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賢者の孫  作者: 吉岡剛
135/311

側近たちの戦い

お待たせしました。


 真っ先に飛び出し、剣と魔法の連携で次々と魔人を倒していくマリアとミランダ。


 トールとユリウスは、先陣を切って飛び出していった二人を苦笑しながら見ていた。


「やれやれ、どうにもうちの女性陣は好戦的な方が多いですね」

「まあ、事ここに至ってはそのほうが良いで御座ろう。それに、例の戦法が有効なのも実証して頂けたでござる」

「そういえば、さっきシン殿から何やら付与をされていましたけど、なんなんです?」

「ああ、それは………」


 ユリウスがトールの質問に答えようとしたとき、二人に向かって高出力の魔法が撃ち出された。


「「!!」」


 咄嗟に魔力障壁を展開し、その魔法を防ぐトールとユリウス。


 なんとか防ぐことができたが、その威力に二人は冷たい汗をかいた。


「……シン殿がいともたやすく討伐しているので、勘違いしそうになりますけど……」

「くっ! やはり訓練された魔人は一味違うで御座るな」


 二人はそう言うと、魔法が撃ち出された辺りを見る。


 前方には大勢の魔人がいるのだが、その中の一団が自分たちの方を向いていることに気が付いた。


「戦闘の最中にペチャクチャお喋りしやがって……舐めてんのかテメーらっ!」


 こちらに魔法を撃ったと思われる魔人が、苦々しい表情でそう叫ぶ。


 そんな意図が無かったとはいえ、結果として戦闘中に話しこんでいたことは事実なので、トールとユリウスは気を引き締めなおした。


「なんとも複雑ですね。魔人のあなたに正論で指摘されるとは」

「やはり、今までの魔人とは違うで御座る」

「ちっ! あんな出来損ないと比べるんじゃねえよ!」


 ユリウスの言葉に気を悪くしたのか、魔人が再度魔法を放ってきた。


 今度は魔力障壁を張らずに、ジェットブーツによる高速移動で魔法を避けたトールは、そのまま魔人に対して風の刃の魔法を放った。


「チイッ!」


 障壁で防御するものと思っていた魔人は、避けながら魔法を放ってきたトールの行動に面を食らい、咄嗟に魔力障壁による防御をした。


「ぐうっ……! ガキのくせにこんな威力の魔法をっ!」


 万全ではない状態で受け止めたからなのか、魔人はトールの魔法に押され気味だった。


 その時。


「もらったで御座る!!」

「なっ!?」


 トールと同じようにジェットブーツによって魔法を避けていたユリウスが、魔力障壁を展開している魔人の脇から懐に潜り込んでいた。


「しまっ……!!」

「ぬうああっっ!!」


 ユリウスは叫ぶと同時に、シンの手によって魔道具化したガントレットを起動させながら拳を振るう。


 そして、ユリウスの拳は魔人の胴体にヒットした後……。


 大爆発を起こした。


「……え?」

「……な……」


 あまりのことに、この事態を引き起こしたユリウスも固まり、トールは口を開けて唖然としている。


 そして吹き飛んだ魔人はというと……。


「……あれで生きている訳はないで御座るか……」


 ユリウスの視線の先には、下半身しかない魔人の遺体があった。


 その戦果を確認したあと、ユリウスはジェットブーツを起動し、トールの元まで戻った。


「な、なんですかそれは!? 殴った相手が爆発しましたよ!」

「いや……シン殿からは、殴った際の威力が上がるようにしたとしか聞いてないで御座る」

「威力がって……やり過ぎでしょう……」

「察するに、これはシン殿の指向性爆発魔法で御座るな。起動しただけでは発現せず、インパクト時にだけ発動するようにしたので御座ろう」

「……まったく……天才の考えていることはよく分かりませんね」

「同感で御座る。だが、それ故に強力な武器を得たのも事実。我々も存分に戦うで御座るよ!」

「ええ、そうしましょう!」


 そうして、今度はこちらから打って出るトールとユリウスの二人。


 あまりの現象に、一時呆然としていた魔人たちは、突っ込んでくる二人を見て、慌てて迎撃態勢を取った。


「くっ! この化け物どもが!」

「それは心外ですねっ! 化け物に化け物呼ばわりされるとは!!」


 そう言いながらトールは魔人に向かって炎の魔法を放つ。


 それを、魔力障壁で受け止めてしまえばさっきの二の舞になると踏んだ魔人は、回避行動を取った。


「くっ! この魔法の威力! 意味の分からん魔道具! 俺らより、テメエらの方がよっぽど化け物集団じゃねえか!!」

「まだ言いますか!!」


 お互いに魔法を撃ちあいながら口論する二人。


 ユリウスは、その魔法の撃ち合いに割り込むことができずにいた。


 だが、自分の攻撃が魔人への有効打となるのは先ほど確認したため、なんとか攻撃のチャンスを伺っている。


 だが、戦場でボケっと立っていると魔人たちの格好の的になるので、常にジェットブーツで移動しながら二人の言動を見守っていた。


 そんな言い合いをしながら魔法を撃ち合っていたトールと魔人だが、どうも話の内容が変わってきていた。


「あなた方こそ、魔人でありながら相当に理性を保っているのでしょう? 怒りに任せて行動していた平民魔人たちとは違う! なぜシュトロームなどに付き従っているのですか!?」

「はっ! そいつは前提が違うぜ坊主!」

「前提?」

「俺たちはシュトローム様に付き従っていたから魔人になったんだよ! 魔人になったからシュトローム様に従っている訳じゃない!」

「だとしても! こんな命令を出すシュトロームに反感は持たないのですか!? これではあなた方に死ねと命令したも同然じゃないですか!」

「それでもだよっ! 俺たちはシュトローム様に心から救われたんだ! 死ねと言われれば死んで見せる!」

「……狂ってる」

「ああそうさ! 俺たちは魔人だ! 全員狂ってるんだよ! さあ、いつまでもお喋りしてないでさっさとケリを付けようぜ!!」


 そう言って魔法を撃ち出そうとした魔人。


 だが次の瞬間、魔人の足元が突如爆発した。


「ぐわっ! な、なんだ!?」


 突然のことに、魔人の動きが一瞬止まる。


 その時。


「トール! 今で御座る!!」

「! はっ!!」


 ユリウスの叫びを聞いたトールは、魔人に向かって特大の炎の魔法を撃ち出した。


「なっ……ぐわああっっ!!」


 突如足元が崩れたことで防御も回避もできなかった魔人が、トールの魔法に包まれた。


「ユリウス、助かりました」

「構わぬで御座るよ」

「今のは、それで地面を殴ったのですか?」

「そうで御座る。これで戦術の幅が広がるで御座る」

「そうですね」


 トールはそう言った後、少し沈黙してから再度口を開いた。


「正直、シュトロームの命令で命を捨てようとしている彼らに、少し同情する気持ちもあったのは事実です。けれど、先ほどの声で踏ん切りがつきました」


 そして、魔人たちに向き直った。


「奴らは狂ってる。シュトロームのために命を散らすことを悦んでいる節もある。ここで……」


 トールはそう言うと、魔力を集めだした。


「ここで全員仕留めます!!」

「おおっ!!」


 トールとしては珍しい殲滅宣言の後、強力な魔法を撃ち出した。


 ユリウスもトールに同調し、雄たけびを上げながら魔人たちへと突撃した。


 戦闘は、より激しくなっていった。


活動報告に、アニメの最新情報があります。

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魔法少女と呼ばないで
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