反撃しました
プライベートが色々と忙しくて、更新が大幅に遅れてしまいました。
エタらせることなく完結まで更新しますので、皆様よろしくお願いします。
シシリーのお姉さんであるセシリアさんを傷つけられた。
その上、シシリーまで狙われた。
そのことに俺は……怒りを抑えることができなかった。
「てめえら……覚悟しろよ?」
我ながらドスの効いた低い声が出たな。
大量の魔力を纏いながらそう言ったためか、魔人達が一瞬ビクッとする。
俺は、その一瞬硬直した隙を逃さずに突いた。
異空間収納からバイブレーションソードを取り出し、身体強化魔法とジェットブーツによる加速で魔人の一人に肉薄。
「は、はやっ……!」
魔人がなにか言いかけたが、その言葉を全て発する前に、斜め下からバイブレーションソードを切り上げ、魔人を真っ二つにした。
「まず一体……」
「っ! 攻撃しろ!」
それを見ていた魔人達がこちらに向けて魔法を放ち、それが着弾する。
「シン!」
オーグが俺の名を呼び。
「や、やったか?」
魔人の一人が、やってないフラグを立てる。
それを俺は、魔法の着弾による煙幕の中で聞いていた。
魔人が魔法を放ってきた時点で、俺は防御魔法が付与された指輪の魔道具を起動。
俺には傷一つ付いていない。
俺はその煙幕の中から、次の魔人に向かって飛び出した。
「チイッ! やはり厄介な!」
向かってきた俺に対し、慌てて魔力障壁を展開する魔人。
だが、魔人の展開する魔力障壁すら苛立ちの対象になった俺は、わざと魔法による攻撃に切り替えた。
限界まで温度を上げた『白い』炎の槍を数十本、俺の周りに展開させながら魔人に向かっていく。
そして、数十本展開させた槍のうちの一本を魔人に向かって放った。
「グッ! ガアッ! な、なんだ!? この威力と熱は!?」
魔人の魔力障壁に阻まれてしまったけれど、かなりギリギリで防いだらしい。魔力障壁がかなり薄くなっている。
一本でこれだ。
そしてこちらには、後数十本の同じ炎の槍がある。
「ちょ、ちょっと待っ……」
「待つわけないだろ」
ギリギリ一本防いだ炎の槍が数十本展開されている光景に、魔人は絶望の表情を浮かべ、制止の声を上げるがそんなもの聞けるはずがない。
俺は、明らかにオーバーキルになると分かっていながら、その数十本の槍を、一人の魔人に向けて全て放った。
「う、うおおおおおっ……!」
最初の数本はなんとか防いだようだが、その後も連続して着弾する炎の槍を防ぎきることができず、魔力障壁を破られた魔人は残りの炎の槍を全てその身に浴び、文字通り消滅した。
その光景を見ていた俺に、別の魔人からの魔法が放たれる。
「この化け物めっ!」
なんて心外な。
「化け物は……お前らの方だろ!!」
全帝国民を全て虐殺した魔人達を、俺は元人間だとは思えない。
奴等は、悪魔か化け物だ。
放たれた魔法を受け止めずに避け、その魔法を放った魔人に向かう。
すると、その横合いから別の魔人の魔法が俺に向かって飛んでくる。
それを……。
「馬鹿な!? 並列起動だと!?」
防御魔道具を展開し横合いからの魔法を防いだ。
その間、俺の身体強化とジェットブーツを併用した突進は止まっていない。
そして、攻撃魔法も同時に展開したことに魔人が驚いている。
俺にとって、複数の魔法を同時に展開することはそんなに難しいことじゃない。
パソコン上に複数のプログラムが並列起動しているのをイメージすると、簡単にできた。
だが、オーグに言わせると、その魔法の並列起動も非常識なことらしい。
その常識は魔人達にも当てはまるらしく、俺が複数の魔法を同時に展開していることに驚いていた。
そして、防御に意識を向けさせると突進が止まると思っていたのだろう。
俺が向かっている先の魔人は、魔力障壁による防御ではなく、攻撃魔法を展開していた。
「なっ!?」
「残念だったな」
「くっ、くそっ!」
今さら防御に切り替えることができなかった魔人は、その展開していた攻撃魔法を俺に向かって放つ。
そして俺も、すでに攻撃魔法の準備はできていたので、それをそのまま魔人に向かって放った。
魔人の放った魔法は炎の魔法。
対して俺が放ったのは、先ほどとは真逆の氷の槍だ。
炎と氷なら炎の方に分がある。
一瞬、魔人の顔に喜色が浮かんだ。
確かに、向こうの魔法の方が有利だが、それならばこうすればいいだけの話だ。
「な、なんだ……? その数は……」
先ほどと同じように、氷の槍を数十本展開させ、向かってくる炎の玉に次々とぶつけていく。
最初は炎によって消滅していた氷の槍だが、それを次々とぶつけていくと、炎の玉がみるみるうちにその威力を減少させ、ついには俺に届く前に消滅してしまった。
そして、炎の玉は消滅してしまったが、俺の方の氷の槍はまだまだ数が揃っている。
その光景に、炎の玉を放った魔人は呆然としている。
呆然としている魔人に向かって、氷の槍の残りを、先ほどの炎の槍と同じように全て魔人に向かって放った。
呆然としていた魔人は、魔力障壁を展開させる暇もなく、そのまま氷の槍に貫かれ、さらにその後も次々に着弾する氷の槍によって氷漬けにされていた。
さて、後残りは……。
「二体か……」
遠巻きにこちらを見ている魔人を見据えると、目に見えて怯んだ様子を見せる。
チラチラと後ろを伺い、どうにかして逃げ出す隙を窺っているようだ。
その様子が、俺をさらにイラつかせた。
「なに逃げる算段をつけようとしてんだ? お前らから攻めてきておいて……」
自分達から攻め込んできておいて、劣勢になったら逃げようとする。
その行動に心底腹が立った。
「そんな程度の覚悟で! 人類に喧嘩売ってんじゃねえぞっ!!」
そう叫んだ俺は、残る魔人二体のうちの一体に向かって走り出す。
すると、俺と魔人の間の地面に、全く予想していなかった方向からの魔法が着弾し、地面が爆ぜた。
「っ! チィッ!」
地面が爆ぜるということは、その瓦礫が飛んでくるということだ。
物理障壁でその瓦礫は防いだが、突進の足が止まってしまった。
「くそっ! どこから!?」
怒りのため、冷静さを失っていたのだろう。
残る二人とは別の魔人の存在に、全く気がついていなかった。
状況が不利と見て援軍に来たのだろう新たな魔人を探して、俺は索敵魔法を展開し辺りを見回した。
すると。
「そこまでにしてもらおうか。シン=ウォルフォード君」
これまでの魔人とは違う様子の魔人が現れた。
「「ゼスト隊長!!」」
そう叫んだ残る魔人の二人は、新たに現れた魔人の後ろに隠れてしまった。
隊長だと?
「なんだよ? 今度はお前が相手してくれんのか?」
俺も相当気が立っているので、まるで戦闘狂のようなセリフを吐いてしまう。
とにかく、この怒りを誰かにぶつけたくて仕方なかった。
「そういきり立つな、シン=ウォルフォード君。私に君の相手など務まるはずもないだろう?」
「ああ? ならなんでこんな襲撃を仕掛けてきたんだよ?」
俺の相手をするつもりがないのに、襲撃を仕掛けてきた?
なにを言ってやがる?
「まさか君が参戦するとは思ってもみなかったからな。少々予定が狂ってしまった」
「ふざけんな! なにが予定だ!」
俺が参戦するのが予定外だと? なにを言って……。
「……おい。まさか、お前ら……」
「ふむ。色々と推理をしているようだが、いいのか?」
「は? なにが?」
「私はね、元は帝国の軍人だったんだよ」
「軍人……」
ってことは、なにかの部隊の隊長だったって訳か?
でもなんだ? なんで急にこんなことを言い出した?
ゼストと呼ばれる新たな魔人の意図が分からず困惑していると、その答えは全く別のところからもたらされた。
「殿下! アウグスト殿下!」
アールスハイド軍が控えている後方から、一人の兵士がオーグに向かって走ってきた。
「こんな時になんだ!?」
「申し訳ございません! ですが! 各国より緊急通信です!」
「緊急通信?」
「はっ! 我がアールスハイド、および周辺国に……」
なんだ? まさか!?
「魔人が出現したとのことです!」
「な、なんだと!?」
オーグが慌てた声を出し、こちらを見やった。
「軍ではね、不測の事態に備えて、幾重にも予防線を張り巡らせるものなのだよ」
ゼストは不適に笑いながらそう言った。
「て、てめえっ!」
「ほら。放っておいていいのか? 君達がいない各国など、簡単に墜とせるぞ?」
ニヤリとした笑みを浮かべながらそんなことを言うゼストに心底腹が立つ。
「ぐうっ! コ、コイツッ!」
「シン! そいつは後回しでいい! 今は各国に現れた魔人が最優先だ!」
そう言うオーグの方を見た瞬間に、新たに現れた魔人と残りの二体は、この場から離れてしまった。
「それでは、私たちはお暇させていただくとしよう」
そう言い残して去る魔人達を、俺は指を咥えて見ているしかなかった。
追いかけて行ってあいつらを討伐することはできる。
でも、今まさに魔人に襲われている各国を放っておくこともできない。
「くそっ! オーグ! 急いで各国の防衛に行くぞ!」
「分かっている! おい! 魔人が現れたのは旧帝国周辺の国だけなのか!?」
「は、はい! エルスとイースからはその報告は入っておりません!」
「ならば……」
その場でオーグが各国に対して二人派遣することを決め、振り分ける。
そして、組み分けが決まった者からすぐにゲートを使って各国に赴く。
旧帝国に国境を接するのは、アールスハイド、スイード、ダーム、カーナン、クルトの計五カ国。
そこに二人ずつなので二人あまるため、マークとオリビアは連絡係としてこの場に残った。
皆からの連絡を待っている間に、マークは放逐した馬を回収しに行くらしい。
俺のペアは……。
「セシリアさん!」
「え? あ、ああ、凄かったわねシン君……それより、なにがどうなっているの?」
「アールスハイドを含めた周辺各国に魔人が現れました! 事態は一刻を争います! シシリーを連れていっても大丈夫でしょうか?」
俺の言葉にハッとしたシシリーが狼狽えだす。
「ま、魔人! す、すぐに行かないと! ああ、でも他に治癒しないといけない人も……」
「シシリー!」
魔人討伐に行きたいが、ここに残って治療をしたいという思いもあり、葛藤し始めたシシリーをセシリアさんが一喝する。
「ここは大丈夫だからシン君と共に行きなさい。恥ずかしいことに一番の重症だったのは、私だったみたいだからね。後は命に別状はないから私達だけでも大丈夫よ」
「で、でも……」
「全ての人を癒してあげたいという、あなたの志は立派よ。でも、あなたにはやるべきことが他にもあるでしょう?」
「……」
「もっと私達を信用しなさいな。って、魔人の討伐に妹を差し向ける姉の台詞じゃないか」
「そ、そんなこと!」
「シン君! そんな訳だから、シシリーのことお願いね!」
「分かりました! シシリー、行こう!」
「……はい! 分かりました! お姉様、後はよろしくお願いします!」
「任されたわ。気をつけて行ってらっしゃい」
「はい!」
セシリアさんの説得で、シシリーを魔人討伐に連れていく。
俺達が割り振られたのは、カーナンだ。
こうして俺達は、セシリアさんに見送られ、ゲートでカーナンに向かった。
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シンとシシリーがカーナンに向かった後、残されたシシリーの姉セシリアは、皆に向かって声をかけた。
「さあ、あの子にああ言っちゃったからね。誰も死なせちゃ駄目よ!?」
『おおお!!』
セシリアの言葉に治癒術士達が声をあげて応える。
実際、一番の重症だったのはセシリアで間違いないが、それは他の人間が軽症や無傷だったことを示すものではない。
命に別状はなくとも、骨折や裂傷などの重傷者はいるのだ。
ここは任せて先に行けという、縁起の悪そうな台詞を言ってしまった手前、そういった患者も一人残らず助けてみせると、セシリアは息巻いた。
もっとも……。
「治療するのは私じゃないんだけどね……」
それでも、セシリアの言葉に治癒術士達が応えたのは、セシリアが聖女と称えられるシシリーの姉だからに他ならない。
魔人討伐は、妹とその仲間に任せっきりで、治療もできない。
そんな不甲斐ない自分に、セシリアは唇を噛んだ。
「強くなりたいなあ……」
シシリー達の長兄であるロイスが聞けば震え上がりそうな台詞をポツリと溢すセシリア。
「どうか無事でいて……」
災害級の魔物の死骸が散乱する、今は静かになった戦場の空を見上げ、セシリアは魔人討伐に向かった妹や義弟達の無事を祈ることしかできなかった。
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ゲートを抜けた先で待っていたのは、勢ぞろいした羊飼いとカーナン軍の混成部隊だった。
相変わらず羊飼い達の存在感が半端ない。
「ん? おお! シンじゃないか!」
「お久しぶりですガランさん! 魔人は!?」
真っ先に声を掛けてきた国家養羊家のガランさんに今の状況を聞く。
「それがよ……」
少し困惑している様子のガランさんが視線を向けた先に……。
いた! 魔人だ!
だけど、その魔人の様子がおかしい。
「……アイツ、なにしてるんですか?」
魔人は一体で、なにもせずに佇んでいた。
「それがよ、魔人が現れたかと思ったら、なにもせずにただじっとああしてるんだよ」
「なにもしない?」
「ああ。かといって相手は魔人だ。俺達の手に負える存在じゃない。手を出すこともできないし、どうしたもんかと……あっ!」
「え?」
話の途中でガランさんが魔人の方を見ながら声を上げた。
俺もその方角を見ると、魔人がこの場から凄いスピードで走り去っていくのが見えた。
「あ!」
魔人はもう視認できない距離まで走り去ってしまった。
「一体……なんなんだ?」
あまりにも予想外の出来事で、さっきまでの怒りも吹っ飛びつい呆然と見送ってしまった。
「それよりシン君、マークさん達に報告しないと」
「あ、そうだな」
無線の通信機を取り出し、マークに連絡を取る。
「あ、シン君!」
シシリーが慌てて俺を呼び止めるけど、マークが出た。
シシリーに手でゴメンと詫びてマークとの通信を始めた。
と、その時、なぜかシシリーにマントをかけられた。
別に寒くないよ?
そう思うが、マークを待たせる訳にはいかず、話し始める。
「もしもし、マーク?」
『あ、ウォルフォード君っスね? もう魔人倒しちゃったんスか?』
「いやそれが、なにもしないで逃げちゃったんだよ」
『逃げたんスか?』
「そう、他からはまだ報告入ってないか?」
『自分のところはウォルフォード君が最初っスけど……あ、オリビアの方に連絡入ったみたいっス」
マークが話し中だったからオリビアの方に連絡したんだろう。
しばし、その報告を待つと、マークからその結果を知らされた。
『他も同じみたいっスね。やっぱりなにもしないで逃げたらしいっス』
「そうか……」
結局なにがしたかったんだ?
『とりあえず、他の人からの報告もあるっスから、一旦切りますね』
「ああ、分かった」
マークとの通信を切った俺は、シシリーと顔を見合わせた。
「なにが狙いなんだろう?」
「もう、シン君……」
そう言いながら、マントを回収して再び羽織るシシリー。
「なに? っていうか、なんでマント?」
「もういいです。魔人の意図ですけど……ゴメンなさい、私には分からないです」
「いや、俺にも分かんないし、謝らなくてもいいよ」
魔人なら一体でも相当な被害を出せると思うんだけど……。
それより、シシリーの行動も気になる。
なんなんだろう?
と、そう思っていると、ガランさんに声をかけられた。
「なあ、シン。お前のそれ……」
「え? ああ、これは……」
やっべ、ガランさんがいるのに無線通信機使っちゃったよ。
あ、シシリーがさっき言いかけたのはこれか!
「あの、すいませんが、このことは内密に……」
「ふう……お前な、それって今各国で話題の通信機の無線版だろ? そんな国家機密をホイホイと使うなよ……」
「あ、あはは。すいません」
「まあ、間近で見たのは俺だけみたいだから黙っといてやる。次は気をつけろよ?」
「すいません。ありがとうございます」
ガランさんがいい人でよかった。
「もう。もし意地の悪い人に見られてたらどうするんですか?」
「ご、ごめん。ついうっかり……」
シシリーは気がついていたみたいだし、他の皆はうまくやってるんだろうな。
どうしても、前世で使ってた携帯電話のイメージがあるので、すぐに使っちゃうな。
「気をつけてください。シン君の行動は、今や全ての国が注目して見ているんですよ?」
「全ての国って大げさな……」
「大げさじゃないです! その証拠にほら……」
シシリーが目を向けたのは、羊飼いとカーナン軍の混成部隊。
そのほとんどが、こちらを見ていた。
「……これでよくさっきの通信の様子が見られなかったな……」
「私がシン君にマントを被せて光学迷彩を起動しました。ガランさんはその前を見てしまったので……」
あ、そういえば、今の俺は戦闘服を着てない。
シシリーがマントをかけてきたのはそういう理由だったのか!
「ゴメン。ありがとうシシリー」
「気をつけてくださいね? シン君に何かあったら私……」
シシリーがそう言ってくるが、今回、その逆のことが起こりそうになった。
魔人の魔法攻撃で、危うくシシリーを失うところだったのだ。
そう思ったら、急に怖くなり思わずシシリーを抱き寄せてしまった。
「え? あ、シン君……」
「怖かった……シシリーを失うかもしれないと思った……」
「シン君……」
シシリーを、あんなことで失ってしまったら、俺はどうなってしまうんだろう?
そう思うと、今、俺の腕の中にある温もりが愛おしくてしょうがなかった。
この温もりは、俺が絶対守り抜くと、そう誓った。
内心でそう誓っていると、その腕の中のシシリーが身じろぎしている。
「どうした? シシリー」
「あ、あの……後ろ……」
「後ろ?」
シシリーの言葉で、後ろを振り返ると……。
「こんな大勢の見てる前で……スゲエな、お前……」
呆れた様子のガランさんと、ニヤニヤしながらこちらを見ている羊飼いとカーナン軍の混成部隊の皆さんがいた。
「あ……」
「あぅぅ……もう……」
シシリーが真っ赤になって、顔も上げられなくなっている。
かくいう俺も顔が熱い。相当真っ赤になってるだろうな……。
「やれやれ、そういうのは家に帰ってからシッポリと……」
ガランさんがそこまで言った時だった。
「ん? なんの音だ?」
「す、すいませんガランさん! ちょっと盾になってもらっていいですか?」
「お、おお」
無線通信機の着信ベルが辺りに鳴り響いた。
俺とシシリーの両方だ。
ということは、これはオープンチャンネルだ。
誰かからの報告だろうか?
俺とシシリーは、もう一度マントに付与されている光学迷彩を起動させ、着信に出た。
「もしもし。誰?」
『皆さん! マークっス! 急いで……急いで戻ってきてください!』
『おい、どうしたビーン。他も魔人の被害は出てないんだろう?』
オープンチャンネルのため、オーグの声も聞こえる。
『各国には被害がなかったそうっスけど、そっちじゃないっス!』
そっちじゃない。
ということは……。
『旧帝都から! とんでもない数の災害級の魔物が現れたっス!!』
外伝も更新しました。