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賢者の孫  作者: 吉岡剛
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尋問しました

「破滅を望んでいる……ですか?」


 ミランダの治療を終え、隣に戻ってきたシシリーが戸惑いの声をあげる。


「別に確信があって言ったわけじゃないんだけど……」


 オーグたちは前回の戦いを踏まえて、膠着状態を打開策するための案を考えた。


 当然、魔人たちも考えてくると思っていたんだけど……。


「魔人たちは、特に打開策を考えるでもなく向かってきてる。まあ、まさかこんなに一方的な展開になるとは予想してなかっただろうけど……」

「まるで、倒されることを望んでるみたい……ですか?」

「ああ、俺の目にはそう見える」


 あの時シュトロームは、世界を滅ぼすと宣言した。


 それを考えると、決して多くは無い魔人という手駒をこんなに簡単に失うようなことをするとも思えない。


「くそっ、一体何を考えてる!?」


 順調に魔人を討伐できていることは喜ばしい。


 けど、シュトロームの意図が全く読めない。


「あっ! シン君!」


 魔人たちの不可解な行動に頭を悩ませていると、魔人の一体がこちらに向かってくるのが見えた。


「シン=ウォルフォード! その首、もらった!!」

「……こいつもか」


 誰かと連携をするわけでもなく、ただ一人で突っ込んできた。


「はあっ!」


 真正面から魔人が魔法を放ってきたので、それを魔力障壁によって防ぐ。


「後ろががら空きだぜっ!」


 おっと、やっぱりもう一人後ろにいたか。


「空いてないですよ!」

「なに!?」


 後ろから襲ってきた魔人の魔法は、シシリーの魔力障壁によって阻まれた。


 魔人は二人で襲ってきたけど、こっちもシシリーと二人でいるんだ。


 そうそう隙なんてできるはずもない。


「シシリー、悪いけどその魔人を抑えておいて」

「分かりました!」

「とりあえず……」

「なっ!?」


 まず、目の前にいる魔人を討伐する。


「シッ!」

「くっ! 剣も使うとは厄介な!」


 バイブレーションソードの一振りは、ギリギリ魔人に避けられた。


 慌てて避けたのだろう、体勢が崩れている。


「はあっ!」


 そこに、魔法を叩きこんだ。


「ぐっ! ぐおおっ!」


 その魔法も、魔人が張った魔力障壁によって阻まれるけど……。


「もう対処できないだろ?」

「あ……」


 魔人が、必死に魔力障壁で俺の魔法を防いでいるうちに魔人に肉薄。


 再度バイブレーションソードを振った。


 魔力障壁では防げないバイブレーションソードの一撃に、魔人はあっさりと切り裂かれた。


「こ、こんな簡単に……」


 もう一人の方の魔人が驚愕している隙に、そちらに移動。


 そして。


「ぐああっ!」


 魔人の腕を取って投げ飛ばし、地面に組み伏せた。


「き、貴様!」

「おい、お前たちの目的はなんだ? なぜこんな無意味な襲撃をしてくる?」


 シュトロームの目的が分からず悩んでいたところに、都合よく魔人が襲撃を仕掛けてきたので、俺は直接聞いてみることにした。


 まあ、素直に吐くとは思ってないけどね。


「ああ!? お前たちを殺すことが目的に決まってんだろうが!」

「その結果がこれか? お粗末なもんだな」

「うるせえっ!」

「お前たちはシュトロームから策を与えられていないのか? こんな無意味な襲撃になにがある?」

「知るかよ! シュトローム様の深いお考えなど、俺たち下っ端に推し量ることなどできねえよ!」

「それじゃあ……本当に何も策を与えられていないのか……」


 実はなにか策を与えられていて、俺たちはそれに踊らされているだけなのかと思ったけど、どうもそうじゃないらしい。


 でもこれじゃあ……。


「ただの捨て駒じゃないか……」


 とりあえず戦ってこいと言われて無残に討伐される。


 いくらシュトロームの命令とはいえ、自分の部下にこんな……。


 そう思ったときだった。 


「お前らなんかに……お前らみたいな恵まれたガキなんかに……」

「お、おい……」


 組み伏せていた魔人が大量の魔力を集め始めた。


「俺たちの気持ちが分かるかああっ!!」

「くそっ! まさか!?」

「うああああっ!!」


 コイツ!?


 魔力を暴走させて自爆する気か!?


「させるかっ!!」


 俺は慌てて魔人の拘束を解き、バイブレーションソードで魔人を切り裂いた。


「がはっ!」


 それと同時に、魔人が集めていた魔力が霧散していった。


 危ねえ……もうちょっとで大爆発を起こすことだった……。


「おまえら……なんかに……」


 魔人はそう呟くと、そのまま絶命してしまった。


 さっきの問答……結局はっきりとは言わなかったけど、俺は確信した。


 コイツらは、シュトロームからろくな策は与えられていない。


 ただ、シュトロームの命令だから、俺たちに戦いを挑んできた。


 その命令はまるで……。


 それなのに、その命令に一片の疑いも持たず、実行に移している……。


「なんなんだよ、コイツら……」

「シン君! 大丈夫ですか!?」


 シュトロームと魔人たちの、その歪な主従関係に戦慄しているとシシリーが駆け寄ってきた。


「もう! 魔人を組み伏せて尋問するなんて!」

「あ、ああ、ゴメン。でも、お陰で分かったことがあるよ」

「え? あのやり取りで、ですか?」

「ああ」


 はっきりとは言わなかった。


 けど、この状況とあの魔人の言葉で確信した。


 コイツらは……。


「シュトロームに、死んで来いと命令されたんだ」



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魔法少女と呼ばないで
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