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賢者の孫  作者: 吉岡剛
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真犯人と対峙しました

 研究会の初日が終わったので皆各々家に帰る。歩いて帰る者、乗り合い馬車に乗って帰る者、王都は広いので家から直接通えず学院が用意した寮に戻る者。


 Sクラスのクラスメイトに寮生活者はいないので皆で学院を出る。


「そうだマーク、今から君の家に行ってもいいか?」

「え? ウチッスか?」

「うん。さっき言ってた武器の新調の事でさ、何が出来て何が出来ないのか確認したいからさ」

「ああ、いいッスよ。このまま行きますか?」

「そうだな、シシリー、マリア、マークん家に寄ってもいいか?」

「いいですよ」

「私もいいよ。マークの店も見てみたい」

「僕も行っていいかい?」


 珍しくトニーが一緒に行きたいと言い出した。


「やっぱ今でもビーン工房は気になるのか?」

「そうだねえ、今は剣を振り回す事は無いけど、やっぱり剣を見るとワクワクするからねえ」

「騎士になるのが嫌だったんじゃないのか?」

「騎士養成士官学院が嫌なのであって、騎士や剣士が嫌な訳じゃないよ」

「それって……ああ、男女比……」

「あそこは僕にとっての地獄だからねえ」


 入学して早々トニーはしょっちゅう女の子と一緒にいるからなあ、女の子が少ない環境が辛いのか。今日も珍しいと言ったのは女の子と一緒に帰らなかったからだ、それほどビーン工房は魅力的らしい。


「なら私も行こうか」

「殿下!」

「護衛の二人にシンもいるんだ、そうそう危険な事など無いさ」

「そういう問題では……」

「それに父上もしょっちゅうシンの家に行ってるじゃないか」

「陛下……」


 オーグが何かフラグ臭い事を言いながら付いてくる事になった。


「結構な人数になったな」

「いいじゃない。こうやって皆で街をブラブラするのも楽しいわ」

「そうですね、楽しいです」


 マーク、オリビア、俺、シシリー、マリア、トニー、オーグ、トール、ユリウスの総勢九人でマークの家に向かう。


 ぞろぞろと歩き出すと男性陣と女性陣とオーグ陣に分かれた。女性陣はキャイキャイ言いながら歩いてる。楽しそうだな。


「それでウォルフォード君、どういう剣を考えてるんスか?」

「そうだなあ、薄い刃ってのは大前提なんだけど、折れやすいからなあ。すぐに替えられるようにしたいんだけど、沢山用意するとお金が掛かるから……」

「賢者様の孫ならお金に困る事なんて無いんじゃないのかい?」

「お小遣いしか貰ってないからね。自分で稼いで無いからそんなに使えないんだよ」

「へえ、意外とちゃんとしてるんだねえ」

「意外って……」


 皆どういう目で俺を見てるんだ。


「でもシンほど強いなら魔物でも狩ってアルバイトすればいいのに」

「魔物狩りのバイト?」

「あれ、知らないかい? 魔物ハンター協会は別に正規雇用をしてる訳じゃない。誰だって魔物の討伐記録さえ見せれば報償金を貰えるんだよ」

「そうなのか……」

「そういう所は世間知らずなんだねえ。皆当たり前のように知ってるよ」


 魔物の討伐がお金になるのは聞いてたけど、ちゃんと登録とかしないと出来ないと思ってた。そんなお手軽なのか。


 そんな話をしてるとずっと考えてたマークから提案された。


「ウォルフォード君、それなら持ち手まで一体型の薄い剣を大量に鋳型で造るってのはどうッスか? 柄の加工をしないで済むし、鋳型で造ればコストも抑えられるッス」

「ああ、それは俺も考えたんだけど、柄まで一体型だと振動がね……」

「あ、そうか。刃を振動させて使うんスもんね」

「そう、持ってられないんだ」


 どうしようか? そうマークと相談しているとトニーから提案があった。


「じゃあ、刃を簡単に交換できるようにすればいいんじゃないのかい?」

「「それだ!!」」


 大きな声を出してしまったので、皆がこちらを見た。


「どうしたんだ?」

「いや、新しい武器のアイデアがね、トニーの提案で思い付いたんだ」

「新しい武器……」

「そう、刃は薄くて折れやすくてもいい。要はそれを簡単に交換出来ればコストカットが出来るんだ」

「後は、どうやって交換するかッスね」

「出来ればワンタッチで交換出来ればいいんだけど……」

「それはそれで開発にコストが掛かるッスよ」

「普通、刃と柄を繋げる時はブレないようにしっかり付けるけど、元々振動してる事が前提の武器だからねえ、外れなければ良いなら装着も簡単でいいんじゃないのかい?」

「「それだ!!」」


 いやぁ、今日はトニーが一緒にいてくれて助かったよ。これで新しいバイブレーションソードの目処が立ったよ。これは開発が楽しみだな。


「……まあ、これくらいなら特に問題は無いか」


 オーグがそう言う。いつの間にか俺のお目付け役みたいになってるな。


「早く工房に行きましょう! 試してみたいアイデアが出てきて止まんないッス!」

「ああ、そうだね」

「ねえシン。シン達が工房に行ってる間、私達はオリビアの所にいてもいい?」

「オリビアさんともっとお話したいです」

「うう……お手柔らかにお願いします……」


 シシリーとマリアに色々質問責めにあったんだろう、オリビアがグッタリしてた。


「いいよ。工房にいてもつまらないかもしれないから悪いと思ってたし」


 男性陣とオーグ陣は工房に、女性陣はオリビアの店に行く事になり、目的地に急ぐ。途中、大きな敷地の建物の横を通る。


「ここは何の建物なんだ?」

「ああ、ここは警備隊の詰所ッスね。そこの建物が練兵場で奥に詰所があるッス」

「へえ、そうなん……」


 ドンッッ!!


 その練兵場の壁が爆発した。


「キャアアアア!!!」


 その音に女性陣が悲鳴を上げる。


「な、なんだ!!?」

「「殿下!」」


 護衛の二人がオーグを庇うように前に出る。


「何だ? 練兵場で事故でもあったのか?」

「いえ、練兵場の壁には学院の練習場と同じように魔力障壁が張られてる筈です……」

「それをブチ破る程の勢いで魔法を放ったって事か……」


 ヤバイ感じがするな。そうすると、練兵場のなかから巨大な魔力が出てきた。


「これは不味いぞ! 皆この建物から離れろ!!」

 

 そう言って皆を離れさせようとした時、俺の後ろの壁が爆発した。


「どぅわ! 何だ! こりゃ!」


 中の魔力がヤバそうだったので魔力障壁を張っていて良かった。思わず叫んでしまったが、ダメージは無い。


 何があったのかと、壊れた壁から中を覗くと、一人を騎士、兵士、魔法使い、警備隊員が大勢で取り囲んでいた。


「おお!? 何の騒ぎだこりゃ!?」


 何とも物々しい雰囲気だ。一人を囲むにしては過剰戦力過ぎる。巨大な魔力といい、あれは一体誰だ?そう思って囲まれている奴を見ると……。


「両目に眼帯……」


 あれは、確かオーグ達が言っていた中等学院の教師の特徴と同じだ。


「オーグ、あれって……」

「ああ、間違いない。この前言っていた胡散臭い中等学院の教師オリバー=シュトロームだ」

「おや? これはこれは、アウグスト殿下にシン=ウォルフォード君ではないですか」


 俺の事を知っている? 名前はともかく、顔は近所の人以外にはまだ知られていない筈だ。そもそも彼は目が見えない筈では?


「お逃げ下さいアウグスト殿下! 奴は魔人騒動の真犯人です!!」


 魔人騒動の真犯人? という事は……。


「お前がカートを操っていた奴か?」

「そうですよ。いあや、面白いほど思い通りに踊ってくれましたねえ」

「そうかよ……」


 胸糞悪いな、コイツ。


「おや、貴方も私が許せませんか?」

「ああ、許せないね。お前のお陰で皆がどんだけ迷惑を被ったと思ってんだ」


 そう言いながら魔力を高める。


「ここでの実験はもう終わったので失礼させて頂きたいんですけどねえ」

「お前を放置してるとまた迷惑を掛けられそうだからな。おとなしく捕まってろよ!」


 そうしてバイブレーションソードを取りだし、炎の矢を放つ。


「おっと、これはマズイですね」


 そう言うと魔力障壁を張った。


 ドン!!


 炎の矢が魔力障壁に当たり弾ける。しかし障壁は破れなかったみたいだ。


「これは危ないですね……もう少し障壁が薄かったら抜けてましたね」


 そう言って俺の方を見る。


「なっ……」


 ずっと同じ所にいる訳ねえだろうが!


 あの魔力の大きさから防がれると予想した俺は魔法を放った後、シュトロームの後ろに回っていた。


 バイブレーションソードを横に振り抜く。


「クッ!」


 シュトロームは魔力を関知したのか勘なのか、咄嗟にその場を離れバイブレーションソードの剣筋から逃れる。


「危ないですね。その剣、魔道具ですね?」

「さあね」


 俺はシュトロームの質問に答えず、そのままシュトロームに突っ込む。


「やはり、君は危険ですね」


 そう言って無詠唱で魔法を放った。その魔法を横っ飛びで避ける。後ろで爆発が起こっているが、構わずバイブレーションソードを再度振る。


「っと! やはりその剣は厄介ですね」


 今度は後ろに飛びバイブレーションソードを避ける。


「アンタ魔法使いだろ? 魔法より物理攻撃の方が防御しにくいよな!」


 そう言って地面を足で踏む。すると地面から石の槍が飛び出しシュトロームに向かって突き出された。


「おおっと、これは凄い」

 

 そう言いながら上空に飛び上がる。


「そこなら無防備だろ!」


 まだ空中にいるシュトロームに向かって幅の広い炎の魔法を放った。これなら身を捩ったって避けられねえだろ。


「なっ!」


 案の定シュトロームは驚いてる。慌てて魔力障壁を展開するが発動が甘い。これならダメージが通っただろ。


 炎がシュトロームを包み、落ちて来るだろうと予想したが、そうはならなかった。


「宙に浮かぶとか、反則だと思うんですけど」


 シュトロームは宙に浮いていた。浮遊魔法? そんなのさすがに使えない。しかし、シュトロームは実際宙に浮いている。こりゃとんでもないな。


「ふう、今のはさすがに焦りましたよ。ローブが焦げてしまった」

「身体にダメージは無しか」

「イヤイヤ、多少はダメージを受けましたよ? さすがは英雄の孫、魔人を討伐するだけの事はある」

「そりゃどう……もっ!」


 前回の反省から準備していたジェットブーツを起動させ、シュトロームに向かって飛び上がった。


「何だと!?」

「おらあぁ!!」


 もう一度バイブレーションソードを振るう。今度は切っ先がシュトロームの顔面をかすった。クソ、かすっただけか!


「グアッ!!」


 傷付けられないと思っていたのか大袈裟に仰け反った。


「おらっ!もう一丁!」


 この隙に今度は風の刃を創り出す。


 無数の風の刃がシュトロームを襲う。風の刃はシュトロームの身体に次々と切り傷を作り、ローブや眼帯にも傷を付けていく。


「調子に……のるなあぁぁぁ!!!」

「うおっ!」


 急に魔力を解放し、その圧力で空中にいた俺はバランスを崩す。咄嗟にジェットブーツを起動し、体勢を整えて着地した。


 空中に浮いたままのシュトロームは魔力を解放したままこちらを見て(・・)いた。


 バイブレーションソードの一撃と風の刃で眼帯に傷が付いていたんだろう。魔力の解放で傷の付いた眼帯は、千切れて顔から外れていた。その目には傷など無い。そこには……。


「赤い……目……?」


 赤い目を見開き、こちらを見ているシュトロームがいた。解放した魔力も禍々しく、明らかに魔物の特徴を要していた。


「やってくれましたねえ、ウォルフォード君。出来れば正体を隠したまま去りたかったんですけどねえ」

「嘘だろ……? 完全に理性を保ったままの魔人?」


 周りの皆も衝撃を受けている。それはそうだろう、魔人に理性は無い。それが皆の知っている知識だ。それでも過去とんでもない被害を出した。それが理性を保ったままとなるとどうなるのか……


「理性を保ったままって事は、好きに暴れまわるって訳じゃなさそうだな」

「フフ、無秩序に力を使うだけなんてすぐに討伐されてしまうでしょう?そんな愚かな事はしませんよ。しかし魔人化していると分かると討伐に向かって来られる。だから正体を隠したかったんですがねえ」

「なら、特に人間に害は与えないのか?」

「フフフ、アハハハハハ!!!」


 シュトロームは俺の言葉を聞いて高笑いを始めた。


「何を期待しているのですか? 君は! 人間なんて心底どうでもいい存在ですよ!!」

「何だと……!」

「この身体になってからは人間の事などどうでもいい存在に成り下がったのですよ! 利用しようが! 騙そうが! 殺そうが! 何とも思わなくなったんですよ!!」


 狂ってる。コイツは真に魔人だ。人類の敵になる存在だ。いけない。コイツはここで仕留めなきゃいけない!


「オオオオ!!」


 雄叫びを上げて飛び掛かる。


「またそれですか?」


 シュトロームが魔法で迎撃しようとするが、俺はジェットブーツを起動して急停止し、そのまま後ろに飛びシュトロームから距離を取った。


「な、何?」


 肩透かしを喰らったようなシュトロームが怪訝な顔をこちらに向けるが、俺の魔法は既に完成している。


「喰らえええええ!!!」

「何だと!?」


 上空・・から太陽光を集め熱線になるように収束したものをシュトロームに向かって撃ち下ろす。俺に向かって魔法を放とうとしていたシュトロームはまともに上空からの光を受けた。


「グウオアアァァァァ!!!」


 シュトロームが魔法を喰らって絶叫している。今度は効いたか?


 すると、身体のあちこちが焼け爛れたシュトロームが現れた。


「オノレ……よくも、よくもここまでやってくれましたねえ……」

「チッ! あれでも駄目か」

「イエイエ……効きましたよぉ? 私の目的が済んだら、次は君を殺したくなる位にはねっ!」


 そう言って自分・・の周囲に爆発の魔法を放つ。爆炎にシュトロームの身体が隠され、皆が一瞬シュトロームを見失った。


「それでは、ウォルフォード君、オルトさんとその他の皆さん。そろそろ本当に失礼しますよ」


 シュトロームの声が上から聞こえた。見上げると、身体を修復しながら空中に佇む奴がいた。


「貴様! 降りてこい!」


 壮年の騎士のおじさんが叫んでる。しかし、シュトロームはそれに取り合わない。


「態々捕まりに戻る馬鹿がいますか。それでは皆さん、またお会いしましょう」


 そう言ってさらに高度を上げた。


「クソッ!」


 ジェットブーツを起動させて上空に飛び上がるが遅かった。既にシュトロームはさらに速度を上げてこの場を離れて行った。


 上空からジェットブーツで調整しながら地面に降り立つ。


「チクショウ! 逃げられた!」

「総員! 直ちに後を追え!! それと王都中に警備の人間を配置! 警備隊、軍部、共に協力して警戒に当たれ! 但し、絶対に一人で行動するな! 相手は魔人だという事を忘れるな!!」

『はっ!!』


 さっきの騎士のおじさんが周りに居た騎士達に指示を出す。指示を出した後、チョイ悪な感じのおじさんとこちらに来て膝をついた。ええ?何で?


「「御無沙汰しております、アウグスト殿下」」


 いつの間にかオーグが俺の側に来ていた。いつの間に、他の面々もいた。っていうか……


「また逃げてなかったのか?」

「シン君! 怪我はしてませんか!?」

「大丈夫、大丈夫だから!」


 またシシリーに身体をペタペタ触られながら、オーグに視線を向ける。


「ああ……知っている人間だったのもあるが……まさか魔人だとは思いもしなかったからな。魔人だと分かった時は……驚きの方が勝って逃げる事など頭に無かった」

「だとしても危のうございます。そもそも何故こんな所にいらっしゃるのですか?」

「何だ、学院帰りに友人と街を歩いていただけだぞ?」

「お立場をお考え下さい」

「トールにユリウス、それにシンがいるんだ。大丈夫だろ?」

「そういう問題では……」

「堅ぇ事言うなよドミニク。殿下の仰る通りだよ。護衛の二人に彼がいる。見たろ? さっきの。魔人を撃退しちまったじゃねえか」


 ローブを着崩したおじさんが騎士のおじさんにそう言う。


「撃退というより逃亡させてしまいましたけどね……」

「そんな事ねえよ! 確かに最後は逃げられたが、君がいなかったら俺たちは全滅してたかもしれん。ありがとうよ、シン=ウォルフォード君」

「礼がまだだったな、ありがとうウォルフォード君」


 二人から頭を下げられる。


「いえいえ、アイツのせいで散々迷惑掛けられたんで、個人的に報復したかっただけですから気にしないで下さい」

「それでもだよ。俺達が助かった事は間違いないねえ」

「その通りだよ。ありがとう」

「それにしても噂通りスゲエ強えな、さすがはマーリン様のお孫さんだ」

「それに剣の腕も凄い。ミッシェル様に聞いていた通りだ」

「ミッシェルさんを知ってるんですか?」

「ああ、自己紹介が遅れたな、私はドミニク=ガストール、ミッシェル様の後任の騎士団総長でね、君の事はミッシェル様から色々聞いてたんだよ。凄い魔法を使えるのに武術にも才能があり鍛えるのが楽しい少年がいる。将来が非常に楽しみだと」

「そうだったんですか」


 ミッシェルさんの後任の人だったのか。それにしても何で言い触らすんだミッシェルさん……。


「俺はルーパー=オルグラン、魔法師団の団長だ」


 チョイ悪オヤジは魔法師団の団長だった。ジークにーちゃんといい、魔法師団はこんなんばっかか?


「俺もジークフリードに聞いていたがな。常識はずれな魔法を使う子だと。最後の、ありゃ何だ? 上空からスゲエ熱量の光が降ってきたぞ、見てみろ」


 そう言われて皆が最後に魔法を撃ち下ろした場所を見る。


「見ろ、あまりの高熱で地面が一部ガラス化してやがる。どんだけ高熱だったんだよ」


 それを見ている皆が黙り込む。


「あれは、何をしたんだ? ウォルフォード君」

「何って、太陽光を収束して熱線にしたものを撃ち込んだだけですよ」

「太陽光?何でそれであんな威力になる?」


 あ、それも知らないか。


「太陽の光って一種類だけじゃ無いんですよ、色んな種類の光のうち熱を感じる光を集めるイメージをしたんです」

「……スマン、俺にはよく理解出来なかった」

「心配するなオルグラン、ここにいる皆が理解出来てない。聞けば賢者殿にも理解出来なかった魔法があると言う話だからな。コイツの頭の中はオカシイんだ」

「それはちょっと非道くね!?」

「はぁ、殿下がそう仰るなら気にしない事にします。しかし……」

「これだけの魔法でも仕留め切れなかったか……」


 騎士団と魔法師団のトップが黙り込む。


「そういえば、何か目的があるみたいな事を言っていましたね」

「だな、一体何を企んでいやがる!」

「こうなった以上、我々は既に後手を踏んでいるな。警戒の目を広げるしか今のところ手はあるまい」


 こうなるとシュトロームを逃がしてしまった事が悔やまれる。でもあれ以上の魔法は周囲に被害を出すから使えなかったんだよな。あの魔法を使ったのも上空からなら不意を突けるのと周りに被害を出さないように考えた結果だし。でも、その結果もっと大きな被害を出すかもしれない……。


「ああ! もう! もっと強い魔法を使っても仕留めとくべきだった!」

「あれ以上って……」

「あれが全力じゃなかったのか……!」


 もう起こった事はしょうがない。次にシュトロームが現れたら絶対に仕留める!


 そう心に決めた時に思い付いた。


「ところで、こんだけ大事になったら叙勲式なんてやってる場合じゃないよな!」


 オーグに向かって言う。


「こんな事公表出来るか。叙勲式は予定通り行わないと国民が納得しない」


 また箝口令か……。

 

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