外国を観光しました
あの後シシリーは実家に送って行った。
本当だぞ!
結婚する前にそういう事をするのは、貴族とはいえ珍しい事ではないらしい。けど、シシリーとすぐにそういう事をするのは何か違うというか……。
もう少し恋人同士としてお付き合いをして、お互いの気持ちが高まってからの方が良いと思う。
そんな訳で一旦実家に送ったシシリーとマリアを改めて迎えに行き、俺の家で皆を待っていた。
「そういえばお爺様、お婆様」
「ん? なんだい?」
「ほ、どうかしたかの?」
「私達が各国を廻っている間なんですけど、クロードの街の屋敷は御自由に使って頂いて結構ですよ」
俺達が各国へのゲート設置と連合参加の会談を兼ねた旅行……逆か? に行っている間、クロードの街の屋敷を自由に使って良いと言う。
「え? いいのか?」
「はい。シン君とその……婚約した訳ですし、お爺様とお婆様は家族になる訳ですから、それくらいは当然です」
「良いのかい? クロードの街の温泉は気持ち良いからねえ、そういう事なら遠慮なく利用させてもらうよ?」
「はい。使用人の人達にも伝えてあります。皆喜んでましたよ。英雄様のお世話が出来ると」
「なら、温泉だけでも利用させてもらうとするかね。ウチにも使用人がいるからずっと入り浸りって訳にはいかないけどね」
「はい! 是非!」
「そういう訳でマーリン、頼むよ」
「……ワシ、乗り合い馬車じゃ無いんじゃがの……」
ゲートを使える人間の共通の悩みなのか?
ばあちゃんに足として使われる事に、若干の疑問を持つ爺さん。でもばあちゃんには逆らえない。
……爺さん……強く生きて!
「ああ、それとウチの使用人達も何人か連れて行って良いかい? たまには労ってやらないとねえ」
「もちろん、良いですよ」
「よろしいのですか?メリダ様」
傍に控えていた女中頭のマリーカさんが尋ねた。使用人さん達の福利厚生とかあんまり一般的じゃないのかな?
「シシリーが良いって言ってるんだ、遠慮するもんじゃないよ。それにアンタ達には世話になってるからねえ、たまには温泉にでも入ってゆっくりするのもいいさね」
「左様で御座いますか、それではお言葉に甘えさせて頂きます。若奥様、ありがとうございます」
「わ、若奥様……」
シシリーと婚約してから、ウチの使用人さん達はシシリーの事を若奥様と呼ぶようになった。
その事に慣れないのか、シシリーは顔を赤くしてモジモジしてる。
「はあ、いいなあ……私も若奥様とか呼ばれてみたい」
「マリアの家って伯爵家だよな? 婚約者とかいないんだ?」
「ウチはねえ……結婚相手は自分で見つけるっていうのが家訓だから……」
「何その家訓。貴族にしては珍しくね?」
「過去に、望まない相手と結婚させられそうになったご先祖様がいてね。その人には恋人がいたんだけど、その人と駆け落ちしちゃって……そのご先祖様が有能な女性だったらしくて人材の損失を起こしちゃったから……そんな事になる位なら結婚の強要はしないってなったの」
「そ、そんなドラマが……」
「お陰でウチの人間は大変なのよ。お兄様もお姉様もお相手探しには苦労してるわ」
「そっか……大変なんだな……」
メッシーナ伯爵家のドラマ……何があったんだろう?
そんなメッシーナ家の過去に何があったのか想像していると皆が集まってきた。
「シンお兄ちゃん、おはようございます!」
「おはようメイちゃん。そういえば初めて来たね」
「ハイです! 今まではお兄様に意地悪されて来れなかったです……」
「……そっか……これからはいつでも来て良いからね。オーグは気にしないで良いから。ディスおじさんもしょっちゅう来てるし」
「ハイです!」
今までオーグに騙されてウチに来れなかったらしいからな。
これからはいつでも来れるように言っておいた。
……その内王妃様も来そうな気がするな……まだ会った事は無いけど。
「おはようございます皆様。今日からしばらくお願い致しますわ」
「ああ、おはようエリー。早速だけどこれ」
「何ですの? このマントは?」
「これ、温度調節が出来るマントなんだよ。空を飛んでいくとなると相当体温を奪われるからね。これは必須なんだ」
「温度調節機能付きのマントって……おいくらしましたの?」
「ん? 自分で付与したからね。マント自体はそんなに高くないよ?」
「このマントといい、皆さんの普段着ている戦闘服といい、アルティメット・マジシャンズの装備は異常な物が多いですわ……」
「やっぱりそうだよね! シン君と一緒にいるとその辺麻痺してきちゃうよ」
アリスの言葉に頷く一同。他の家の魔道具事情とか知らないからなあ、一般的な魔道具屋も初めに王都を散策した時以来行ってないし。
「この家も見た事無い魔道具がいっぱいあるしねえ」
「トイレは衝撃的だった。あの後、家のトイレが物足りない」
「それ分かる!」
「あれは衝撃的だったわぁ。売り出す予定は無いの? そしたらウチの宿のトイレ全部アレにするのにぃ」
皆が言っているのは、いわゆる温水洗浄機能付きトイレだ。
アレを皆に披露した時の反応は面白かったな。
「ああ、シン。そのトイレの事なんだけど、トムが例の商会を立ち上げる時に一緒に販売しようって言ってるけど、どうするんだい?」
「結局その商会はどうなったの?」
「シンを代表にして、実際の経営ははシシリーの兄のロイスとアリスの父親に任せる事になったよ」
「わお、身内ばっかり」
「こういう事は身内で始めた方が良いのさ。信頼出来るからね。事業が拡大していけば新たに雇用すれば良いのさ」
「あ! その話聞いたよ! お父さん給料がメッチャ上がるって凄い喜んでた!」
「へえ……俺は初耳だ」
「アンタは金儲けより、やらなきゃいけない事があるだろう?全部を一人でやる必要なんて無いのさ」
前世も雇われ人だったからなあ、経営の事はサッパリ分からん。
「適材適所ね」
「そういう事さね。アンタは人類の為に、キッチリ働きな」
「分かったよばあちゃん」
「それはそうと、トイレはどうするんだい?」
「ああ、トムおじさんにそれで良いって言っといて」
「分かったよ。ホレ、マーリンからも何か無いのかい?」
「ほっほ……全部言われてしもうたわい……」
「じ、じいちゃんの気持ちは分かってるよ!」
「……そうさのお、シンは人類の希望になるんじゃ、頑張っておいで」
「ありがとう、じいちゃん。それじゃあオーグ、オーグの適材適所の交渉の為にそろそろ行こうか」
「ああ、それではメイの事は頼んだぞ?」
「シンお兄ちゃんなら大丈夫ですよ!」
「よし、それではアルティメット・マジシャンズ、出発だ」
『はい!』
「兼、旅行だけどね」
「雰囲気が壊れるような事を言うな」
そうして、アールスハイド王都を飛び立った。
「わあ! 気持ち良いです!」
「メイちゃん、フラフラしてるよ。もうちょっと安定させようか?」
「こうですか?」
「お上手ですよ、メイ姫様」
「エヘヘ!」
「あっちは楽しそうで良いですわね」
「何だ? エリーは楽しくないのか?」
「そんな事ありませんけど……私だけアウグスト様に抱えられているのは申し訳ないというか、恥ずかしいというか……」
音声のバイパスを繋いでいるので、オーグとエリーの会話も聞こえてくる。
反重力によって皆の重力をゼロにしているのは俺だけど、移動する為の風の魔法はチームの皆が各々使っている。
なので割りと自由に空を飛んでいるのだが、エリーはその風の魔法が使えない為、オーグがいわゆるお姫様抱っこをして移動していた。
重力を打ち消してるから、手を引いても良いんだけどね。
わざわざ抱っこしている所を見ると、オーグもそれを望んでいるらしい。
不粋だから言わないけどね。
今回訪問する国は三つ。
スイード王国は帝国の南側、アールスハイドの東側と国境を接しているが、そのスイード王国のさらに東側で帝国の南東部と国境を接しているダーム王国。その北側にあり、帝国の東側に国境を接しているカーナン王国、さらにその北側にあり帝国の北東部に国境を接しているクルト王国。の三つだ。
帝国の北側は海になっている。
今回はスイード王国を素通りし、まずはダーム王国を目指し、そこから順番に国を廻っていく。
スイード王国はこの前行ったし、魔人による被害の復興がある為、観光で寄る訳にはいかないからな。
前回は応援要請もあった事もあり国境は素通りしたが、今回は手順を踏んで国境を超える事にした。
光学迷彩を使って行っても良いんだけど、それだと密入国になるし、オーグがどうやって来たのか問題になる。
そうしてスイード王国との国境を市民証を提示して超え、そのままスイード王国を突っ切りダーム王国に入国した。
「今更ですけど殿下、質問いいですか?」
「何だ? コーナー」
ダーム王国の国境を超え徒歩で王都へ向かっている途中でアリスからオーグへ質問があった。
「魔人達って正直そんなに強くないじゃないですか。私達だけでも討伐出来そうな気がするんですけど……」
アリスの疑問ももっともだ。
正直魔人を討伐するだけなら今の俺達だけでも十分だ。
だけどオーグはそうしない。
「そうだな。まず第一に魔人共がどこに現れるか分からないから、アールスハイドを含めた他の大国と手を結び魔人共が襲撃してきても対抗出来る状況を作っておきたい」
「でも、その為に通信機を提供しましたし、今まさに呼ばれてもすぐに駆け付けられるようにしに行ってるんですよね?」
アリスの質問に乗っかるようにマリアからも質問があった。
結構皆今回の行動に疑問を持ってるみたいだな。
「そうだ。魔人に対抗出来るのは正直私達だけだろうからな」
「では何故?」
「このままだと、アールスハイドが勝ち過ぎるんだ」
勝ち過ぎ。
もしもこのまま、アールスハイドの高等魔法学院生だけで組織された俺達が、魔人を討伐したとする。
その世界を救った武功はあまりにも巨大過ぎる為、他の大国が余計な妬みや危機感を募らせるかもしれない。
そうなると、今度は人間同士の争いが起きるかもしれないのだ。
その為、他の大国にも魔人と戦ったという事実を持たせ、自分達も世界の危機を救ったと思わせないといけない。
何体か魔人を討伐出来れば御の字。
出来なくても魔人の襲撃を防げれば、それで功績になるのだ。
「……アールスハイドが一人勝ちすると他の国が面白くないから、戦功を与える為の連合って事ですか?」
「第一は各国を、世界を守る為だ。そこは履き違えるなよ?ただ、アールスハイドだけでそれをやってしまうと全てが収まった後、火種になる可能性があるという事だ」
「人類存亡の危機なのに! 何で妬んだりするのかな!」
「それが国であり、人間というものだ」
まったく、人類の危機を救ったとしてもそれを妬む輩は必ずいる。面倒な事だな。
オーグの説明を聞いた皆が憤ってる。
「どうしたシン? お前なら『なんだよそれ!?』と憤るかと思っていたんだが」
「ああ……ある程度予想はしてたからな」
「ほう?」
「恐らく魔人達は俺達だけで討伐出来る。出来るけど……魔人の襲撃に怯えてる周辺諸国からは感謝されるだろうけど、直接の脅威がない他の国はどう思うんだろうなって」
「フム、流石だな。そこまで予想していたとは」
「本当ですわね……私はアウグスト様に説明をされても、未だに少し納得がいきませんわ」
「自分も、頭では分かっているのですが……」
「拙者も感情がイマイチ承服しかねるで御座る」
オーグの側に仕えてこういう話はよく聞いているであろうトールとユリウスも微妙な顔をしている。
正直、人類を救ってイチャモン付けられちゃ堪ったもんじゃないけど、そういう可能性がある以上、無視は出来ない。
「まあ、それも含めてエルスとイースとの交渉を行うんだ。悪いようにはしないさ」
そうオーグが言った所でダーム王国の王都に着いた。
「ようこそダーム王国へ、市民証を拝見させて頂けますか?」
「ああ」
「拝見しま……!?」
「話は通っているか?出来ればこの後、お目通り願いたいのだが」
「しょ、少々お待ち下さい!」
オーグの市民証を見た、王都への入場を担当していた兵士さんがそう言って裏へ引っ込み、上司っぽい人を連れて戻ってきた。
王族なのに市民証……まあ、市民証自体、身分証明書の総称なんだけどね。
「ようこそお出で下さいました。どうぞこちらへ」
そう言って、俺達も含めて裏へ通された。
「改めまして、ようこそお出で下さいました。アウグスト殿下」
「ああ、気遣って貰ってすまないな」
「いえ、あの場でアウグスト殿下の素性が割れれば、何かと御面倒でしょうから」
凄く気遣いの出来る人だな。
お忍びで来てるから、アールスハイド王国王太子ってバレると色々と面倒臭いからな。
「それでは、王城に使いを出します。皆様お出でになられますか?」
「いや、今回は私だけでお会いしよう。一応、この護衛二人は連れて行くが」
そう言ってトールとユリウスを指し示す。
二人共そのつもりだったようで、黙って会釈していた。
正直、今のオーグの戦闘力はこの二人を上回っている。
オーグを害するとなると、どんな手練れを連れてくればいいのか分からないレベルだ。
だが、それとこれとは別で、一国の王太子が護衛というかお供を連れていないと、侮られる可能性がある。
その為に護衛を連れていくらしい。
……この三人で城落とせそうな戦力だけどな。
しばらく王都門の警備兵詰所で待っていると、伝令の兵士さんが迎えの馬車を連れて戻ってきた。
「それでは行ってくる。落ち合う場所は何処にする?」
「別に決めなくてもいいっしょ。魔力探査で俺らの場所分かるだろ?」
「それもそうだな。では後程」
「ああ、宿は取っておくよ」
「任せた」
そう言ってオーグはトールとユリウスを連れて馬車に乗り込んで行った。
「さて、オーグが戻って来る前に宿を決めて、街を散策しようか」
「ハイです! ところでダーム王国ってどんな国なんですか?」
「さあ?」
「シン、貴方本当に世間知らずなのねえ……」
「はう……ごめんなさいです……」
「え? ああ! いえ! メイ姫様ならしょうがないですよ! まだ小さいですし、外国の事ですから」
「そうなんですか?」
「そうなの?」
「そうよ。初等学院じゃまだ外国の詳しい事は授業でやらないから。中等学院で教わるのよ」
「……俺、初等学院も中等学院も行って無いわ……」
「あ……ゴメン……」
「いや、いいよ。それで? ダーム王国ってどんな国なんだ?」
何か自分の過去が寂しいものだった気がしてくるから、話を先に進めよう。うん。
「ダーム王国は小さいけど歴史的にはかなり古くて重要な国よ。何せ、イース神聖国が出来る前は創神教の総本山があった所だからね」
「へえ、そうなのか」
「イース神聖国が出来て創神教が国を治めるようになったから総本山もそっちに移っちゃったけどね。今でも当時の大聖堂とかそのまま残ってて観光名所になってるわ」
「へえ、そうだったですか!」
「ええ、それに、殉教者イースもこの国出身で、生家が公開されてるはずですよ」
「そこ行ってみたいです!」
「じゃあ、宿を取ったらイースの生家とか教会とか巡りましょうか」
「ハイです!」
とりあえず、ダームでの行動予定が決まったな。
ダームの聖堂……。
やめよう! これ以上は危険な気がする!
まずは宿を探す。
多少高くてもいいから安全性最優先で探し、王都の中心に近い所にあった宿を取った。
八人の大部屋を二つ。男女別だ。
その後、異空間収納があるので置いておく荷物などない俺達は早速ダームの街に繰り出した。
さすが元創神教の総本山があっただけあって、街の至る所に教会があり、街の雰囲気も穏やかな人が多い印象だな。
「それにしても、元総本山よ? なんで知らないの?」
「ウチで宗教の話とか聞いた事無かったから」
「え? そうなの?」
「ああ、ばあちゃんは現実主義者だから、神様に頼るより自分で何とかしろって人だし、じいちゃんは……」
「マーリン様は?」
「ばあちゃんから、昔『神様上等!』って叫んでたって聞いた事ある」
「……それ、この国では言わない方がいいわよ」
「そうだな、やめとこう」
そんな訳だから、イース神聖国の事も魔法学院での授業で初めて知った。
「あの家だからね。宗教がある事すら知らなかったよ」
「え、じゃあ……結婚式とかどうするんですか?」
と、シシリーが不安そうに尋ねてきた。
「教会でやるんじゃないの?」
「そ、そうですよね! 教会でやりますよね!」
「他の場所でもやるの? 冠婚葬祭は創神教の神子さんが一手に引き受けてるって聞いたけど」
「いえ! 教会でやりましょう! 問題ないです!」
「そ、そう?」
ちなみに創神教では、聖職者の事を総じて神子と呼ぶ。これは創造神を父、もしくは母とし、その子供であるとするからだ。
まあ、創神教内では司教だの枢機卿だの役職名も存在するらしいけどね。
そうこうしてるうちに、イースの生家に着いた。
「ここが……殉教者イースの生家……」
純粋な創神教信者である皆は感激の面持ちでその家を家を見ているが……。
「意外とショボいです!」
「コラ! メイちゃん、そういう事は思ってても言っちゃダメだ」
「はわ! ごめんなさいです……」
「ちょっと……感激に水を差すような事言うの止めてくれる?」
「そうよぉ、雰囲気ぶち壊しよぉ」
「悪い」
「ごめんなさい……」
でも、本当にショボい。まあでも生家なんてこんなもんか。前世で誰だったか有名な人の生家をテレビで見た事があったけど、それも結構ショボかったし。
殉教者イースの生家は博物館になっており、イース縁の品などが置いてあった。
まあ、生活用品とかそんなんばっかだけどね。生家だし。
そんなに大きくないのですぐに一回りし、次は教会を巡る事にした。
いくつか有名な教会があるらしいけど、やはり観光するならと、旧総本山であるダーム大聖堂に行く事にした。
大聖堂に近付くにつれ、どんどん人が多くなってきた。
さすが観光名所だけあって凄い人だな。
「おかしいわね。前に来た時はこんなに人いなかったのに」
「へえ、そうなんだ。じゃあ、なんでこんなに混んでるの?」
「知らないわよ」
「あ、見えてきましたよ」
オリビアの指差した方向に大きな聖堂が見える。その周辺はさらに大勢の人でごった返していた。
「わ! 本当に凄いね!」
「ちょっと、本当に人多過ぎよ。何なのコレ?」
マリアがそう愚痴った時……。
ゴーン……ゴーン……ゴーン……。
大聖堂の鐘が鳴り響いた。そして、大聖堂の入り口が開き、たった今結婚式を挙げた新郎新婦が出てきたのである。
「わあ! これか! 混雑の原因!」
「大聖堂で挙式なんて……どこかの貴族ね。滅多にある事じゃないわ」
「なら、その日に偶然訪れたってことよねぇ」
「素敵……こんなお式を挙げたいなあ……」
「マーク、頑張れ」
「リンさん無茶言わないで下さい! 金銭的にも立場的にも無理ッス!」
ウットリしてる女性陣と、こんな所で挙式したいというオリビアに焦るマーク。
「そういえば、エリーとオーグはどこで式を挙げるんだ?」
「そんなの、アールスハイド大聖堂に決まってますわ」
こっちはアールスハイドにある大聖堂での挙式が決まってるらしい。
「王族はそこで式を挙げるのが伝統なんです。それに相応しい素晴らしい教会ですし」
「王都にある大聖堂も凄いらしいね。行った事ないけど」
「素晴らしいですわよ? このダーム大聖堂に負けず劣らず。ただ、歴史的背景の差でここまでの観光名所にはなってないですけど」
王都に帰ったら行ってみようかな。
シシリーはと見ると、俺と腕を組ながらウットリとその式の様子をみている。
やっぱ、こういう盛大な式に憧れてるのかなあ?
「シシリーもこういう所で結婚式したい?」
「え? いえ、その……やっぱり憧れるというか……羨ましいというか……」
「ふーん……そっか。じゃあ、頑張って世界を救ったらこういう所で式挙げようか?」
「シン君……」
おっと、効果テキメンだったみたいだ。ギュッと抱きついてきて感激してる。
俺はシシリーの頭を撫でながら、その結婚式の様子を見、世界を救う事を改めて誓っていた。
「チッ……リア充が何か言ってるわよ?」
「あたしもそんな事言われてみたいよ!」
「私達は場所がどうこうより、相手から探さないとねぇ」
『はあ……』
独り身の女性陣から溜め息が聞こえる……。
大丈夫だって!
多分……。