分でアウグストの意見を聞くためであろうことは、簡単に予想できた。
「なるべく早めにこの作戦事態の終息宣言が出せるようにしなければ。それが終わるまで私達の結婚式など行えないからな」
「やはり、殿下も早くエリー殿と結婚したいのですか? それともシン殿のためですか?」
「まあ、確かにそういった理由もあるが」
「では他になにか、早く結婚式を行いたい理由があるで御座りますか?」
側近兼護衛という名目のトールとユリウスが、早く事態を終結し、結婚式を執り行いたいというアウグストに疑問を投げかけた。
「私とシンの結婚式は、創神教のエカテリーナ教皇猊下が執り行う。それはつまり、世界を救った英雄の結婚式を、世界一親愛を寄せられている者が執り行うということ。それは、どんな光景だろうな?」
「それは……平和な、幸せな光景ですね」
「そうで御座りますな。魔人の大量発生などという、冗談のような事態に対して、心底疲弊しているであろう民衆にとってこれほど喜ばしいことはないで御座りましょうな」
「そういうことだ。私達の結婚式が執り行われるということは、全ての事態が終息し世界に平和が訪れたということだ。それを表すのに、これ以上に有効な手段はない」
自身の結婚式を、この一連の事態が終息した宣言として活用するという。
確かに、エリザベートとの結婚式を心待ちにしている部分もあるのであろう。
しかし、今アウグストがそれを考える時、まず第一に考えるのが、事態の終息宣言を兼ねた行事というものだった。
それを聞いたトールとユリウスは、お互いに顔を見合わせ、肩をすくめた。
(本当にこの御人は……自分の幸せよりも、まず民衆の安心ですか……)
トールは、アウグストのその姿勢に好印象も、もう少し年相応に自分の幸せを求めてもいいのにと少しの憐れみも感じていた。
アウグストは平然としているが、トールとユリウスの方が居たたまれない。
なのでここは、場を和ませることにした。
「なるほど。自身の結婚式を政治の道具にするおつもりなんですね。エリー殿が聞いたらなんと仰るでしょうね」
「おい。エリーには言うなよ? 教皇猊下に結婚式を執り行って頂けるということで凄く幸せそうなのだ。その幸せに水をさすんじゃない」
「そうで御座ろうなあ。エリー殿がシシリー殿とドレスなど選んでおった時は、心底楽しそうで御座ったですからなあ」
「だろう。だから余計なことは言うんじゃない」
「殿下。本当にそれでよろしいんですか?」
「なに?」
いかにもエリザベートに告げ口をしそうだったトールを牽制するアウグストだったが、トールから意外な反撃を受けた。
「エリー殿は本当に幸せそうです。それに引き換え、新郎であるところの殿下といったら……」
「そのエリー殿が楽しみにしている結婚式を、政治の道具にしようとしているで御座る」
「……」
「非道い話ではないですか。一人だけ舞い上がって、お相手はそうでもないという。これではエリー殿が可哀想です」
「そうでござるなあ」
「……なにが言いたい?」
「確かに、殿下の仰ることも分かります。しかし、殿下もエリー殿との婚礼を喜び、楽しみにしてあげてください。そうでなければエリー殿も……殿下も可哀想です」
「私も?」
「そうです。殿下は……お立場もありましょうが、自分を蔑ろにしすぎです。もっと、自分のことも構ってあげてください」
「見ていて辛くなるときがあるで御座る」
トールとユリウスからの言葉を受けて、アウグストは黙り込んでしまった。
最近、シンの影響か遠慮がなくなってきていたが、ここまで意見するようになったか。
それも、ただの苦言ではない。
自分を慮っての発言だ。
(変われば変わるものだな……)
幼い頃からずっと一緒だった。
いつも行動を共にしていたが、立場が立場なので対等に話をしたことなどなかった。
それが、高等魔法学院でシンと出会ってからというもの、この変わりようはどうだ。
自分のことを考え、意見までしてくれるようになった。
そのことが嬉しく、つい笑みがこぼれてしまった。
「そうか、お前達の言い分は分かった」
「では」
「そうだな。それでも、この結婚式にそう言った意味合いが含まれることは変わらないが、その式自体は楽しみにしていよう」
そう言ってアウグストは、穏やかな顔で笑みを浮かべた。
それを見たトールとユリウスは、ホッとした顔をした。
「よし。それなら、お前達の結婚式も盛大にやるとしようか」
「「え?」」
「私ばかりが楽しんでいては申し訳ないからな。そうだ、式が終わった後、王都中をパレードで練り歩くというのはどうだ?」
「で! 殿下! そればかりは御勘弁を!」
「恥ずかしくて死んでしまうで御座る!」
「ハハハ。遠慮するな。オープンの馬車で……触れを出して沿道に人を集めようか」
「「お、お許しを!!」」
自分の至らぬところを指摘された照れ隠しなのか、本気なのか判別できない。
しかし放っておくと、アウグストなら確実に実行するであろう。
悪夢が訪れそうになり、トールとユリウスは必死にアウグストに許しを請うた。
そして、その光景は王宮にいる使用人や官僚、役人や軍人に見られていた。
「そうだ! 楽団やサーカスなども呼んで派手にやるか?」
「「た、助けて!!」」
王宮に努める人々は、王子と側近のやり取りを、微笑ましいものを見る目で見つめていた。
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魔物ハンター協会。
元は、討伐した魔物の素材を、商人に買い叩かれない為に設立され、魔物素材をその時々の適正価格で買い取り、それを魔物素材を必要としているところへ卸す。その際にマージンを得ることで利益を出す。
魔物素材が集まるということは、相当数の魔物を討伐するということでもあり、騎士団に代わり魔物を討伐するハンターに対し、国からの補助金も出るようになった。
こうして、討伐そのものに対しても報奨金が出るようになり、協会はその補助金の数パーセントを手数料として徴収し、そこでも利益をあげている。
なので、魔物を狩れば狩るほど、素材を買い取れば買い取るほど収益が出るようになっている。
まさに魔物討伐を生業とした組織なのである。
その協会を利用するには、特別な登録など必要ない。
市民証に計上される魔物討伐数を申請するだけでいいし、ハンターランクなども存在しない。
小型・中型・大型・災害級と、討伐した魔物のランクに応じた報奨金の上下はあるが、どの魔物を討伐するのかは、すべてハンターの自己判断、自己責任である。
なので、依頼などというものも存在しないのだが、それでもハンター達は魔物狩りに出る前にハンター協会に寄って行く。
それは、魔物素材の在庫状況を確認するためだ。
魔物素材の買い取り価格は、在庫が少なくなっている素材はレートが上がり、逆に在庫過多の素材はレートが下がる。
その在庫状況を見て、何を狙うか見定めるために、ハンター達は協会に集まるのだ。
ある日、ハンター協会に二人の少女が訪れていた。
「今日はどの素材のレートが高いのかなっと」
「マリア……下品だよ。本当に貴族の娘なの?」
「うるさいよ! ミランダ!」
マリアとミランダである。
高等魔法学院と騎士養成士官学院の合同訓練以降、妙に気が合った二人はよくこうして魔物狩りに行っている。
ミランダは、魔物を相手にした実戦を積むことで、より腕を磨くため。
マリアは、憂さ晴らしと小遣い稼ぎである。
「だってさあ、周りにリア充が多いとホント、キツイんだって」
「ああ、マリアの周り婚約者とかカップルばっかりだもんな」
「そんな中で独り身よ。いたたまれないったらないわよ!」
「ふっ……マリアはまだいいじゃないか。アタシなんて、周りの男から女扱いされてない上に、男どもがバカすぎてうんざりするわ……」
リア充に囲まれて辛い立場のマリアを、バカに囲まれて辛いミランダが甘いと言う。
ミランダのいる騎士養成士官学院は、男女比九対一の学院である。
つまり、ほぼ男子なのだ。
女子は、ほんの数人しかいないし、騎士学院の女生徒は女扱いされていない。
結果、騎士学院にいる男子は、異性の目を気にしなくなる。
そして、思春期の男子が集まると……基本バカになる。
「口にするのは女の話ばっかり。なのに、アタシらみたいな筋肉質な女は女と認識してないし。そんで子供かっていうような遊びでバカ騒ぎするし……ホント、ウォルフォード君を見習ってほしいよ」
「お? なに? ミランダ、シンに惚れちゃった?」
シンを見習ってほしいというミランダに対し、マリアが敏感に食いついた。
「あんなに堂々と、彼女とイチャイチャしてる人に惚れるほど節操なしじゃないよ。純粋にそう思っただけ」
「なんだ、つまんない。でも、シンを見習うのは止めといた方がいいわよ?」
「どういう意味?」
「シンはねえ……自分ができる最良のことをしようとして一生懸命なのは分かるんだけど、いかんせん加減をしらないというか、常識を知らなさすぎなのよね」
「そ、そうなのか?」
「だって、虎の魔物に膝蹴りする人、見たことある?」
「……確かに」
「ミランダは、あの程度しか見てないけどね、もうホント、信じらんないことばっかすんだから」
「あ、あれであの程度ということは……やめとこう、聞くのが怖い」
「その方がいいわよ? 精神衛生上ね」
何度もマリアと一緒に魔物討伐に赴いているので、この友人の力が途方もないものになっていることは知っている。
そのマリアをして、ここまで言わせるのかと、ミランダは背中に冷たいものが流れるのを感じた。
戦慄しているミランダをよそに、マリアは先日以来気になっていることを聞いてみた。
「そういえばさ、剣聖様に稽古をつけてもらえるようになったんでしょ? どんな感じ?」
すると、よくぞ聞いてくれたとばかりに、ミランダは目を輝かせてマリアに語り始めた。
「もう最高だ! 今まで習ってきたのがなんだったのかというくらい最高だ!」
「そ、そうなんだ……」
突然目を輝かせだしたミランダにマリアは若干引きながら応対する。
「ああ! 毎日毎日ボロボロになるまで叩きのめされるんだ。それが毎日だぞ! ああ、素晴らしい!」
ミランダってドMだったんだな……。
そう思って、マリアはちょっと遠い目をした。
どこの世界に、毎日ボロボロになるまでシゴかれて幸せそうにしている女子がいるというのか。
内心盛大に引いていたが、せっかくできた気の合う友人である。
ここは波風立てないように、さっさと討伐に行こうとマリアは決めた。
「ホラ、ミランダ。剣聖様の稽古が素晴らしいのは分かったから、早く討伐に行こうよ」
「ああ! 今までの稽古の成果がどれほどのものか、早く試してみたい!」
剣聖ミッシェルの稽古は、道場での稽古だけではない。
実戦の剣は実戦の中でないと鍛えられないとし、道場でしばらく稽古した後は、魔物の討伐という実戦を行うという指導方針を取っていた。
今日は、ミランダがミッシェルの稽古を受け始めてから初めての魔物討伐の日なのだ。
学院の男子のことを話しているときは落ち込んでいたのに、今は実に楽しそうだ。
現金なミランダに苦笑しつつ、今日の素材レートを確認しようとした。
その時。
「なんだあ? 王都の協会は、こんな女子までハンターやってんのかよ?」
「ギャハハ! 王都の協会は随分レベルが低いんだなあ!?」
「こりゃ、俺達が筆頭ハンターやった方がいいんじゃねえか?」
ハンターの中から、そんな言葉が発せられた。
マリアとミランダの他にも女性のハンターはいるが、皆妙齢の女性ばかりである。
女子と言われるような年齢の女は自分達だけだ。
ということは、自分達に向けての発言だろうと、声のした方を二人は見た。
そこには、下品な笑みをニヤニヤと浮かべ、自分達を値踏みしている三人組の男がいた。
「おう、姉ちゃん。ハンターの真似事なんてしてねえで、俺達の相手しろよ」
「そうそう! お前らに誰も手を出さない腰抜けな王都のハンターなんかより、俺らは強いぜえ?」
「アソコもな!」
ギャハハ! と笑い声まで下品である。
その言葉に、一番反応しているのは、マリアとミランダではなく、周りのハンター達である。
言動から察するに、この男達は田舎から出てきたのであろう。
そんな田舎者が、自分達王都のハンターを貶しているのも我慢できなかったし、なによりこの男達が下品な視線と声を掛けているのは、あのマリアとミランダなのである。
身の程知らずな男達に対し、王都のハンター達の怒りが沸点に達しそうになった、その時。
「うわっ、今までで一番下品なナンパされたわ」
「凄いな。こんな言い方をするのは物語の中だけだと思っていた。本当にいるんだな」
「ちょっと面白いよね」
怒りのゲージが上がっていく周囲とは対照的に、下品な声をかけられた当の本人達は全く気にしていない様子だった。
むしろ、物語でしか聞かれないような台詞が面白かったのか、アハハハと、声をあげて笑う始末だ。
一通り笑った後、二人はもう興味がなくなったのか、素材のレートが書かれている掲示板に意識を移した。
二人にとって、この話はもう終わったのである。
しかし、笑われてしまった男達の方は終われる訳がない。
「てっ! テメエら! なに笑ってやがる!」
「ぶっ殺されてえのか!?」
「なめてんじゃねえぞ!? こらぁ!」
あまりにも舐めた態度に激昂する男達。
彼らは田舎から出てきて、王都で一旗揚げようと目論んでいた。
舐められまいと意気込んで王都のハンター協会に足を踏み入れれば、成人したてくらいの女子が悠然と行動している。
そのことから、王都のハンター協会が大してレベルが高くないと判断した。
そう思ったから、さっきのように声を掛けたというのに、声を掛けられた女子は自分達を見て笑った。
男達のプライドは傷付けられてしまったのである。
声を荒げ、マリアとミランダに詰め寄ろうとする男達。
だが。
「ちょっと。臭いからそれ以上近寄んないでくれる?」
マリアの放った魔力障壁に阻まれ、前に進めなくなってしまったのである。
「な、なんだよ! この障壁!」
「前に進めねえっ!」
「くっ、くそ!」
マリアの張った障壁に完全に歩みを止められ驚愕するが、それでも意地で手を伸ばそうとする男達。
だが、その手がマリア達に伸ばされるその前に。
「少々、騒ぎすぎですよ」
「「「なっ!?」」」
確かに今まで自分の目の前にいたはずの女子、ミランダがいつの間にか男達の後ろに立っていた。
ジェットブーツを使いこなし、高速で移動したのだが、その動きがまったく見えなかった男達は揃って驚愕の声をあげる。
そして、抵抗する間もなく納刀したままの剣の鞘で当身を喰らい、その場に倒れ伏す。
それを見た周りのハンター達が、騒ぎを起こした男達を取り押さえた。
こうして、朝から協会内で騒動が起こったのだが、絡まれた当のマリア達は。
「これは、後で皆に教えてあげないといけないわね」
「そうだな。初めて絡まれたしな」
「あ、そうだ。ミランダ、シンから預かってるものがあるの」
「あ! まさか!?」
「そう、はいコレ」
「お、おお……これが……」
「バイブレーションソード。柄は共通だから、刃の部分だけね」
「ああ! ありがとう!」
素材のレートを確認し終わったのであろう。世間話などをしながら協会を出て、狩りに向かってしまった。
残された者たちは、キャッキャと楽しそうに協会を出て行く二人を、唖然とした表情で見送った。
「まったく。あの嬢ちゃん達は大物だぜ」
「実際大物だしな。踏んだ修羅場が違うんだろ」
「そう考えると、コイツらは勇敢だったのかねえ」
口々にそんなことを言う王都のハンター達。
それに対して訳が分からないのが、田舎から出てきた三人組である。
「なんなんだよ! あいつらナニモンなんだよ!?」
「お前ら、王都にきたのは最近か?」
「昨日着いたばっかだよ!」
「なら、知らないのも無理ねえか」
「だから、なにが!?」
イライラし始めた男に、王都のハンターが聞く。
「この前の魔人領攻略作戦で、大活躍した騎士学院の女生徒がいるって聞いたことないか?」
「あ、ああ。なんでも、災害級に止めを刺したとか……まさか!?」
「お前らを打ちのめした子だよ」
男達は、噂でしか聞いたことがなかった存在に出くわすとは、夢にも思ってなかったのだろう。
「くそっ! ついてねえ! そんなバケモンに当たるなんてよ!」
そう言って悪態をついた。
すると、周りのハンター達から笑いが起きた。
「な、なんだよ!? なに笑ってんだ!」
「ミランダちゃんがバケモンって。そしたらマリアちゃんはどうなるんだ?」
「さあ? なんだろ?」
「おい、そんなこと、あの子の前で言うなよ? キレちゃうから」
「違えねえ!」
そう言ってまた笑いだす。
「いい加減にしろよ! こっちは訳分かんねえんだよ!」
まるで嘲笑われているかのように感じ、男の一人が叫んだ。
「魔力障壁張った子がいたろ? あの子に比べたら、ミランダちゃんなんてまだ普通だぜ?」
「な、なにもんなんだよ、あの女」
「お前、アルティメット・マジシャンズって知ってるか?」
「は? 当たり前だろ、知らない奴なんていんのかよ」
救国の英雄。
『魔王』や『神の御使い』等の異名を持つシン=ウォルフォード率いる、史上最強の魔法使い集団。
最早、この国だけに留まらず、世界中で知らない者はいないとされる存在。
急にそんな話を出してきたことに、男達は困惑した。
しかし、その後ハンター達の口から出た言葉は驚くべきものだった。
「アルティメット・マジシャンズだよ」
「え?」
「だから、あの子がアルティメット・マジシャンズの第三席。『戦乙女』マリアちゃんなんだよ」
ハンターの口から出た驚愕の真実に、男達の脳はフリーズを起こす。
「アルティメット・マジシャンズのマリアちゃんに手を出そうとして、この程度で済んだんだ。運がいいのか、悪いのか。さて、どっちなんだろうな?」
そして、やや時間を置いてから再起動した男達は、さっきとは真逆のことを呟いた。
「俺たち……ついてたのかも……」
「エッキシ!」
「ん? 風邪か?」
「いや大丈夫。なんだろう?」
「誰か、噂してるのかもな」
「イケメン! イケメンでお願いします!」
アハハハと笑いながら進むマリアとミランダ。
マリアの願いが脆くも崩れ去っていたことは、知る由もない。
外伝も更新しました