シャオリンさんのお姉さん
アーロンさんに拉致され、空飛ぶ乗り物の設計についての打ち合わせが終わり、俺はようやく別室に集まっていた皆のもとに戻ってこれた。
そこには、まだシャオリンさんとリーファンさんがいた。
「はあ……ったく、強引なんだよ」
「お疲れだったな。それで、どういった設計にすることにしたんだ?」
「ああ、それは……」
まず、空を飛ぶってことで、かなり高速移動をすることになるだろうから、形状は流線形にすることにした。
離着陸は浮遊魔法を使っての垂直離着陸になるので、ランディングに必要なタイヤはなし。
代わりに、地面に立つための足を付けることになった。
そして、姿勢維持のために翼を付けることになり、その翼に上下に動くフラップを付けることで方向転換ができるようにする。
結果、昔の飛行艇みたいな形になった。
それを、絵で書きながらオーグに説明する。
「なるほどな。それで、完成にはどれくらいかかると言っていた?」
「大体三か月くらいだって」
「そんなに早くか」
「基本的に魔法で移動するからね。とにかく突貫で作って、細かいバランスは今後の課題にするってさ」
「うむ。それで移動手段についてはそれでいいとしてだ、もう一つの方はどうする?」
「それなんだけど」
俺はそう言ったあと、シシリーを見た。
「シシリー」
「はい?」
シシリーはそう言って首を傾げた。
可愛い。
じゃなくて!
「悪いんだけど、これからしばらく特訓するよ」
「特訓……ですか?」
「ああ。ひょっとしたら、すごくキツイかもしれない。でも、シャオリンさんのお姉さんを助けるにはシシリーがその治療方法を身に着けないといけない。……やるか?」
これからする特訓は、体力的なことだけじゃなく精神的にもキツイ特訓になると思う。
それでも、やってもらわないとシャオリンさんのお姉さんは助けられない。
その意思があるかどうかをシシリーに聞いた。
するとシシリーは、強い意志を込めた目で俺を見た。
「やります。シャオリンさんのためにも、必ず特訓を受けて治療方法を会得してみせます!」
「聖女様……」
シシリーの強い決意に、シャオリンさんはまた涙目になってる。
相当お姉さんのことが大事なんだな。
「ウォルフォード殿……あっと、聖女様もウォルフォードでしたね。えっと……」
「俺のことはシンでいいですよ」
「私も、シシリーの方がいいです。聖女様と言われるのは恥ずかしいので……」
シシリーも照れながらそう言うと、シャオリンさんは感動したという面持ちで俺たちを見た。
「シン殿、シシリー殿、私たちのためにありがとうございます。姉が助かれば、まだ我が商会は立ち直ることができるかもしれません」
「全力でことに向かいますけど、まだ助かると決まった訳じゃないですよ?」
「それでも、わずかでも望みがあるなら……」
シャオリンさんは、どうしてもお姉さんを完治させたいみたいだな。
家族のことだし、必死になるのは分かる。
けど、それと商会とどう関係があるんんだろうか?
「あの、一つ聞いてもいいですか? お姉さんの病気を治したいというのは妹として分かりますけど、それと商会の存続とどう関係が……」
俺がそう訊ねると、シャオリンさんは苦々しい顔をしながら話し出した。
「……姉は、ウチの商会の会頭です。その姉が倒れたことから、全ては始まったのです」
活動報告にお知らせがあります。