クラスメイトが出来ました
ランキングが……日刊1位になってました。皆さんのお陰です。ありがとうございます。
挨拶に冗談を入れてはいけませんでした
そんなの知らないよ! 前世の記憶しか頼る物無かったのに、その記憶では挨拶はユーモアを交えて場を和ませましょうが基本だったんだ。
初めて知ったこの世界の常識と、公の場で盛大にヤラかしてしまった事に頭を抱えていた。
「いやーあたしは面白かったと思うよ? こういう場での挨拶ってツマンナイ上に眠いんだよね」
そう声を掛けられた。この席にいるという事は同じSクラスか。
「あたしはアリス。アリス=コーナーだよ。ヨロシクねシン=ウォルフォード君」
「ああ、ヨロシク」
「さっきの挨拶、あたしは面白いと思ったよ。初等学院とか中等学院の時は挨拶が苦痛で仕方なかったからね。そう思ってる生徒は多いんじゃない? さっきだって生徒の殆どは笑ってたし、これから真似する人は増えるんじゃないかな?」
「……そうなのか?」
「そうだよ。ところでウォルフォード君」
「シンでいいよ」
「じゃあシン君。シン君てその……マーリン様とメリダ様のお孫さんなんだよね?」
正確には違うけどね。皆は爺さんとばぁちゃんが離婚してるって知らないんだろうか?
「まぁそうだね」
「今日はいらっしゃってるのかな?」
「多分保護者席にいると思うけど……」
これはあれか? 紹介して欲しいとかそんな話か?
「そうかぁ、やっぱりこれからクラスメイトになるんだしご挨拶に伺った方がいいよねぇ~」
クラスメイトの保護者に挨拶に伺わなきゃいけないなんて初めて聞いたわ。
「あ! ズルイ! 私も行きたい!」
「私も行きたいです」
「僕も行きたいねぇ」
「私も行きたぁい」
「自分もご挨拶したいです」
「拙者も行きたいで御座る」
誰だ!? 武士が居たぞ!?
「ほう? この学院にはクラスメイトの保護者に挨拶に伺わなければいけない決まりがあったのか?」
「ア、アウグスト殿下……」
「ならば当然、我が父上にも挨拶に伺って貰わなくてはな」
「い、いえ! そんな畏れ多い!」
「ならば馬鹿なことを言っていないで静かにしろ。見ろ教師陣が此方を睨んでいるぞ?」
え? うわっ! 超睨んでるよ。今日は怒られてばっかだな。
「この後で教室に行くんだ、交流を図るのはそこでにしろ」
「は、はい。申し訳御座いません……」
「悪いオーグ、助かった」
「何、当然の事だ」
やっぱコイツ、ディスおじさんの息子だ。こういうとこ超カッケーわ。
「貸しイチな」
ニヤっとしてそう宣った。
前言撤回! やっぱり性格悪い!
その後、入学式は滞りなく進み最後にディスおじさんの挨拶があった。新入生を鼓舞するような挨拶があり、そして最後に此方を見てニヤっと笑った。何か嫌な予感がするぞ?
『今年は英雄の孫という規格外が紛れ込んでいるから教師陣は大変だろうと思うが頑張って欲しい。そして同級生達は彼から色々と学ぶと良い。皆の固定概念を吹き飛ばしてくれるだろう。そして皆が大きく成長してくれる事を切に願っている』
おおい! 最後に何ブッ込んでくれてんの? 挨拶に冗談入れちゃいけないんじゃ無かったの!?
「ふむ、流石父上だ。早速取り込んで来たか」
お前も何感心してんだよ! 国のトップがそんな事したらみんな真似するでしょうが! この世界の常識を変えちゃうよ!
最後に国王様から弄られて非常に疲れる入学式は終わった。
この後は各自の教室に行って自己紹介等の簡単なホームルームをして今日は解散である。
俺達は教師の先導の下教室に行こうとしたが、その時何か気になる視線を感じた。何だ? そう思って周りを見渡すと……あれは……確かカート君だったな。例の横暴貴族君が俺を睨んでいた。まるで恨みや怨念の籠った様子で。
俺、何かしたか? あ! ひょっとして俺がふざけた挨拶をしたから伝統がどうとか式の品格がどうとか思っちゃったかな? 何か貴族で在る事に偏執してそうだからなぁ。でもディスおじさんも同じ事したんだから問題ないよね?……よね?
その視線がちょっと気になったけど、もう教室へ行く時間だ。彼は違うクラスみたいだから相手にする事も出来ず俺も教室へ向かった。
この学院のクラスはS、A、B、Cの4クラスある。Sクラスだけが十人の少人数クラスで後は三十人づつ、十+三十×三=百人で一学年だ。入試の成績がそのままクラスになっていて、Sクラスは入試上位十人、所謂特進クラスだな。一番下がCクラスだけど、皆超倍率の入試を潜り抜けて来てる。毎年学年が上がる毎にクラス編成があるので、入学した時はCクラスでも卒業する時にはSクラスになっていたなんて事はザラにあるらしい。その逆も然り。爺さんとばぁちゃんの顔に泥を塗らない様に頑張らなきゃな。
今日だけで何回も怒られてるのは忘れてくれ。お願いだ。
教室は何か執務室? みたいな感じだった。机も執務机みたいな感じで高級感溢れる物で大きかった。椅子も革張りで、ここは社長室か何かか? と思ったのは俺だけでは無い。
「うわぁ、凄いよこの机。お父様の執務机みたい」
「ホントだ。凄いねこれ」
「あたしこんな立派な机見たこと無いよ。椅子も凄いし、うぅここに居るだけで緊張で疲れそう」
「何だ、みんな情けないな」
平常運転なのはオーグだけです
「所詮只の設備なんだ、その内慣れる。そんな事に気を取られて本分を忘れるなよ?」
「オーグ……お前やっぱすげえな」
「ふ、ウチの机よりは劣るからな」
「そりゃそうだろうよ!」
王宮ですもんね!?
「ホラ! いつまでも設備に感心してないでさっさと座れ。黒板に各自の座席が貼り出してるからその席に着け」
っと、ここまで引率してきてくれた男性教師が皆に着席を促した。えーと俺の席は……あ! 教卓の目の前、特等席じゃないですか。
と言っても十席しか無いのでどこに座っても同じか。
机の並びは三席、四席、三席の三ー四ー三システムを導入している。
交互になっているお陰でどの席からも黒板が見える。
席に着くと教卓にそのまま男性教師が着く。
「さて、では改めて入学おめでとう。俺はこのクラスを担任するアルフレッド=マーカスだ。実技も担当しているので宜しくな。さて、この後はお互いの自己紹介をして明日以降の予定を伝えて今日は終了だ。では、俺から始めようか。さっき言った様に名前はアルフレッド=マーカス。俺もこの高等魔法学院の卒業生で、教師になって五年になる。教師になる前は宮廷魔法師団に所属していた。五年ほど勤めた後、学院の教員に欠員が出たので教師になった。だから年齢は二十八歳だな。尊敬する人物は賢者マーリン殿だ。なのでこのクラスの担任になれて大変嬉しく思っている。以上だ」
最後に何か言ったな。最初にそんな事言ったら皆言わなきゃいけなくなるじゃん。
「では次はお前達だ。じゃあ、入試順位順にいくか。では、シン=ウォルフォードから」
「はい。えーと、初めましての人もそうでない人もいますが改めましてシン=ウォルフォードです。代表挨拶でも言いましたが、つい最近まで森の奥で暮らしてたので色々と世間知らずです。なので何か変な事をしても見捨てないで下さい。じいちゃんに教えてもらって一通りの魔法は使えます。ばぁちゃんに付与魔法も教わってるので魔道具を創る事も出来ます。尊敬する人物はじいちゃんとばぁちゃんです。宜しくお願いします」
「マーリン様とメリダ様の個人レッスン……」
「なんて羨ましい……」
何か皆、羨望と嫉妬が入り交じった様な顔してんな。全員じいちゃんとばぁちゃんのファンか?
「次は、アウグスト殿下、お願い致します」
「はい。皆、既に知っているとは思うが、シンの様な世間知らずが居るかもしれんからな。改めてアウグスト=フォン=アールスハイド、この国の第一王子だ。だが、知っての通りこの学院は王家すら身分の貴賤を問わないからな。皆もシンの様に遠慮なく接してくれ。シン程では無いがある程度は魔法を使えると自負している。シンに比べたら本当にある程度だがな。尊敬する人物は父上とやはり賢者マーリン殿だな。これから宜しく頼む」
チョイチョイ俺を引き合いに出してくんな! おい。
「殿下とそれ程仲が良いのか」
「羨ましいで御座るな」
やっぱり武士が居るよ! 誰だ!
「では次、マリア=フォン=メッシーナ」
「はい。初めまして、マリア=フォン=メッシーナです。メッシーナ伯爵家の二女で、女学院は性に合わないし魔法もソコソコ使えるので、魔法学院に来ました! さっき殿下も仰ってた様にみんな気軽に接してくれると嬉しいです。尊敬するのはやっぱり導師メリダ様です。メリダ様の様に綺麗で強い女を目指します! 宜しくお願いします!」
貴族や富裕層の女子が通う女学院は性に合わないってか。確かにお淑やかって感じじゃ無いわな。
「では次、シシリー=フォン=クロード」
「はい。初めまして皆様。シシリー=フォン=クロードです。クロード子爵家の三女で、マリアに引っ張られて魔法学院を受験しました。こんな素敵な皆様と出会えて、誘ってくれたマリアにはとても感謝しています。私は治癒魔法が得意で、攻撃系の魔法はちょっと苦手です。皆様をサポート出来ればと思ってます。尊敬する人物はメリダ様ですね。いつかお会い出来たらと思います。宜しくお願いします」
大丈夫だよシシリー。ばぁちゃんはシシリーに会いたがっていたよ。品定めの意味で。
「次、アリス=コーナー」
「はーい。みんな初めまして、アリス=コーナーです。ここまで凄い家の人が続いてたけど、あたしで止めちゃったよ。家は普通の平民で、父さんはハーグ商会の経理をやってます。あたしは残念ながら経理は苦手なんで、魔法を頑張りました! シン君のいるクラスになれてホントにラッキーです! メリダ様を超尊敬してます。宜しくお願いします!」
アリスは金髪、碧眼のショートカットの女の子。なんというか細くて全体的にちっこい子だ。同い年だけど妹的存在だな。ちなみにハーグ商会って、トムおじさんの経営する商会だ。
「次、トール=フォン=フレーゲル」
「はい、自分はトール=フォン=フレーゲル。フレーゲル男爵家の嫡男です。私はアウグスト殿下の護衛と学友になる様に幼少のころ選出され、それ以来ずっと殿下と共に歩んで参りました。この度は、アウグスト殿下の高等魔法学院進学の為と、自分は魔法職の護衛となる予定ですのでこの高等魔法学院で研鑽したいと思いやって参りました。やはり自分も賢者マーリン様を尊敬しております。宜しくお願いします」
トールはオーグの護衛兼学友か。銀髪に丸い眼鏡を掛けてる。これまたちっこい男の子だ。男子じゃなくて男の子って言いたい。お姉さんにモテそうだ。
「次、リン=ヒューズ」
「はい。リン=ヒューズです。父は宮廷魔法士、母は専業主婦。魔法が大好きなのでここに来ました。マーリン様を尊敬しております。宜しくお願いします」
短か! あんまり口数の多い子じゃないのかな? リンは黒い髪をショートボブにして縁の細い眼鏡を掛けてる。中肉中背の女の子だ。女の子で初めて爺さんを尊敬してるって子が出てきたな。魔法大好きって言っていたし、女性的な事より魔法の方が好きなんだろうな。
「次、ユーリ=カールトン」
「はぁい。みんなはじめましてぇユーリ=カールトンです。私の家はホテルを経営してるの。だからみんな、もしこっそりお泊まりしたい時はいつでも言ってねぇん。サービスするからぁ。私は付与魔法の方が得意ねぇ、だから強くて美しいメリダ様を心から尊敬してますぅ。みなさ~んよろしくねぇ」
なんだろう。エロい娘だ。ボン・キュッ・ボンです。喋り方もちょっと甘ったるい感じ。そしてホテルを経営しているカールトンさん。お金持ちの匂いがするな!
「次は、トニー=フレイド」
「はい。みんな、はじめまして、トニー=フレイドです。ウチはみんな騎士の家系で父も母も兄もみんな騎士養成士官学院に行ったんだけど、男女比九:一の学校は僕には拷問でね。とにかくあの学院に行きたくなかったんだ。でも魔法学院に入るならSクラス以外は認めないって言われちゃってね。死に物狂いで頑張りました。ちなみにSクラスから落ちると騎士養成士官学院に強制連行されるので、ここでも頑張るよ。やっぱり男としてメリダ様と一緒になったマーリン様を尊敬してるね。これからみんな宜しくね。後、カールトンさん、ホテル利用する時は宜しくね」
茶髪で背が高く、細身のイケメンだ。チャラ男かと思いきや家の事情で超苦労してるらしい。泣ける。でもやっぱりチャラ男だった。
「では最後、ユリウス=フォン=リッテンハイム」
「畏まりました。拙者、ユリウス=フォン=リッテンハイムと申す。リッテンハイム侯爵家の嫡男である。トールと同じくアウグスト殿下の護衛と学友を兼ねておったのですが、殿下が魔法学院に進学される為、拙者も一緒に受験したので御座る。いや拙者、魔法が苦手であったが故に苦労し申した。それでも何とか受験に合格し皆と机を並べることが出来たのは僥倖で御座った。これからも精進致す故、皆様宜しくお頼み申します。尊敬するのは、やはり賢者マーリン殿と、前騎士団総長のミッシェル殿で御座る」
いたよ! こいつだ武士! その上、見た目と名前と喋り方が一致しねえよ! いかにもお貴族様な名前に反して、制服を盛り上げる逞しい筋肉と大きな体、短い金髪をツンツンに立てていて青い瞳をしている、パッと見アメフトの選手みたいな見た目なのに、喋り方武士。いや、違和感しかねえよ!
それにしても魔法使いに見えない。むしろ騎士養成士官学院の生徒と言った方がしっくり来る。本人も魔法が苦手って言ってたし、これは……まさか……。
「あー……皆の言いたい事は分かるがな、別に学院が殿下に気を使って入学させた訳じゃ無いぞ。純粋にリッテンハイムの実力だ」
そうなんだ。クラスメイトを疑ってしまった……。
最低だな……俺……。
「ただ、リッテンハイムは放出系の魔法は苦手でな、身体強化魔法を使ったんだ」
身体強化魔法?
「強化した脚力で的まで一足飛びに飛んで行ってな……これまた強化した拳で的を破壊したんだ」
変態だ! 変態魔法使いだ! これは言っても良いだろ! 魔法の使い方がおかしいよ!
「いやぁ、そんなに誉められると照れるで御座るよ」
(((((((((誉めてねぇよ!)))))))))
入学早々皆の心が一つになった。