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右手に剣を左手に恋を  作者: 28号
■男達の秘め事編■
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Episode07-1 歪んだ愛と欲望の果てに

 竜の捕獲と共に、フロレンティアの恋は例年の勢いを取り戻した。

 女性が男性を殴る恋は愛情を確かめる行為として浸透し、復活祭パスクワが終わった今日も恋の儀式のひとつとなっている。

 一方今回の原因となった竜は、今度は南米にある研究施設に送られる事になった。

 北欧の施設は警備が甘く、それにつけ込んだ竜が自慢の色香で監視員を誘惑し、脱走を図った事が分かったのだ。

 その後復活祭パスクワのために入国した旅芸人とその動物に紛れて入国し、男の心を惑わせていたらしい。

「今度の施設は相当厳しいところだ、覚悟するんだな」

 南米へと送られる前夜、竜の様子をうかがうため、ヴィートは騎士団の地下牢を訪れていた。

 警備魔法や鉄格子だけでは、小さな蛇にも変身出来る竜を逃がしてしまうため、地下牢には強化ガラス製のオリが特別にあつらえられていた。

『もう来ないわ。あなたは好きだけど痛いのは嫌なの』

 ヒューズとヴィンセントにやられたのが相当懲りたらしく、竜は折れた歯を悲しげにさする。

「お前さんもまっとうな恋をしろよ」

『無理よ。私は歪んだ愛と欲望の心しかないんだから』

「でも、俺には一途だったじゃねぁか」

 苦笑するヴィートに竜は苦笑を返す。

『うらやましかったの。私の本気の誘惑を解いたのは、あなただけだったから』

 ほんの少し悲しそうに笑って竜はヴィートを見上げる。

『でもあなただけじゃないわね。この国の人は恋に強すぎる』

 だからもう来ない。そう言ってから、竜はもう一度ヴィートを見つめる。

『本当は言うつもりはなかったけど特別に教えてあげる。私、本当は自分一人で逃げた訳じゃないの』

「どういうことだ?」

「ある人に言われたの、フロレンティアで男達を誘惑したらあなたに会わせてあげるって」

「そいつは誰だ」

『顔は分からない、声も覚えてない』

 それでは相手を特定出来ないが、竜の言葉に偽りはないようだった。

 意図的に竜を呼び寄せた人物。姿も理由も分からないが今回の事件の黒幕がいたことに、ヴィートの表情は険しくなる。

 だが今ある情報では黒幕の特定は不可能だ。

「恩に着る」

 ともかく今は事件が一段落したことで良しとしよう。

 そう思い直し、ヴィートは竜の元を後にした。


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