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右手に剣を左手に恋を  作者: 28号
□騎士のお仕事編□
63/139

Ending         仕事の後はビールとワインと王子の後始末

 夜7時、グラウンドに集められた妖精達にプリマヴェラが感激の声を上げる。そんな彼女に恭しく頭を垂れたのはヴィートだ。

「今年は助っ人もいたので、いつもより早く集まりましたよ」

「ありがとうございます」

 プリマヴェラはそう言うと、妖精達に目を向ける。

「さあ皆さん、次は更に北に向かいますよ。フロレンティアの皆さんにご挨拶なさい」

 散々迷惑をかけたくせに、プリマヴェラの一言に妖精達はあっけなくバイバイと手を振る。

 騎士達は満身創痍だが、飛び立つ妖精達に手は振り返す。

「今年も終わったわね」

 夜空に舞い上がる妖精の光を見つめながら、レナスが呟いた。そしてそれに、周りにいたキアラ達が同意する。

「さて、俺達は帰るか」

 そう言ったのは助っ人で来ていたヴィンセント。

 そこで彼はふと、自分の副官がいないことに気付く。

「アルベールなら、イースターバニーを返しに行ったぞ」

 ヴィンセントの視線に目ざとく気付き、声をかけたのはヒューズだった。

「じゃあ、これで今年の捕獲作戦もおしまいですね」

 キアラの言葉にビールが飲みたいと言いだしたのはレナス。

 彼女が酒の話題を口にすると、それを聞いた人は必然的に付き合うことになるため、ヒューズが若干表情を曇らせた。

 気がつけば他の騎士達も、それぞれ知人を誘ってはバールやリストランテに繰り出すところのようだった。

 昼間あれだけの肉体労働を強いられたのだ、今夜は飲まねばやっていられない。

 それに今年はいつもより時間もある。ならば飲まずして何をするのだと誰しもが思っていた。

 だがそのとき、恐怖のハウリングがその場に響いた。

「えー、みなさーん」

 かかったのはまさかの再集合。マイクを握っているのは勿論騎士団長のヴィートだ。

「えー、今連絡がありました」

 悪いニュースだと誰もが分かっていた。

「なんでも、イースターバニーを載せた馬車が襲撃されたそうです。その結果バニー200匹が逃走、残り3百匹と御者を人質に、犯人がドゥオモに立てこもっているそうです」

 ということでと、ヴィートがわざとらしく咳払いをする。

「みなさん、今日も残業です」

 事態の深刻さよりも、騎士達は怒りに震えた。

「アルベール、殺してやる」

 なかでもレナスの怒りは恐ろしい。

「人質になるくらいなら死ね」

「おまえ、仮にも元彼を……」

「私に迷惑かけた奴は死刑、そういう決まりなの!」

 レナスは網を捨て、剣を引き抜き声を張り上げた。

「キアラ、第4小隊を3分で集めて!」

 了解ですと敬礼して、キアラは騎士達の中にさっと消えた。

「あの王子様は、本当に飽きねぇな」

「面目ない」

 うなだれるヴィンセントの肩を、ヒューズがねぎらうように叩く。

「まあ、兎を狙うような小物なら、うちの女達があっという間に片づけるさ」

 あの王子様も要領が良いから無事だろうと言われ、ヴィンセントは苦笑する。

「さて、俺達も行くか」

 ぼんやりしてるととばっちりがこちらにもとんでくる。

 ヒューズのぼやきに苦笑し彼と共に歩き出すヴィンセント。

 気がつけば、そこに文句を言いながらも騎士達が続いていく。さっさと終わらせて飲みに行くぞと、気合いを入れる騎士達に苦笑しつつも、その力強さをヴィンセントは心強く思う。

 正義も騎士らしさもそこにはない、けれど人間らしさこそが彼らの真の強さだ。

「準備は良いか野郎ども! これが終わったらワインだ!」

 そしてそれを指揮している第4小隊の女達に、ヒューズとヴィンセントは笑みを交わした。

 フロレンティアの女は怒らせると怖い。特に騎士の女は。

 どうやら、人質騒ぎも意外と早く解決しそうだ。そして多分、今夜は多くのバールで騒ぐ騎士の姿を見ることが出来るだろう。

 その中の一人に自分もなるのだろうかと考え、ヴィンセントは思わず笑みをこぼした。



騎士のお仕事編【END】

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