沈黙と笑顔と相合傘
最初に沈黙を破ったのは君。
君「でも、大丈夫だよ?」
「家、そんなに遠くないから・・・」
そう言いながら、君はニコリと微笑んだ。
一体、僕はどうすべきなのだろうか?
果たして、一体、何が正解なのだろうか?
せっかく沈黙が終わったというのに、再び考え込む僕。
だけど、咄嗟に一つの案が浮かぶ。
僕「送ってくよ」
「家、近いんでしょ?」
「だったら、僕が送ってくよ」
僕は一度も噛まずに、それを言い終えた。
それを、『良く言えた!』と自画自賛する僕は、本物の馬鹿かもしれない。
だけど、ほとんど話したこともない大好きな子に噛まずに言えたんだ!
こんな僕がだ。 今まで、緊張でどうにもならなかったこんな僕がだ。
だから、僕は少し嬉しかった。 自分自身を褒めてやりたかった。
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だけど、そんな僕のセリフを聞いた君は、素っ頓狂な顔をしていた。
それもそうだろう。
なぜなら、同じクラスなのに、僕が君と話した回数は指を折って数えれる程度。
そんな“ただのクラスメイト”の僕が、 急に「送っていく」っと言ったんだ。
少しも呆気にとられない方が、可笑しい。
だが、君は その似合わない顔を、 すぐさま首を横に振って、
どこかに吹き飛ばしてから、 再び天使のような笑顔で僕に言った。
君「ありがと」
「でも、ホントにいいの?」
「私と・・・その・・・・・」「そんなに仲良くないのに・・・」
彼女の言うことは、もっともだった。
仲良くない。 なのに、何を偉そうなこと言ってるんだ、僕は。
僕「ごめ―――」
僕は謝ろうとした。 だけど、君に遮られてしまった。
君「あっ、その・・・」
「でも、嫌いとかじゃないよ?」
「ホントにいいのかなぁって」
「甘えちゃっていいのかなぁって」
「そう思って・・・ あの・・・大丈夫かな?」
君は頬を赤くしながら、僕に訊く。
その質問に対する僕の答えは、たった一つ。
僕「もちろん! 大丈夫だよ!!」
そう言って、僕は傘を勢いよく開いた。