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右手に剣を左手に恋を  作者: 28号
■男達の秘め事編■
51/139

Episode05-2 それは恋の証

「後悔するのは、俺の方だと思うんだけど」

 救護室の側にある階段の裏、物置として使われている暗がりに、キアラはしゃがみ込んでいた。そしてヴィンセントの気配に、彼女は慌てて彼に背を向ける。

「悪かった、本当に」

 キアラの横に腰を下ろすと、今度は膝に顔を埋める。

「謝らないでください。余計に惨めになります」

「そうだな、いくら理由があっても許される事じゃない」

 そうじゃない! とキアラは掠れた声でヴィンセントの言葉を遮った。

「状況を考えればあなたに非がないのは一目瞭然だったんです。でもゴシップ誌を見たら頭は真っ白になるし、目の奥は熱いし胸は苦しいし、もう何がなんだか分からなくなって」

 気がついたら本部を飛び出していた。

「報告も相談も連絡も全部とんじゃったし、目のさまし方も気付いてたのに隊長にも告げなかったし、騎士として色々失格な事したし」

 数え始めたら自分の醜態はきりがない。

 そしてなにより、非がないと分かっていたのに、女と共に部屋にいたヴィンセントを見て、頭に血が上った。

「何もかも上手くできなかったし、ヴィンセント様の事信じられなかった」

 そう言って泣き出す少女に、ヴィンセントはぐっと歯をかみしめる。

 拗れるのは分かっていた。だが、これは…

「お前は、可愛すぎる」

 思わずこぼすと、涙で濡れた頬を真っ赤に染めてキアラがヴィンセントを睨む。

「そう言うとき、仕事が二の次になるのはよくあることだ」

「だけど、本当に何も考えられなくなっちゃったんです!」

「それだけ俺を好きって事だ」 

 何でそんな事を自分の口から言わねばならないのかと、さすがのヴィンセントも若干恥ずかしく思う。 だがおかげで、キアラは今更のように自覚したようだった。

「理由があったって、お前が違う誰かとキスしたら俺はその男を殺せる自信がある」

「ヴィートでも?」

 それは微妙に違うが、正直ヴィート相手でも嬉しくないと正直に告げれば、キアラは嬉しそうに笑い、それからそんな自分に気付いてまた赤くなる。

「だからお前は、そんな事態に陥った俺を怒る資格がある。むしろ怒れ」

「だけど…」

「正直泣かれるのはきつい。それも俺に非があるのに」

 注意をするとアルベールに約束した。にもかかわらずあっけなく魔法にかかった事を思い出し、ヴィンセントは頭を抱える。

「でも、それだけじゃないんです……」

「まだ何かあるのか?」

「橋の上でヴィンセント様が女の子に囲まれたのを見たときも、殴りたいって思いました」

 正義の騎士が怒りに溺れるなんてと、再び泣き出すキアラにヴィンセントは彼女の体を抱き寄せる。

「君は、本当に恋を知らないんだな」

「悪かったですね」

「とりあえず怒るのか泣くのかはっきりしろ」

「好きでやってるわけじゃありません。もうわけがわからないんです」

 それほどまで彼女は追いつめられていたのだろう。いつもは冷静なキアラが、涙も感情も止められないのだ。

「本当に悪かった」

 自分の感情に混乱する、恋に不慣れな恋人の体を抱きかかえ、ヴィンセントは彼女を膝の上に載せる。

「重いですよ」

 筋肉ついてるから、と赤くなるキアラにヴィンセントは苦笑した。

「そこも含めて好きだから」

 更に赤くなったキアラが逃げ出す前に、ヴィンセントは彼女の唇を奪う。

 口づけは長く、しかしキアラは拒めなかった。


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