カミングアウト
「ちょ……なに言ってんだ、アリス」
びっくりした。
メッチャびっくりした!
まさか今の話からそんなことを言い出すとは思いもよらなかった。
そう思って周りを見てみると、皆意外そうな顔は……していなかった。
え? 皆も薄々疑ってたの?
そう思ってオーグを見ると、真剣な顔をしていた。
「最初は、なにを戯言をと思っていたのだがな……今の話を聞いてしまうと、コーナーの言うことが真実に思えてしまう」
お前もかよ!?
え? ヤバイ、ひょっとして喋りすぎた?
前世の記憶とか関係なしに、ちょっと推理ができれば辿り着くであろう話しかしなかったはずなのに。
「……我が国の調査団も、シン殿の仰るような推論にはまだ達していません。しかし、シン殿の説明を聞くとそれが真実のように思えます」
シャオリンさんは、元々俺が前文明の魔道具に付与されている文字と同じ文字を使っていることを不審に思っていたからなのか、その説を信じている感じがする。
「お前の言う、抑止力としての強力な魔道具の開発。それを空から投下する戦術。各国の取ったであろう行動。どれも、私たちには想像もつかなかったことだ」
オーグはそう言うと、真剣な顔をして俺に言った。
「なあシン。これはとても重要なことだ。前文明という高度に発達した文明が本当に存在し、それが崩壊した。そのことを知った今、私はどうしても知らなければならない」
「知らなければって……なにを?」
「……私たちの世界も、このまま文明が発達していけば、前文明と同じ末路を辿ることになるのかどうかだ」
その言葉に、俺はオーグがなにを懸念しているのか理解した。
今の世界では、人類の手で人類が滅ぶようなことはまずありえない。
それこそ、世界を憎み滅ぼそうとする魔人以外は。
しかし、今後文明が発達していけばどうか。
街や都一つを破壊してしまう兵器が作られないとは限らない。
そうなった場合、前文明と同じ末路を辿らないとも限らない。
そうならないように、それを回避する手段を知っておかなければいけないと考えたんだろう。
「シン。正直に答えてくれ……お前には前文明時代に生きた記憶があるのか?」
「……」
真剣な、揶揄う感情など一切ない眼差し。
オーグは、そんな目で俺を見据えながら、核心を突く質問を投げかけてくる。
俺は……オーグのその視線から目を逸らし周りを見た。
そこにいるのは、俺の友人たち。
俺が巻き込み、人生を変えてしまった人たち。
俺は今まで、この大切な友人たちに真実を打ち明けてこなかった。
それは重大な裏切りなんじゃないだろうか?
前世の記憶という、この世界にはない知識を用いて過分な立場まで手に入れた。
それは、友人たちだけでなく、この世界に住まう人々を欺いていることになりはしないか?
しかし、それを打ち明けたとき、皆から嫌われはしないか……。
だけど……。
そうやって葛藤していると、オーグが更に話しかけてきた。
「シン、頼む。答えてくれ」
その様子は、まさに懇願といった様子だった。
オーグは興味本位で聞いているんじゃない。
この世界の行く末が心配だから聞いているんだ。
それなのに俺は……皆に嫌われるかもしれないと、そればかりを考えていた。
なんて……なんて情けないんだ、俺は。
オーグの真剣な眼差しに、俺は……腹を括った。
「前文明の記憶は……俺にはないよ」
俺がそう言った瞬間、オーグは残念そうな顔をした。
「そうか……残念だ」
実際声にも出した。
その残念だという言葉は、俺が前文明の記憶を持っていないことが残念だったのか、正直に答えてくれないことに対してなのかは分からない。
ひょっとしたら失望されたかもしれない。
だから、俺は……。
「前文明の記憶はないよ。そのかわり……」
言うぞ。
「……違う世界で生きた記憶を持ってる」
俺は、最大の秘密をカミングアウトした。
ついに、打ち明けました。




