テスト二週間前
テスト二週間前だ。
テスト二週間前といっても僕、高島時人がではなく雪ちゃんがだ。
今日は土曜日で僕の家で勉強を教える。
成績はというと僕は良いわけでも悪いわけでもない。
まあ少しくらいなら教えれるだろう程度。
そわそわしながらも待っているとインターホンが鳴った。
「いらっしゃい。」
私服姿の雪ちゃんだ。
今日も可愛い。
「おじゃまします」
部屋に入りこたつに隣同士はいるのが習慣になっている。
まあ近くて嬉しい。
「私黙々とやっちゃうと思うんだけど、いい…?」
「勉強しにきてるんだから、いいよ。」
むしろ他に何をしながらやると言うんだ。
…おしゃべり?
「…」
雪ちゃんの手が開始五分で止まった。
基本問題だ。
「雪ちゃん、大丈夫?」
「ここ…休んでたから…その…」
尋常じゃないくらい汗がでている。
「あ、じゃあ教えるから。」
範囲を見るために問題集をのぞくと、思ったより距離が近くなったことに気づいた。
変に意識してしまう。
「わかる…?」
「うん、わか…」
雪ちゃんの方を向くと顔が真正面にあった。
つい、固まってしまう。
「えっと…ここはね…」
勉強に集中する為にもあまり気にしないようにする事にした。
「時人頭良いね…」
「そうかな?」
後半何も理解してないのに教科書に書いてある事を適当に説明した事は内緒にしておこう。
「一通り終わったし少し休憩しよっか。」
「うん。」
こたつから出たくはないが飲み物を取りに行く為にも出なければならない。
苦痛…。
「僕飲み物取りに行ってくるね」
「あ、ありがとう。」
お茶をコップに注いで入れた。
自分が使っているのをだすのもアレだしもうそろそろ雪ちゃんのを買ってもいいかもしれない。
「やべぇ、同居感やべぇ…」
これは言わないことにしよう。
「はい、雪ちゃん。」
「ありがと。」
「雪ちゃん、今度雪ちゃん用のコップでも買いにいかないかな」
「!?」
雪ちゃんは飲むのを中断し咳き込み始める。
「大丈夫?」
「別にいいよそんな、悪いし…」
「いや、僕が普段使ってるのを使うのもアレかなって」
「……じゃあ今度の休みの日にでも買いに行こう。」
「うん、そうだね。」
もう付き合ってしまいたいくらいに可愛い。
でもここまでくると付き合うのもなんか違う気がしてきてしまう。
「…なんか恋人みたいですね。」
雪ちゃんがぽつりと言った。
「…」
「…」
「べ、勉強しようか。」
恥ずかしい。
なんでここまで期待通りの事を言ってくれるんだろう。
「テストで点数高かったらなんかしてよね。」
「え、何を!?」
やばい、今月はゲームに金をつぎ込んでしまっているんだが。
生活費から消費を…
「簡単なものでいいよ…一緒に新作の映画借りてきて見るとか…一緒にゲームするとか…」
「それいつもと変わらないよ、雪ちゃん。」
「良いの、一緒にいるだけで嬉しいから。」
顔が熱くなる。
なんでそんなこと平気で言えるんだ。
腹がむずがゆい。
「あっ…と…」
黙ってしまう。
「黙らないでよ、恥ずかしいじゃん!」
「雪ちゃんが悪いんだよ!そんななんていうか、嬉しいこと…!」
お互い自爆しそうだ。
「な、なんでもいいから決めてよ!」
「……じゃあ。」
少し身を寄せて、キスをする。
「これで、どうですか。」
お茶の味がした。
雪ちゃんも僕も顔は真っ赤だ。
「もうしてるじゃん、バカ…。」
雪ちゃんのその火照った顔を見て勝った気分になったのは秘密。
だって君が可愛いから。