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賢者の孫  作者: 吉岡剛
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予定外の同行者

 オーグたちは落ちてくる翼竜たちを必死になって避けていた。


 とりあえず誰にも当たらなかったことに安堵しながら地上におりると、皆から白い目で見られた。


「あーっと……ゴメン」

「ゴメンじゃないわよ! 戦闘中だったらどうするつもりよ!」


 責めるような視線に耐えかねて謝ると、マリアからごもっともな指摘を受けた。


「まったく。メッシーナの言うとおりだぞ。気を付けろ」


 先にマリアがキレちゃったからか、オーグは淡々と苦言を吐いた。


「いやあ……空中戦って初めてだったから、つい迎撃するのに夢中になっちゃって……」


 俺がそう言うと、リンが変な食い付き方をした。


「ウォルフォード君だけ空中戦してズルい。次は私がやりたい」

「いや……別に抜け駆けしたわけじゃないからね?」


 空中にいたら襲われたから迎撃しただけで。


「あたしも! あたしもやりたい!」

「いや、だから……」

「ところで、砦の兵士たちの方はどうだった?」


 アリスまでリンに便乗しようとしたところで、うまくオーグが話題を変えてくれた。


 ちょうどいいや、オーグの話に乗っかってアリスとリンの話は有耶無耶にしてしまおう。


「あっちは問題無さそうだったよ。呪符を巻いた矢で牽制して剣で仕留めてた。あれなら問題なく倒せそうだ」


 こっちの方は、もう周囲に竜の反応がないことから狩り尽くしたんだろう。


 討伐が終わっててホッとしていたところに、空から翼竜が降ってきたと。


 いやあ、本当に申し訳ないことしたな。


 そうしてオーグと話していると、シシリーから声をかけられた。


「あの、ここでお喋りしているのもなんなので、リーファンさんたちのお手伝いに行きませんか?」

「そうだな。もしかしたら他にも回らないといけない村があるかもしれん。早急に終わらせるとするか」


 と、オーグが言った時だった。


「ん? 通信……マークか」


 無線通信機の着信を告げるベルが鳴った。


 このタイミングでかかってくるとしたらマークたちだろう。


 そう思って通信機に出た。


「はい。こちらシン」

『あ、ウォルフォード君ッスか? マークッス』

「ああ、そっちはもういいのか?」

『はいッス。そのことで色々と話があるッスけど、とりあえず合流してから話すッス』

「分かった。迎えに行くけど、今どこにいる?」

『ミン家の屋敷まで戻ってきたとこッス』

「分かった。じゃあ、そっち行くわ」

『了解ッス』


 マークとの通信を終えた俺は、オーグに向き直った。


「そういうわけで、俺はマークとオリビアを迎えに行ってくるわ。オーグたちは先にリーファンさんたちのヘルプに入っといて」

「ああ、分かった」


 オーグの返事を聞いた俺は、すぐにミン家の玄関前にゲートを繋げた。


 着いたミン家の玄関前には、マークとオリビア。それにシャオリンさんと姉のスイランさん義兄のユンハさん夫婦と使用人さんたちがいた。


 あと、ナバルさんたちも。


 シャオリンさん以外のミン家の人たちは、突然俺が玄関前に現れたことに非常に驚いている。


「ア、アノ! コレハ?」


 スイランさんは、まだ体調が万全でないのにこちらに詰め寄ってきた。


 それをシャオリンさんが必死に宥めている。


 まあ……竜の討伐に向かったはずなのに、すぐに連絡がつくわ、すぐ現れるわ。


 そら商人としては放っておけないわな。


 実際、ゲートを見慣れているナバルさんたちも分かるといった感じで頷いてるし。


 やがてスイランさんを宥めることに成功したシャオリンさんが近寄ってきた。


「姉がすみません……この魔法があれば、物流革命が起こせると興奮してしまって……」

「あー、まあ、それは……」


 やっぱり、スイランさんもそう考えたか。


「姉には、この魔法を使えるのは西方世界でもシン殿たちだけなのと、そのために彼らを拘束することはできないって伝えましたから」

「お手数をかけてすみません」

「いえいえ! これは、ただの姉の我が儘ですから。どうかシン殿はおきになさらず」

「でも……」


 シャオリンさんと謝り合戦をしていると、マークから呆れたような声が聞こえてきた。


「ウォルフォード君。とりあえず出発しないッスか?」

「そうですよ。早く現地に行かないとまずいのでは?」


 あ、そうだった。


 というか、あっちはほぼ終わりそうだったから、つい気が抜けてた。


 マークたちに指摘されたので、早速ゲートを潜り直そうとしたら、シャオリンさんから待ったがかかった。


「あの……私も付いていってはいけませんか?」

「シャオリンさんも?」


 シャオリンの申し出に、俺は思わずマークとオリビアの顔を見た。


 二人とも困った顔をしている。


 とりあえず、なんでそんなことを言い出したのか聞いてみるか。


「ええっと……竜がいるんですけど……なんでまた?」

「竜の暴走が、一ヶ所で終わるとは思えません」


 あー、確かに俺たちも同じ考えだった。


 でも、それとシャオリンさんが付いてくるのになんの関係が?


「竜の生息地というのは、ほぼ決まっています。シン殿が行った村にも竜からの防衛設備がありませんでしたか?」

「ああ、あったね」

「それは、竜の生息地が近くにあるからです。そして、そういった設備のある村は他にもあります」

「でも、それはリーファンさんも知っているのでは?」

「リーファンの仕事は私の護衛です。いくつかは知っているかもしれませんが、全てではないはずです」

「つまり……シャオリンさんが行かないと、正確な数は分からないと……」

「そういうことです」


 ふむ。


 それは確かに重要な情報だ。


 正確な数と場所が分からないと、闇雲に飛び回って時間を浪費した挙げ句に漏れが出るかもしれない。


 そうなるよりは……。


「シャオリンさん」

「はい」

「言うまでもないかもしれませんが、竜は非常に危険です。さっき行った村でも、食い散らかされた人間の残骸が散らばっていました」


 俺がそう言うと、シャオリンさんは一瞬恐怖に顔を歪ませた。


 だが、すぐに顔を引き締めて言った。


「ミン家は竜の革を取り扱う商家です。竜の危険性は重々承知しています。危ないことはしませんので、どうか連れていって下さい!」


 シャオリンさんはそう言うと、深々と頭を下げた。


 危険は承知の上か。


 正直、案内があるのは有難い。


 なら……。


「現地に着いたら、すぐに防衛施設に送ります。そこから一歩も出ないこと。良いですか?」

「それじゃあ!」

「ええ。一緒に行きましょう」

「はい!」


 マークとオリビアだけを連れてくるはずだったんだけどな。


 まあ、こういう事情ならしょうがないだろう。


 そう思ってゲートを砦の上に開き直して潜ろうとすると、シャオリンさんがポツリと呟いた。


「それに……気になる噂もありますから」


 気になる噂?


 なんだろう。


 そういえば、マークからの報告もまだ聞いてないし、向こうに着いたら聞いてみるか。


 こうして俺たちは、ミン家を後にした。


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別作品、始めました


魔法少女と呼ばないで
― 新着の感想 ―
[気になる点] シルバー君は大人しく待っているのでしょうか
[一言] そういえば魔物化した竜は? 噂とはハオの兵器のことでしょか??
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