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右手に剣を左手に恋を  作者: 28号
■隊長達の絆編■
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Episode03-3 男だらけの裸祭!?

 さすような日差しにさらされた肩がひりひりと痛み、アルベールは今し方脱いだ上衣を羽織りたい衝動に駆られた。

 ピッチに勢揃いした選手達は皆、邪魔になる上衣を脱ぎすて、人によっては観客席に男らしさをアピールしている者もいる。この無駄な露出度の多さも、カルチョ・ストーリコの醍醐味のひとつである。

 あわせて巻き起こるのは、周囲をぐるりと取り囲む観覧席からの黄色い悲鳴。

 その大多数は、アルベールの隣で体を伸ばしているヴィンセントへと向けられた物。

 アルベールへの物も勿論あるが、その差は圧倒的である。

 それはそうだと、こればかりはアルベールも負けを認める。

 ヴァンパイアである彼よりも肌が白くてひ弱な自分とくらべて、ヴィンセントの体つきは男でさえも羨ましいほど逞しく、それでいて美しい。

 だがヴィンセントへの負けは認められても、解せないのはヴィンセントとは反対側にいる男である。

 ヴィンセントへの歓声にも負けず劣らず、叫ばれているその名はヒューズのもの。

 日頃レナスに虐げられている場面にばかり遭遇するので忘れていたが、彼もまた女性に人気のある騎士の一人である。

 自分より一回りは年上のはずなのに、鍛え上げられた筋肉と健康的に焼けた肌は、ヴィンセントとは違う荒々しい色香に溢れている。

 そんな二人の男が両脇に立たれては、あまりない男らしさが無惨に四散する。

「…二人とも、ちょっと離れてくれないかな」

「お前を守るために来たんだろうが」

「ヒューズにはわからないんだ、どんなに頑張っても8つに腹筋が割れない悲しみが」

「割れてりゃ数なんて別に良いだろ。それに今日はレナスが見てる訳じゃねぇし」

 ヒューズの言葉に、アルベールは慌てて観客席の一点を見つめる。

 そこはレナスの為に貸し切った席で、シートには赤い花束まで置いたのだ。

 なのに、そこに座っていたのは麗しき令嬢…の格好をした野郎であった。

「何でアレッシオさんが座ってるんだ! レナスさんは、レナスさんはどうしたんだよ!」

 そう言ってヒューズの首を絞めるアルベールを、ヴィンセントが呆れ顔で叩く。

「あのなぁ、これだけ大きな催し物があって、騎士が暇なわけないだろう」

「でも見てくれなきゃ意味無い…」

 僅かに弱まったアルベールの腕をはがしつつ、ヒューズは安心しろと息を吐く。

「街中のテレビや魔法鏡で中継してるから嫌でも目には入るさ。それに決勝戦のチケットは、並んで買ってたぞあいつ」

「本当に?」

「だからここで負けたら、無駄な金払わされたって怒るだろうな」

 気落ちしていた心を立て直し、アルベールは二人に小さく謝る。

「忙しいときに二人ともごめんね」

「お前の我が儘は今に始まった事じゃないしな」

「俺も、我が儘には慣れてる」

 近くに寄るなと言ってしまったことを後悔し、今度は逆に彼らの存在に頼もしさを感じるアルベール。

 彼が二人によろしくと声をかけたそのとき、ついに戦いの火蓋は切って落とされた。

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