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賢者の孫  作者: 吉岡剛
132/311

煽りました

お待たせいたしました。


それと、活動報告にお知らせがあります。

「お、お前らっ!」


 俺たちの前に姿を現した魔人に対して、俺の感情が一気に高ぶる。


 以前、こいつら魔人どもに、危うくシシリーが殺されそうになった。


 そのことを思い出して、俺の感情が怒りに支配され……。


「落ち着けシン」

「あだっ!」


 怒りの感情のまま魔人たちに襲い掛かろうとしたところ、オーグに頭をチョップされた。


「何すんだよ!」


 突然、頭をチョップされたことに抗議の声をあげると、今度はそのままヘッドロックされオーグが小声で語りかけてきた。


(いいから落ち着け。怒りに任せて殲滅させてしまっては、奴らの全体数も目的も聞き出せん)

(なんだよ、今更そんなこと気にしてもしょうがないだろ)


 俺もオーグに合わせて小声で答える。


(そんな訳あるか! 全体数を把握していないと、前のように取りこぼしがあるかもしれんではないか!)


 むう……それもそうか。


 前回はそれで痛い目を見たんだった。


(お前は後ろで大人しくしていろ)

(分かったよ)


 ようやくヘッドロックが解除されると、俺はオーグの指示通り後ろに控えた。


「殿下のヘッドロックなんて初めて見ました」

「そうで御座るな」

「へえ、トールたちはされたこと……」


 俺の側にいたトールとユリウスが話しかけてきた。


 その時、俺はユリウスが鉄製のガントレットをしていることに気が付いた。


「ユリウス、それ……」

「む? ああ、拙者、シン殿やトニー殿ほど剣が上手くないで御座るからな。得意な身体強化で直接殴ろうかと思いまして」


 そっか、マリアたちと同じで魔法と近接で戦うんだったな。


 しかし、あっちのミランダの武器は魔道具であるバイブレーションソードだ。


 ユリウスのガントレットには何も付与していない。


 そうか、殴るのか。


「ユリウス。ガントレットを体の後ろに隠すように腕を後ろに組んでくれ」

「ん? こうで御座るか?」

「おう」


 ユリウスが後ろで手を組むことで、傍目には『休め』の体勢で立っているように見える。


 そして、ガントレットが体の後ろに隠れた。


 俺は、魔人たちがオーグと話して気が逸れている今この時を使って、ユリウスのガントレットにある魔法を付与した。


 付与が終わった後、ちらりと魔人たちを見るがこちらに気付いた様子はない。


 良かった。


「……シン殿。一体なんの魔法を付与したで御座るか?」

「ああ、それは……」


 こうして俺がユリウスのガントレットに施した付与について説明している最中も、魔人はオーグと話をしている。


「随分とご丁寧な出迎えではないか。まさか希少な竜を魔物化させて襲ってくるとはな」

「んだとテメエ……」

「しかし、過去に一度だけ竜が魔物になったことがあったと聞いていたが噂程ではなかったな。ああ……魔物化させた者の力量が大したことないのか」


 オーグがそう言うと、魔人たちの魔力が一気に膨れ上がった。


 ……さすがオーグ。


 相手を煽ることに関しては天下一品だ。


「キサマ……シュトローム様を侮辱するか!!」

「フム。事実を言っただけなのだがな。魔人のくせに随分と忠誠心の高いことだ」

「当たり前だ!! シュトローム様は虐げられていた俺たちを助けてくださった大恩人なのだ!!」

「魔人に……魔物にされているのにか?」

「俺たちが望んだことだ! テメエにとやかく言われる筋合いはねえ!!」

「自らね……なんとも救いのないことだな」


 オーグが呆れたように溜息を吐くが、魔人はなぜかニヤッと笑った。


「いいや、救われたさ。帝国に搾取され、酷使されるだけだった俺たちを掬い上げ、救ってくださった」

「そうだ! シュトローム様は俺たちを地獄のような日々から解放してくれた!」

「しかも、憎き帝国を打倒する力まで与えて頂いた!」

「貴様らのような温室育ちの小僧どもには分からんだろうがな!」


 周りの魔人たちもオーグに向かって怒鳴り出した。


 相当興奮してる。


 一斉に怒鳴り声を浴びたオーグだったが、眉一つ動かさずに平然と受け止め、さらに返した。


「全く分からんな。お前たちが虐げられていたのは、皇帝や貴族たちからだけだろう。復讐をするならその者たちだけにするのが筋だ。なぜ同じ立場の平民まで虐殺する必要がある?」


 オーグのその言葉に、魔人たちは口を噤む。


「その事実だけでも、お前たちに同情の余地などない。お前たちは、ただの血に飢えた魔物だ!」


 ちょっと語気を荒げてそう言ったあと、魔人たちを見下すように笑って、また煽った。


「当然、お前たちを生み出したシュトロームも同様なのだろうな」


 ……正直、どっちが悪者なのか分からなくなる台詞だな……


 だが、効果はてきめんだった。


 オーグがそう言ったあと、一旦収まっていた魔力が一機に膨れ上がったのだ。


「ギ、ギザマ……!!」


 魔人の目が血走ってる。


 相当に頭に血が上ってる。


「たったそれだけの人数で世界に戦争を仕掛けようというのだ。頭も相当に悪いのだろうな。それとも何か? 他に援軍でもいるのか?」

「ふざけるな! 俺たちと幹部だけだ!! 世界を滅亡させるのに、他人の手なんぞ借りるか!!」


 言った。


 魔人の人数は、ここにいる者と、後は幹部。それとシュトロームだろう。


 幹部が何人いるかは分からないけど、とりあえず平の魔人はここにいるだけで全員ということか。


 数は……三十から四十ってとこか。


 それに、やはりコイツらの目的は世界征服ではなくて、世界の滅亡。


 なぜそんなことを考えたのかは分からないけど、実際に実行しようとしている。


 となれば……。


「フン。それだけ聞ければ十分だ」


 魔人を煽りに煽っていたオーグはそう言うと、自分も魔力を集めだした。


「それでは、決着をつけようではないか。お前たちの敬愛するシュトロームの言う所の……」


 オーグはまたニヤッと笑って言った。


「ゲームの始まりだ」


 なんだろう……。


 オーグが主役っぽい!!



活動報告で、アニメについてのお知らせがあります。

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別作品、始めました


魔法少女と呼ばないで
― 新着の感想 ―
[気になる点] ミシェルに鍛えられたシンは騎士でもないオーグによって急にチョップされたり、ヘッドロックされたりすることは不可能でしょう?!?
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